笑うかどには福きたる

日常生活で見たこと、聞いたこと、感じたことを牧歌的にのんびりと書いています。

古くて新しい、「制服に着替える時間は労働時間か」問題についての一考察

2022年07月16日 13時48分28秒 | お仕事関連
7月15日(金)の新聞を見て、「まだこんなことで争いがあるんだ~」と目が点になっちゃいました。それは、

「従業員が制服に着替える時間などに賃金を支払っていなかったとして大手飲食チェーンが監督署から是正勧告を受けていた」という記事。

具体的には、
「商業施設内(神奈川県)のカフェでパートとして勤務していた女性が、指定された更衣室での着替えと店舗への移動で1日30分かかるものの、その間が労働時間として認められなかった」とする賃金未払い分への支払い請求をしたところ、
「更衣室で着替えることは義務づけておらず、労働時間にはあたらない」と拒否されたため、監督署に申告した、というもの。

2022年現在の、神奈川の地方最低賃金が1,040円(多分くだんのカフェはもっと高いかもだけど)だから、単純計算でも30分が無給なわけで、日々520円受け取り損ねていることになります。
仮に彼女が、月20日働いていれば、×20で、月10,400円、×12で、年124,800円受け取り損ねていた、ということになります。

この「着替え時間は労働時間か」問題は、平成12年に有名な「三菱重工業長崎造船所賃金請求事件」という判例があって、この手の争議はこの判例が元になっていると勉強したものです。(もっとも、ここでの着替えとは、造船所内作業での安全のために必須の作業着への着替え)

新聞記事では、同じ飲食チェーンの例として、モスバーガーと、スターバックスとマクドナルドが挙げられていて、モスは「着替え時間も労働時間」、スタバは「指定のエプロン付ければいいだけなので、着替えの義務つけはなし(従って労働時間にならない)」、マックは「通勤時に自宅からユニフォームを着てくる人もいるので一律の支給はなし」なんだとか。企業によっていろいろなようです。

ところで、自宅から着てくる、ってことは、徒歩圏に住んでるってことでしょうかね。冬場とかは、コート羽織って通勤してたりとか?
以前、通勤途中で、アパートから病院の白衣着た若い女性たちが出てきたのを見たことがあったけど、病院などが借り上げたアパートに住む看護師さんたちだったのでしょうかね?(更衣室がないのかも。でも白衣を自宅から着ての出勤も衛生上どうかと思いますが(^_^;))

話しを戻すと、「三菱重工業長崎造船所賃金請求事件」でのポイントは、
 「本来の業務の準備作業や後かたづけは、
 事業所内で行うことが使用者によって義務づけられている場合や
 現実に不可欠である場合には、
 原則として使用者の指揮命令下に置かれたものと評価され、
 労基法上の労働時間に当たる。」

というものだから、「ここで着替えてフロアに行ってね」と言った(指示した)時点で、着替え時間(と移動時間)は労働時間としてカウント、と、私は思うのですよ。
ちなみに記事の飲食チェーンは、勧告を受けたにも関わらずまだ支払いがなされていないのだとか。
就業規則に書かれていない、とか、管理者の指示ではない、とか、先輩のパートが慣習を伝えただけ、とか、更衣室は商業施設から指示された場所だから、当方には責任はございません、とか、果ては急いで着替えれば、20分で済む、とか、今後いろいろ、言い訳をしてくるのでしょうか。

業務上制服に着替えることが義務であれば、当然着替える時間は必要ですよね。であれば、着替えに必要な時間と就業場所までの移動時間をきちんと計測して、せめてその時間に対して一律いくら支払う、といった規定でも事前に作っていたらこんな事態にはならなかったのでは、と思うのですよ。
経営側はそこで働く人(しかも時給で)への想像力が欠如しており、店舗の見てくれ、つまりお客さんと同じ目線程度(制服着てるんだ~)しか持たなかったってことなのではないでしょうか。

制服着用の業界や職場って、まだまだ多くあると思うのですね。
経営者や職場を運営する人なら、そこで働く人への想像力を正しく持って欲しいなぁ、と思うのですよ。(「テナントだし、制服に着替える場所ちゃんとあるかな?」とかね)。
もちろんそれは、とてつもなく「面倒くさい」ことだらけかもしれません。でも面倒くさいことをスルーした結果が、この是正勧告に繋がったのでは? とも思うのですね。
前にも書いたけど、「一番大事なことが、一番面倒くさい」、んだから。

この是正勧告、どうなるか興味あるな~。
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「がんばっても報われない社会が待っている」東大の入学式で語られたこと  ~備忘録として

2019年04月27日 15時37分04秒 | お仕事関連

4月12日、東大入学式の上野千鶴子さんの祝辞全文です。
東大女子だけでなく、人口の半分を占めるあらゆる女性たちへのメッセージであると思っています。
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「がんばっても報われない社会が待っている」東大の入学式で語られたこと【全文】
4/12(金) 19:02配信

