笑うかどには福きたる

日常生活で見たこと、聞いたこと、感じたことを牧歌的にのんびりと書いています。

「獣の奏者」読了  ~上橋菜穂子さん、あなたをお恨み申し上げます

2018年05月20日 17時27分18秒 | 読書

去年の5月「守り人」シリーズを読み終え(詳細はこちら)、「来年の連休には「獣の奏者」を借りる」約束をしていた妹殿から約束通りどかっと4冊送られて参りました。

実は私、以前NHKのアニメで1,2回この作品を観て名前だけは知っていたのですよ。このアニメのファンの方には大変申し訳ないのですが「筋は面白そうだけど、絵がう~ん。。。」とそのまますっかり忘れておりました。その後「守り人」シリーズを読み、俄然本作も読みたくなったんですよね。
上橋さんの美しい日本語から紡ぎだされる、主人公エリンの物語に、またまた寝食を忘れる日々を過ごしたことは言うまでもありません。

この作品は4冊ですが、もともとは2冊で完結だったそうです。2冊目の残り30ページあたりで「ちょっと待って。これでお終い?」とドキドキしたのは私だけではないはず。
確かにお終いと言われればお終いかもしれない。いや、でも、しかし、ここまで風呂敷を広げて、エリンやリランやその他もろもろ、登場した人物たちはどうなる(どうする)、と。


解説によると、その後紆余曲折あり、後半の2冊が追加され全4冊になったのだとか。4冊を読むともともとの2冊が大きな物語の「導入」に過ぎなかったのではと思えるくらいのスケールになっているのです。各500ページある後半の「探究編」「完結編」はもはや「子供向けのファンタジー」を域を超えているのではないでしょうか。


人や社会の在り方、ヒトとして生きていくことの素晴らしさ、恐ろしさを「闘蛇」「王獣」というファンタジー要素に包み込み、読み進めるうちにじわじわと「今の世の中を生きる自分」を問いかけられているようにも感じたのですね。

ヒトという生き物は、どんな時代も変わらない。良くも悪くも。
自分の立っている地べたを愛し、慈しむ心を持ち続けることがヒトとしての「良き生き方」につながるのかもしれないな、と。

「完結篇」のP443あたりからは、もう一心不乱に読み進めるほかはありません。途中で止まることなんかできません。P461あたりからは徐々に涙が溢れはじめます。そしてP468に入ったところで私の涙腺は完全に崩壊したのでした。物語の最後まで。。

上橋菜穂子さん、あなたは本当に罪作りな作家です。
美しい日本語、色とりどりの糸で緻密に複雑に織られた物語。あなたの作品を読んだ後はなかなか普通の生活に戻れない気がします。

また来年、今度は「鹿の王」を読みたいと思います。
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