大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・セレクトエッセー・1『四つ葉のクローバー』

2013-01-05 23:03:11 | エッセー
セレクトエッセー・1
『四つ葉のクローバー』
    



 四つ葉のクローバーを摘んだことありますか……?


 ものごころがついたころ、社宅のとなりにKちゃんという可愛い子がいました。
 苗字は、昨年までAKB48のセンターをやっていた子と同じです。

 よく、ママゴトのつきあいをさせられました。犬の散歩のつきあいもさせられました。
 ぼくよりも一個としうえということもありましたが、とにかくKちゃんにはかないません。

 笑顔がとびきりいいのです。ちょっと不二家のペコちゃんに似ていました。
 ちょっぴり右のくちびるが上がってえくぼの笑顔になります。とてもチャーミングでした。

 ときどき、空き地や公園でお花摘みなんかもやらされました。

「四つ葉のクローバー探そ」
「うん」
 頼まれる……というか、笑顔で命じられるとことわれませんでした。

 Kちゃんは、すぐに四つ葉のクローバーを見つけます。
 ぼくは、一つも見つけられませんでした。

 Kちゃんは、中学に入ったころに引っ越ししました。
 中学では、学年もちがい、あまり会うこともありませんでした。
 ただ、うわさでは、勉強もよくできて、可愛さにみがきがかかり、男の子にも評判でした。
 
 そんなKちゃんが、まぶしくて口もきけませんでした。
 ぼくには、Kちゃんは四つ葉のクローバーでした。

 高校に入って、教室で友だちとしゃべっていると、視線を感じました。
「むっちゃん、ちゃうのん……?」
 教室の入り口で、目を細めてKちゃんがいました。

 まさか、同じ高校だとは思わなかったので、ひさびさに話しました。
「なんで、そんな目ぇ細めんのん?」
「うん、ちょっと目ぇわるなって、メガネ替えてるとこ」

 話題は、いつのまにか四つ葉のクローバーの話になりました。
 
 四つ葉のクローバーというのは、偶然にはできないそうです。
 葉っぱの出る成長点というところを、適度に踏みつけられてできるそうです。
 中には、せっかく四つ葉になったところを、踏みしだかれるものもあるそうです。

 だから、人が適度に歩いて踏みつけていそうなところがポイント。
 Kちゃんは、十何年かぶりで、右のホッペにえくぼをつくって、教えてくれました。

 ぼくは、Kちゃんの卒業式で、送辞を読みました。
 送辞を読んで、席にもどる途中、ほんのちょっとKちゃんと目が合いました。
 あいかわらずの、細目。でも、緊張して笑顔ではありませんでした。

 それが、Kちゃんを見た最後になりました……。

「Kちゃん、亡くなったんやて」
 母がひっそりと言いました。

 脳腫瘍だったようです。

 視力の低下が止まらないので、専門の先生に診てもらいました。
 もう、手遅れだった……お通夜から帰ってきた母が、そう言いました。

 四つ葉のクローバーは、適度に踏みつけられることでできます。
 
 Kちゃんは、とても大事なことを教えてくれました。

 生きていたら、この三月で還暦。
 四つ葉のクローバーの還暦になるんやなあ……。

 そんなことを思い出した……お正月のしめくくりでした。

 

 
コメント
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