ご入学おめでとうございます。あなたたちは激烈な競争を勝ち抜いてこの場に来ることができました。
その選抜試験が公正なものであることをあなたたちは疑っておられないと思います。もし不公正であれば、怒りが湧くでしょう。
が、しかし、昨年、東京医科大不正入試問題が発覚し、女子学生と浪人生に差別があることが判明しました。

文科省が全国81の医科大・医学部の全数調査を実施したところ、女子学生の入りにくさ、すなわち女子学生の合格率に対する男子学生の合格率は平均1.2倍と出ました。
問題の東医大は1.29、最高が順天堂大の1.67、上位には昭和大、日本大、慶応大などの私学が並んでいます。1.0よりも低い、すなわち女子学生の方が入りやすい大学には鳥取大、島根大、徳島大、弘前大などの地方国立大医学部が並んでいます。

ちなみに東京大学理科3類は1.03、平均よりは低いですが1.0よりは高い、この数字をどう読み解けばよいでしょうか。統計は大事です、それをもとに考察が成り立つのですから。
女子学生が男子学生より合格しにくいのは、男子受験生の成績の方がよいからでしょうか?
全国医学部調査結果を公表した文科省の担当者が、こんなコメントを述べています。「男子優位の学部、学科は他に見当たらず、理工系も文系も女子が優位な場合が多い」。
ということは、医学部を除く他学部では、女子の入りにくさは1以下であること、医学部が1を越えていることには、なんらかの説明が要ることを意味します。
事実、各種のデータが、女子受験生の偏差値の方が男子受験生より高いことを証明しています。
まず第1に女子学生は浪人を避けるために余裕を持って受験先を決める傾向があります。
第2に東京大学入学者の女性比率は長期にわたって「2割の壁」を越えません。今年度に至っては18.1%と前年度を下回りました。

統計的には偏差値の正規分布に男女差はありませんから、男子学生以上に優秀な女子学生が東大を受験していることになります。
第3に、4年制大学進学率そのものに性別によるギャップがあります。2016年度の学校基本調査によれば4年制大学進学率は男子55.6%、女子48.2%と7ポイントもの差があります。
この差は成績の差ではありません。「息子は大学まで、娘は短大まで」でよいと考える親の性差別の結果です。

最近ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさんが日本を訪れて「女子教育」の必要性を訴えました。それはパキスタンにとっては重要だが、日本には無関係でしょうか。
「どうせ女の子だし」「しょせん女の子だから」と水をかけ、足を引っ張ることを、aspirationのcooling down、すなわち意欲の冷却効果と言います。

マララさんのお父さんは、「どうやって娘を育てたか」と訊かれて、「娘の翼を折らないようにしてきた」と答えました。そのとおり、多くの娘たちは、子どもなら誰でも持っている翼を折られてきたのです。

そうやって東大に頑張って進学した男女学生を待っているのは、どんな環境でしょうか。
他大学との合コン(合同コンパ)で東大の男子学生はもてます。
東大の女子学生からはこんな話を聞きました。「キミ、どこの大学?」と訊かれたら、「東京、の、大学...」と答えるのだそうです。なぜかといえば「東大」といえば、ひかれるから、だそうです。
なぜ男子学生は東大生であることに誇りが持てるのに、女子学生は答えに躊躇するのでしょうか。
なぜなら、男性の価値と成績のよさは一致しているのに、女性の価値と成績のよさとのあいだには、ねじれがあるからです。

女子は子どものときから「かわいい」ことを期待されます。ところで「かわいい」とはどんな価値でしょうか?

愛される、選ばれる、守ってもらえる価値には、相手を絶対におびやかさないという保証が含まれています。だから女子は、自分が成績がいいことや、東大生であることを隠そうとするのです。
東大工学部と大学院の男子学生5人が、私大の女子学生を集団で性的に凌辱した事件がありました。加害者の男子学生は3人が退学、2人が停学処分を受けました。

この事件をモデルにして姫野カオルコさんという作家が『彼女は頭が悪いから』という小説を書き、昨年それをテーマに学内でシンポジウムが開かれました。
「彼女は頭が悪いから」というのは、取り調べの過程で、実際に加害者の男子学生が口にしたコトバだそうです。この作品を読めば、東大の男子学生が社会からどんな目で見られているかがわかります。
東大には今でも東大女子が実質的に入れず、他大学の女子のみに参加を認める男子サークルがあると聞きました。
わたしが学生だった半世紀前にも同じようなサークルがありました。それが半世紀後の今日も続いているとは驚きです。

この3月に東京大学男女共同参画担当理事・副学長名で、女子学生排除は「東大憲章」が唱える平等の理念に反すると警告を発しました。
これまであなたたちが過ごしてきた学校は、タテマエ平等の社会でした。偏差値競争に男女別はありません。
ですが、大学に入る時点ですでに隠れた性差別が始まっています。社会に出れば、もっとあからさまな性差別が横行しています。東京大学もまた、残念ながらその例のひとつです。
学部においておよそ20%の女子学生比率は、大学院になると修士課程で25%、博士課程で30.7%になります。
その先、研究職となると、助教の女性比率は18.2、准教授で11.6、教授職で7.8%と低下します。これは国会議員の女性比率より低い数字です。
女性学部長・研究科長は15人のうち1人、歴代総長には女性はいません。

