一学期ももう終盤、四月からの部活を振り返って、どうだったでしょう?
新入部員は獲得できたでしょうか?
基礎練習、何をやって良いかわからなかったり、これでいいんだろうか、とは感じてはいませんか?
発声練習、「あめんぼ赤いなアイウエオ……」 腹式呼吸で、お腹ペコペコなんてやっていませんか?
両方とも、築地小劇場(もう80年くらい昔)時代からのメソードです。
意味が無いとは言いませんが、ちょっと退屈で、遠回りなメソードです。難しくいうと、ちょっとストイックです。
稽古はできたら、楽しく効率的であったほうがいいですね。「声を腹から出せ」と、よく言われますが、間違いです。お腹から声なんか出てきません。お腹は、せいぜい空いたときに「ぐ~」 こわしたときに「ごろごろ~」というのが関の山です。
声は、喉から出てきます。気管の上に声帯という筋肉があってこれが振動すことによって声が出てきます。だからだれでも声は出るんです。
ただ、声には響く声と響かない声があります。
声帯というのは、楽器でいうと弦、マウスピースにあたるものです。ブラバンの新入部員の人たちが、今このレベルじゃないでしょうか。
校庭や音楽室でブーブーとかピーピーとか、楽器とは思えない音を出していませんか。マウスピースで出たと思っても、楽器本体につけると、先輩たちのようにいい音が出ない。俗に「クサイ音」といわれます。わたしも中学のころはブラバンだったので、この時期「クサイ音」を出していました。
役者の声も同じです。声帯で出てきた声をうまく響かせないと「良い声」にはなりません。良い声というのは「良く響く声」のことです。
楽器は、弦楽器なら胴、金管楽器なら本体のラッパのところで共鳴させ、大きくてきれいな音になります。
声は、一言で言えば頭で共鳴させます。とくに顔の前方。
舌で上の前歯を触って下さい。そしてそのまま舌で上あごを奥の方になぞってみてください。最初の方は硬いでしょ、これを硬口蓋といいます。さらに奥を舌でなぞると柔らかくなって、ちょっとえづきそうになります。ここを軟口蓋といいます。
良く響く声というのは、この硬口蓋に声がぶち当たり、共鳴箱である頭の骨(特に前の方)が良く響いている声のことで、「マスク共鳴」といいます。最初に口を閉じてハミングしてみましょう。顔の前の方がビリビリと振動していることに気づきませんか? コツは、ハミングではありますが口の中を玉子一個はいるくらいのイメージで広げておくことです。ビリビリが自覚できたら、口を開けます。まだ息は鼻からだけ出していてください。ビリビリが消えてしまうようなら口から息が抜けている証拠です。ハミングすると声帯から出た声は鼻から出ざるをえず。だれでも顔がビリビリと振動します。難しくいうとホッペの中の空洞「前頭洞」が振動しているのです。
さて、口を開けてもビリビリしているようなら、そろそろと口から声を出してみます。とたんにビリビリが無くなりませんか? これは声が軟口蓋の柔らかい肉に吸収されてしまって響かなくなるからです。
そう、理屈は簡単なんです。声を硬口蓋にぶち当てられるようになればいいんです。
稽古で、一番声が硬口蓋にぶち当たる、口と喉のカタチを探ってください。うがいをするように真上を向いて声を出し、少しずつ顔を下に向けます。そのとき、口の中を大きく、すこしアゴを前の方にもっていくとスィートスポットが見つけやすいです。
次に体。姿勢良く立ちましょう。しかし力んだ「気をつけ」ではいけません。そしてきれいに歩いてみましょう。コツは腰で歩くということです。
次に顔。自然な笑顔が作れますか? ウィンクできますか? 案外できませんね。笑顔は虫歯が痛いのを堪えているような顔になっていませんか。ウィンクは目にゴミが入ったみたいにギュっとなっていませんか。慣れない人は片目だけつぶることもできません。アメリカ人なんかは子供でも自然にやってのけます。生活の中に習慣としてあるからです。
わたしは、今指導している生徒にAKBの「会いたかった」をやらせています。明るく響く声。美しい姿勢、笑顔が全部この中には含まれています。まあ、やりかたは様々です。役者の基礎を教えるのは、自転車の乗り方を口で説明するようにもどかしいものです。世に出回っている入門書もムツカシイもなが多いです。この春から『ホンワカ女子高生HBが本格的に演劇部にとりくむまで』という小説形式の入門書のブログを始めました『女子高生HB』で検索してください。 大橋むつお