こういうことを研究する学問が40年前に生まれました。女性学という学問です。のちにジェンダー研究と呼ばれるようになりました。
私が学生だったころ、女性学という学問はこの世にありませんでした。なかったから、作りました。
女性学は大学の外で生まれて、大学の中に参入しました。4半世紀前、私が東京大学に赴任したとき、私は文学部で3人目の女性教員でした。そして女性学を教壇で教える立場に立ちました。
女性学を始めてみたら、世の中は解かれていない謎だらけでした。

どうして男は仕事で女は家事、って決まっているの?主婦ってなあに、何する人?ナプキンやタンポンがなかった時代には、月経用品は何を使っていたの?日本の歴史に同性愛者はいたの?
...誰も調べたことがなかったから、先行研究というものがありません。ですから何をやってもその分野のパイオニア、第1人者になれたのです。

今日東京大学では、主婦の研究でも、少女マンガの研究でもセクシュアリティの研究でも学位がとれますが、それは私たちが新しい分野に取り組んで、闘ってきたからです。そして私を突き動かしてきたのは、あくことなき好奇心と、社会の不公正に対する怒りでした。
学問にもベンチャーがあります。衰退していく学問に対して、あたらしく勃興していく学問があります。

女性学はベンチャーでした。女性学にかぎらず、環境学、情報学、障害学などさまざまな新しい分野が生まれました。時代の変化がそれを求めたからです。
言っておきますが、東京大学は変化と多様性に拓かれた大学です。わたしのような者を採用し、この場に立たせたことがその証です。

東大には、国立大学初の在日韓国人教授、姜尚中さんもいましたし、国立大学初の高卒の教授、安藤忠雄さんもいました。また盲ろうあ三重の障害者である教授、福島智さんもいらっしゃいます。
あなたたちは選抜されてここに来ました。東大生ひとりあたりにかかる国費負担は年間500万円と言われています。これから4年間すばらしい教育学習環境があなたたちを待っています。
そのすばらしさは、ここで教えた経験のある私が請け合います。

あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。
ですが、冒頭で不正入試に触れたとおり、がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています。
そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。
あなたたちが今日「がんばったら報われる」と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。

世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと...たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。

あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。
恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。
そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。
女性学を生んだのはフェミニズムという女性運動ですが、フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です。

あなた方を待ち受けているのは、これまでのセオリーが当てはまらない、予測不可能な未知の世界です。
これまであなた方は正解のある知を求めてきました。
これからあなた方を待っているのは、正解のない問いに満ちた世界です。
学内に多様性がなぜ必要かと言えば、新しい価値とはシステムとシステムのあいだ、異文化が摩擦するところに生まれるからです。

学内にとどまる必要はありません。東大には海外留学や国際交流、国内の地域課題の解決に関わる活動をサポートする仕組みもあります。未知を求めて、よその世界にも飛び出してください。
異文化を怖れる必要はありません。人間が生きているところでなら、どこでも生きていけます。
あなた方には、東大ブランドがまったく通用しない世界でも、どんな環境でも、どんな世界でも、たとえ難民になってでも、生きていける知を身につけてもらいたい。

大学で学ぶ価値とは、すでにある知を身につけることではなく、これまで誰も見たことのない知を生み出すための知を身に付けることだと、わたしは確信しています。
知を生み出す知を、メタ知識といいます。そのメタ知識を学生に身につけてもらうことこそが、大学の使命です。

ようこそ、東京大学へ。
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「新卒一括採用が否定されるのは、もはや時間の問題かもしれない」、ことについて

2019年04月26日 17時19分09秒 | お仕事関連
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■「キャリア採用の定着を」 経済同友会代表幹事に就く桜田氏 日本経済新聞 2019/4/26

(略)
――企業の人材採用はどう考えますか。

「新卒一括採用という世界で珍しい制度は、創造的な国や元気な若者をつくる面からみてマイナスに働いているかもしれない。新卒採用の解禁時期を決めるといったルールがなくなっていくのは時間の問題だろう」
「学生の一律採用を全面否定はしないが、通年採用やキャリア採用などいろいろなやり方があっていい。特に失敗した経験を持つ人材は貴重だ。悔しい思いや反省が次のステップにつながる」
(略)
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■新卒一括採用「やめた方がいい」 同友会次期代表幹事 朝日デジタル 2019/4/26

 経済同友会の次期代表幹事の桜田謙悟氏(63)が朝日新聞などのインタビューに応じ、日本の雇用慣行となっている就職活動のルールを前提とした新卒一括採用制度について、「個別企業の問題だが、やめた方がいい。原則はキャリア(中途)採用であるべきだ」と語った。経団連も中途採用を増やす方針を打ち出しており、採用の多様化が進む可能性がある
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少し前からメディアに載りはじめたこれらの発言。
その前に話題になった「大学教育を実務教育にシフトすべし、職能に結び付かない人文系の学問(学科)は淘汰すべし」の流れの延長にある気もします。

でも制度改革を待って人材が育つのを待ってる暇はない、待つ時間もない、と経済界は考えたのだと思います。「力のある人を外からどんどん入れるしかないの、そのくらい、時代の流れが速いんだから」、ということなのでしょう。
もちろんそれだけではないでしょうけれど、くだんの「新卒一括採用の否定」の根っこの"ひとつ"でもあるように感じます。

だからと言って企業側がすぐにでも中途採用重視の欧米型キャリア採用にしよう! と一気に傾くとも思えませんが、大手企業からこの傾向がどんどん進むことはもう間違いないのでしょう。力のある学生もこの傾向を歓迎すると思いますし、在学中に難関の国家資格を取得する学生も増えるでしょう。経験を積んだ20代の転職も活発になるはずです。
国としても「企業活動が活発なのは国としても大歓迎!」と言う観点で反対するでもなく、かといって賛成するでもなく、なんとなく「日本版キャリア採用」みたいな玉虫色の採用方法に変化(進化?)していく気がします。
となると、仕事に直結しない趣味的人文系に進んだかつての私のような学生には、就職と言う場面でかなり厳しい未来が来ることは間違いなさそうです。なにも考えずに「とりあえず大学卒業して、さあ就活ぅ~」なんていってたら、時給のバイトくらいしか就ける仕事はないかもしれません。いやコンビニやファーストフードでも自動化による省力化が進むご時世ですから、時給のバイトにすら就けないかもしれません。

手に職(スキル・専門性)が重視される社会。
それでもそのスキルが陳腐化する速度はこれまで以上に速い。。
機械化されることで、職自体のパイもどんどん小さくなっていく。。

どんなスキル(専門性)を身に付ければ、安心できるのか。
どんな会社に入れれば、安心できるのか。

大変な世の中になりそうだけど、そもそも"白無垢"の学卒者が企業にウィルカムで迎えられていたのは日本くらいのものだそうなので、キャリア採用こそ「あるべき就職の仕方なのよ」と言われれば、それに合わせていくしかないということなのでしょう。

これからは白無垢ポテンシャル(可能性)だけで就職できる時代ではなく、それを一度体現してみて(それが具体的なキャリアになる)、その結果をもとに再生・修正を加えてスキルを磨き、そこから「キャリア採用」に臨む、というルートこそ尊重すべき、ということなのでしょうかね。

でも、現実どうなんでしょうか。
自分の価値観やスキルをしっかり持った"中途採用者"をウェルカムと迎えたい企業が多くなるとは(今の時点で)正直とても思えないのです。キャリア採用者の待遇をどう上げるか、まで記事では踏み込んでいませんよね。
経済界のこういう発言は、あくまでも"今"即戦力として使える中途採用者、優秀な部品、というニュアンスを感じてしまうのは否めないのです。
そして、今優秀でも10年後20年後もその優秀さが継続する保証はありません。継続させるのが「自己責任」といわれる可能性だってあるのです。

いずれにせよ、これからの学生の就職活動は、卒業間近に考えるものではなく、高校、大学への進学時点で意識すべきことになることは確かでしょう。ただね自分がイチローや藤井聡太七段じゃなければ「自分はこれだ」と決めなくてもいい、と私は思うのです。だって世の中はどんどん変わるのだから。

大切なことは、「何に関わっている自分が好きか」ということが意識できるかどうか。
子供時代の「こういう感じが好き」って気持ちは、人生の「根っこ」になれるように感じます。
で、この根っこが多分自分の「職」に繋がっていくのだと私には思えるのです。

ほんと、これからの学生は大変だわ。。。
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究極の「仕事論」だと思う  ~自分の備忘録として

2018年03月04日 23時31分32秒 | お仕事関連

2018_3/4 ほぼ日 より転載
ずいぶん前に読んでて結構心に残ってた一文。
そうか、東日本大震災の前だったのか。
本日は、自分用の記録です。
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・どういう風の吹き流しなのか、
 ずいぶん昔にしたツイートをいまになって
 リツイートしてくれた人のおかげで、
 ぼくもその元のツイートを読むことができた。
 (「どういう風の吹き流し」という表現は、わざとです)

 こういうツイートだった。
 「打席」が回ってこないようにするにはコツがあります。
 1)いかにも忙しそうにしている。
 2)できるだけ不機嫌にしている。
 3)不健康や不潔をこころがけている。
 4)他人の批判を熱心にする。
 5)知ったかぶりすることに努力する。
 以上、誰でも簡単にできますから、メモメモ!
 これ、じぶんで書いたことだけに、そうそう、と思う。
 ぼくはよく「とにかく打席に立つことだ」と言っている。
 機会がなければ成功も失敗もありゃしない。
 打席に立つことを求め、そして打席に立ったらよろこぶ。
 これが、いちばん人を輝かせる方法なんだと思う。
 「だって、打席が回ってこないんですよ」と、
 ほっぺたふくらませて訴える人もいるから、
 じゃ、打席がもらえるためのコツを教えましょう、と、
 このツイートを書いたのだった‥‥と思う。
 「ゆとりある雰囲気で、機嫌よく、健康で清潔で、
 他人の批判に熱心にならずに、知ったかぶりをしない」
 そういう人のところに、打席は回ってくる。
 そうそう、じぶんでも憶えておこうとか思ったくらいだ。

 そして、ツイートが投稿された日付を見ておどろいた。
 2011年1月8日の12時19分‥‥だって。
 東日本大震災の前だったということになる。
 たしか、あのころのぼくは、あがいていたと憶えている。
 ぼく自身や、「ほぼ日」が、
 もっとファイトをもってやっていけないものかと、
 それにはどうすればいいのかと、考え続けていた。
 そういう「あがき」は、震災でいったん蒸発した。
 やること、できることが目の前に山積みになったからだ。
 でも、思えば、2011年1月の気持ちと、
 2011年3月11日以降の気持ちが混じっているのが、
 いま2018年3月あたりの気持ちのようにも思える。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
そういえば、ぼくはとにかく打席にはよく立っているなぁ。
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3月11日まで、あと1週間なんだ。
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箱根とショパンのインサイドストーリーに「へぇぇぇ〜」

2018年01月03日 18時48分21秒 | お仕事関連

こはぜ屋の社長が「(英語で)歌って、踊って、応援」した箱根駅伝も終わりました。



珍しく今年はスタートから観戦しましたよ(いつもは戸塚中継所から)。「陸王」のせいか、なんだか選手の足元が気になっちゃいましたが(^^;;

そんな視聴者を見越してか、さっそくネットニュースにはこんな見出しの記事が。
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1/2(火) 8:00配信 東洋経済ONLINE
「箱根駅伝「薄底vs.厚底」靴の知られざる闘い」(←このキーワードで検索できます)
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面白い記事でしたよ〜。(ランニングシューズの歴史と)青山学院がアディダスの薄底、東洋(東海大学も)がナイキの厚底と。。もちろん履くシューズだけで優勝が決まるわけではないですが、本当に「陸王」のような構図(世界)があるのだわ、と「へぇぇぇ〜」の連続。

「へぇぇぇ〜」といえば、年末のNHKBSで観た「もうひとつのショパンコンクール~ピアノ調律師たちの闘い~」。こちらも音楽の世界でのピアノメーカーの熾烈な闘い(正確には調律師たちの闘い)を優雅に、そして熱く描いておりました。

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2015年秋に開かれたショパン国際ピアノコンクール。5年に1度、若手ピアニストたちがしのぎを削るスターへの登竜門だ。そして、コンクールで採用されたピアノメーカー4社にとっても世界にアピールする最高の舞台。どれだけ多くのピアニストに選んでもらえるか。優勝者を出すことができるか。今回、その命運を握る調律師たちのほとんどが日本人だった。しかし、彼らには次々と困難が襲いかかる。はたして栄冠をつかむのは誰か(番組紹介より) ※ちなみに参加年齢の上限は26才なんだとか!
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ファイナルで戦うのはスタンウェイとYAMAHA。一次審査二次審査と参加者が絞られ最終審査に残ったファイナリストは10人。その半数以上がYAMAHAのピアノを使い、最後のオーケストラとの競演に臨むのですが、ソロ演奏の一次二次と異なりオーケストラとのコラボということで「もっと華やかな音が欲しい」とスタンウェイに変更するファイナリストが続出。ショックを隠せないYAMAHA担当者。それでもここまでYAMAHAで戦ってきた彼らに応援の言葉をかける、という絵が泣かせます。YAMAHAがヨーロッパで認められるようになるまで30年。その並々ならぬ営業努力も描かれていました。

ランナーの足元を支えるシューズメーカー(シューフィッター)と、ピアニストの音を支えるピアノメーカー(調律師)。
年末年始と図らずも2つのインサイドストリーに触れて、世の中がどう進もうと、こういう職人仕事(「職人的な仕事」)は最後の最後まで求められ、残るんだろうな、と思ったことは言うまでもありません。
改めて「仕事とはなにか」を考えるヒントをもらったような。
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これからの就職試験で問われるスキルについての一考察

2017年07月27日 16時17分43秒 | お仕事関連

糸井重里さんの「ほぼ日」の、昔からの読者です。
時々「乗組員募集」という中途採用をしていて、毎回興味深く拝見しているのですが、上場後初めての募集が最近ありました。
上場したからといっても仲間募集における「ほぼ日イズム」みたいなものは健在で、

とにかく「手をかける・手をかけさせる」。

どんな内容かというと、まず「仕事内容」にはこうあります。
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(略)中核メンバーの一員として担い、収益事業として成長を支えてくださることを期待しています。
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文章こそ優しいですが、仕事に対する「コミットメント」をしっかりと求めています。(当たり前のようですが、ここまで書いている求人広告はなかなか見ませんよね)
で、ここでまず興味本位の応募者が消えます。

さらに応募課題へと進むと。。
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(略)長文でご記入いただく項目がございます。
必須、任意記入項目も含めて5項目あります。
いずれも1000文字以内に収まるようにしてください。

・あなたの取組(必須)
これまで携わってきた業務上の取り組みについて、
代表的なものを2つ、教えてください。
記入方法は自由ですが、実施時期、参加人数とあなたの役割と貢献について
わかるようにご記入ください。

・課題(必須)
1)株式会社ほぼ日を志望する理由を教えてください。

2)あなたが思う存分、
自分の力を活かして仕事ができるとしたら
どんなことをやりたいか、教えてください。

3)あなたが心から好きなものについて教えてください。
-----------------------------------------------------
ここで、更に半分が消えることでしょう。。
まるで書類が面接を受けているようですね。(書類は自分の分身ですからね)

上場したことで、いかに利益に貢献できるかも乗組員の資質になってきたのかもしれませんね。
でも上場しようがしまいが、企業は利益集団ですから、自分は貴社のここにこのように貢献できる(力を発揮できる)と表明することは応募者として当然でしょう。

それにしても、必須課題4つ書いて4000文字。原稿用紙10枚(^_^;)へたなSPI試験よりよっぽど「地力」が問われると思えませんか?

ちなみに、改定された学習指導要領でも言語活動の重要性から「文章表現力」「対話力」に力を入れ、更に今後の入試では「論述」などが取り入れられる方向だとも言われています。
SNSや音声入力機能が発達することで逆に「文章を書ける(構成できる・表現できる力)」が、就職・再就職の場で今後求められる最もベーシックな基本能力(スキル)になることは間違いないように思われます。
試験に論述が取り入れられると、採点(評価)する方も時間労力共に大変ですが、双方手抜きなしの真剣勝負になるし、その後の面接だって逆に雰囲気の良いものになるような気もします。

新卒では人数的に難しいかもしれませんが、中途であれば、
・最近のニュースについて
・最近読んだ本について
くらいのテーマで300字程度書かせてみるくらいはあってもいいのではないかと個人的には思いますけど。

「ほぼ日」のこの採用方法、今後きっと他社がマネしてくると思うよ。


「新しい学習指導要領等が目指す姿」文部科学省についてはこちら
※写真は、デニーズの抹茶あんみつ
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(今更ながら)知らなかった! Microsoftのクリップアートサービスの廃止

2015年05月10日 13時30分43秒 | お仕事関連

久しぶりにパワポでプレゼン資料を作る必要があり、いつものようにMicrosoftのクリップアートで画像検索をかけたのですが。。。
あれれ? 得体のしれないアニメキャラ続出? Office.comのWEBもなくなっている?

ネットで理由を調べると、な~んと昨年12月にこのサービスは廃止されたのだとか。。。ガーン。。
個人的には、センスの良しあしはともかく、手ごろで見た目もそれなりのイラストがザクザク探せるこのサービスを重宝していたんですよね。。

プロのイラストレータとか写真素材を販売している方々には(多分)憎たらしいサービスだったに違いなく、じゃ今後同程度で有料の画像データを購入するかというと、正直どうなんだろ、ですが。。
だいたいOffice利用の多くは一般利用者なわけで、町内会のポスターとか、社内のチラシとか、私のような「とりあえずなんかイラストを」派がほとんどじゃないんでしょうか?

なにも目くじら立てて「廃止」することないじゃん

というのが、正直な感想です。
今後はbing.comから「著作権に注意して」画像をダウンロードすることになるようです。


bingサイトにアクセス(言語設定を日本語に)
検索する場合はこのように「○○」の後に「クリップアート」とおまじないを入れる(笑)


(著作権的に注意が必要な画像はすぐにわかります)
アプリから直接的に呼び出せないのが、ちょっとね。でもbingサイトにはこれまで使っていたような画像もちらほら残っているようです(写真はないみたい?)。

内容の充実と、著作権関係で使えない画像まで表示されるのは、今後の改善でしょうかね?←するのか?
それにしても、知らなさすぎだ、自分(^_^;)
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伊藤忠商事の「朝型勤務」に思う

2015年01月14日 23時16分43秒 | お仕事関連
本日の朝日に、少し前に話題になった伊藤忠商事の、際限ない残業を止める仕組みとしての「早朝出勤による残業の減少を目指す制度」のその後が掲載されていました。
2013年10月に始まったその制度とは、

・午後8時以降の残業の原則禁止(前日の仕事の残りを翌朝に回す)
・その代わりの午前5時から9時の時間外手当の割増率の50%引き上げ

と、いうことで記事中の社員の方の感想としては「概ね良好」といった内容のものでした。
で、記事に出ているこの社員の方の生活時間が掲載されていて、私的に一番に目を引くのが「通勤時間」なのですね。

午前5時に起床して、←これはあり
6時半には自宅を出て、←これはあり
30分ほどで北青山の職場に到着。←多くの人は多分これは無理

伊藤忠商事のこの制度を初めて知ったとき、これができる人って会社の隣に住んでないと物理的に難しいんだろうな~、とまず思ったわけです。
ちなみにお国的にはこの朝型勤務が無制限な「長時間労働」を防止する一つのアイデアとしていろいろサポートしたいみたいな動きもあるようですが、この「朝型勤務」って働き手の大きな制約に繋がっちゃうんじゃないか?と思うのです。
確かに夜のダラダラ残業より、リフレッシュした翌日の作業の方が効率がよさそうであることは自分が朝型なので理解はできます。ただ、伊藤忠商事は都内の大企業ですから、都心の企業がこぞって朝型を始めたら、

まず、働く側の住む場所が限られてくること。
次に、早朝出勤した後の家庭は誰がみるのか、ということ。

私が以前仕事で関わった新宿の企業には、栃木県から3時間くらいかけて通勤していた管理職の方がいらっしゃいました。朝6時前に家を出て9時に出社。帰りは1時間くらい残業をして18時には退社してました。週末はもう少し残業なさっていましたね。例えばこういう社員だったらどうするのか。

この記事の社員の方は男性で45歳。管理職で案件山積なんだよ、なこの層の残業時間を減らす仕組みとしての朝型勤務で効果が出た、ということなのでしょうけれど、決してこれが「長時間残業を減らすための特効薬」みたいには考えたくないんですよね。

この試みの先駆者である伊藤忠商事には、例えば住まいが遠くてこの制度に対応できない社員や、家族のサポートを受けられない社員はどのようにこの制度を受け入れているのか、などについての問題点や改善点の情報を、一企業だけのノウハウにせず、公表して欲しいとな、と個人的には思っています。

参考までに2014年4月24日のニュースリリース
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タブレット向け「Office」の無料配信始まる!

2014年11月07日 18時50分54秒 | お仕事関連
MicrosoftがiPad用のオフィスの無料配布を始めました。
この原稿もWordで入力しているのですが、本家Wordでごちゃごちゃしていた機能がバッサリ落とされていて、超シンプル、思いっきりスリムなワープロソフトになっていて、非常に快適です。

操作感もスムーズでストレスなし。出先で文章をちょい書きするのにはこのくらいの機能があれば申し分ないと思います。iPadのアルバムから写真を貼るのも簡単だしこれで無料。。でかしたMS!

まだExcelやパワポは使っていないけど、おそらく今後出動頻度が メチャ高いアプリになること間違いなし。
久しぶりにMicrosoftを「褒めてあげた~い♪」気持ちになりました、とさ(^o^)v
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永ちゃんの台詞にはどんな「自己啓発本」もかなわない(と思う)

2014年05月18日 21時21分35秒 | お仕事関連
ちょっと古いネットニュースから。自分への備忘録として残しときます。
以下コピペ
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~矢沢永吉「マイク握って死にたい」 8日から全国ツアー~
スポニチアネックス 5月8日(木)17時41分配信


 歌手の矢沢永吉(64)が約40年ぶりにロックバンドを結成し、8日から全国ツアーを敢行する。インタビューで直前の心境を聞くと「ライブができること、それがうれしくて、いとおしい」と明かした。かつて“成り上がる”ために音楽を選んだ男は、いま「マイクを握って死にたい」という。9月で65歳になるロック界のレジェンド。年老いてなお、新たな扉を開いた境地に迫った。

 1975年4月、伝説のバンド「キャロル」が東京・日比谷野音のステージが炎上する中で解散してから40年目。矢沢は30歳以上離れた若いミュージシャンたちと新バンド「Z’s」(ゼッツ)を結成した。

 「何か面白いことヤリたいなあって。じゃあ、年の離れた若いヤツらとバンド作っちゃおうと。ただの思いつきです」と笑って明かした。

 これだけの大物が「単なる思いつき」で始めちゃう、この行動力こそが日本のロックを黎明(れいめい)期から40年以上けん引してきた原動力だ。「これからのヤザワは“思いつき”で行くんで。面白ければ、楽しければ、ドキドキしたらいいよねって。これがヤザワの今後のスタンスだと思うのよ、絶対に。この年になってくるとさあ、面白いとかドキドキすることとか、それすらも思いつきもしなくなるわけでしょ。だから、思いつきはグレートなんだよ!」。

 インタビュー冒頭からハイテンション。若い仲間とライブができる喜びが、どうにも抑えきれない様子だ。メンバーは自身のホームページで公募。約1000人の応募者には中高生や外国人もいた中、29~36歳の日本人男性3人を選んだ。

 「今年9月で65歳になるヤザワがですよ、2回りも3回りも年下のヤツらと一緒にバンドを組んじゃうわけよ。またコイツらがさあ、青いのよ。その青さがいいのよ。キラキラしてんのよ」とうれしそうに明かす。若いメンバーの姿に、自身が18歳の時に「音楽で食えるようになりたい、成り上がりたい」と夜汽車で広島から上京した当時を思い出すことがあるという。

 「彼らも、このチャンスを二乗三乗にしていきたいと思っているんだろうね。でも女の子にキャーキャー言われて喜んでいるうちは学芸会か文化祭。お客さんからカネもらうっていうのは、ちょっと違うとこなんだよって。ビシバシしばいて教えますよ」

 ツアーを前に教えたのは「ふてぶてしさという鎧(よろい)をかぶれ!」。ステージに「見てくれますか?」という感覚で立ったら「客に食われる」と言う。

 「俺を見ろ!という、ふてぶてしさを身につけろという意味。彼らはフランス語でも聞いているかのような理解不能な顔してたね(笑い)。でもツアー始まって2、3本やったら分かってくる。ああ、これか!ってね。俺からギャラもらってノウハウ学べて最高だと思うよ。でも、僕も彼らとやることによるキラキラした感覚をちゃんと頂戴いたしますよ」

 秋のツアーと年末の日本武道館公演が恒例の矢沢にとって、春にツアーを行うのは21年ぶりだ。

 「いつもこの時期は酒飲んでるし、レコード作っているか、ミックスダウンしているか、表には出ない時期でした。でも、こりゃイカンと思うようになってね。スパンが長すぎるのよ。若い時はいいけど、60歳過ぎたら体を維持するには5月ごろに10本でも20本でもライブやった方がいい。人前に出た方がいいのよ」

 最近は「眠くなったら10時でも寝ちゃう」という。ツアーの2カ月前から酒量も控えている。

 「ライブ頑張るぞぉ、いいなあ、ドキドキするなあ、若いコイツらとやるんだって考えるとうれしくてね。体をキープするために食事も意識し、ストレッチも意識してやっていますよ」

 かつてはハワイに別荘を買い、ロサンゼルスに豪邸を構え、オーストラリア・ゴールドコーストに高層ビルを建設する土地を購入したこともあった。「40代までは音楽以外にもドキドキするものないかなと探したけど、結局そんなにたくさんのことをうまくできるもんじゃない。人間なんて不器用で、僕もその一人。この年になって行き着いたのは、ライブやれるっていいよねってこと。こんな当たり前のこと昔から分かっていたけど、何て言うのかなあ。質感が違うのよ。そう、いとおしいのよ!」

 だから、そのために何をすべきかを考える。「いいステージをやりたい、それが一番の目的になる。この年になると、何が俺にとって大事なのかはっきりと分かる。だから眠けりゃ寝るし、2時間半のステージをしっかりやるためのトレーニングを欠かさずやる。そして日頃から歌い込む。バチッと最後まで歌える人であり続けたい、それだけです」

 「成り上がる」ために歌い始めた男が「ステージがいとおしい」という心境に至るまでには、オーストラリアで35億円という巨額の詐欺被害に遭うなど、多くの失意と苦難があった。

 「それも俺のライフには全部必要なことだったんだと、今では言える。でもさあ、あの時はこんなこと、とても言えなかったよ。俺、ワナワナ震えてたもん。いつかこれが笑い話になれば、そこまで頑張りたいと思ったけど、こうして今じゃホントに笑えるようになった。今もロックシンガーやらせてもらってるってことは、嫌われてはいなかったのかな。捨てられてはいなかったんだね」

 65歳を目前に至った境地。「自分の不器用さとか間口の狭さとかそういうことは別にして、自分にはやるべきことがあるという幸せを大事にしたいんだ。だって俺にはやることがあるんだもん。永ちゃん、ツアー待ってるよ!という手紙がバンバン来ててさあ。これが目的じゃなくて、何が目的なのよ。そしたら、よし行くぞ!ってなるでしょ。これなんだよ。分かる?分かるでしょ!この年になってくるとさあ、これなのよ。これがあるか、ないかなのよ」

 キャロル解散後の75年9月。ソロデビューアルバムの1曲「サブウェイ特急」で、矢沢は「畳じゃ死なねえぞ!」と歌った。あれから40年。

 「今は心底そう思う。新聞記者も5年後にやめられる?やめられないでしょ!ペン持って死にたいし、マイク握って、鍵盤持って死にたいよ。年とるとね、はっきりと分かってくるんだ。いとおしいもの、本当に大事なものがね。俺には歌一個あった。ラッキーだった。本当によかった。その境地で若いヤツらと街から街への旅に出るんだ。これよ、これ!」

 夢や欲求に忠実で打算を嫌って生きてきた男が、ひらめくままに行き着いた境地。それは若かりし頃に手に入れたどんなドリームよりも、キラキラと輝いて見えた。
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シビレます。
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