タキさんの押しつけ映画評
『思い出のマーニー』
これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。
久し振りのジブリアニメは、いつも通りの美しい自然を背景に、ちょっと不思議な、そして、切ないまでに優しいお話でした。
原作は、1967年のイギリスの児童文学ですが、舞台を北海道に変えて作られています。 幼い時に、両親を同時に亡くし、引き取ってくれた一番近しい親戚とも死に別れ、多少 遠縁に育てられている杏奈。愛情一杯に育てられているが、ある行き違いから、愛情を信じられなくなる。そんな自分の事も大嫌い、周囲にも溶け込めない。 いつも殻の中に閉じこもり、無理にドアを開けようとする者には牙を剥く。 彼女は喘息で、中学校の夏休みに田舎の親戚の家に療養にやってくる。その海辺の町で、杏奈は不思議な少女マーニーと出合う……。
人は誰しも子供ながらに深く傷ついて、遣り場の無い怒りと悲しみに身動きがとれなくなる経験をするものだと思います。
大概は新しい経験や、他者との関わりの中で癒やされ忘れ去って行くのだと思いますが、中には生涯忘れ得ない傷として残る経験もあるかもしれません。
主人公 杏奈もそうなってしまったかも知れない、彼女はまさに崖っぷちに立っている。湾の奥に建っている洋館の少女マーニーも、金持ちのお嬢様ではあるが、愛情に飢えた存在だった。 孤独な魂が呼び合うようにして、二人は出会う。ひと夏の出会いが、この傷ついた二つの魂を癒やして行くさまを情感たっぷりに描いてあります。
これを見て、古い映画を思い出しました。
“わが青春のマリアンヌ”1955年 仏/西独合作 監督:ジュリアン・デュビビエ <マリアンヌ>にマリアンヌ・ホルト…そらもう、人に在らざると思う程 美しい女性(に見えました……ガキの目にはね)でありました。一目で彼女に恋する少年ヴィンセントにホルスト・ブーフホルツ(“荒野の七人”で一番若いガンマン役) 殆どディテールしか覚えていませんが……ヨーロッパの山中、三つの国が国境を接する所(これはウ゛ィンセントがマリアンヌを追いかけて行く先だったかな?)に寄宿学校がある。そこに、親に見捨てられたらウ゛ィンセントが転校して来る。彼はアルゼンチンからやってきたので、ウ゛ィンセントとは呼ばれず「アルゼンチーナ」と呼ばれる。湖の対岸に「幽霊城」と呼ばれる無人の古城が有った。ある日、ウ゛ィンセントは肝試しに連れ出されて古城に向かう。
無人の筈の城には、見るからに恐ろしげな大男の管理者がおり、ウ゛ィンセント以外の生徒は逃げ出す。一人城に入ったウ゛ィンセントは美しい女性の肖像画を見つける。すると、その肖像画から抜け出すようにして美少女が現れる……この女性、現実なのか幻なのか最後まで解らない。現実の存在だとしても、その正体も事情も全く解らない。マリアンヌは幻のように消え(連れ去られた?)湖畔をさまようウ゛ィンセントが発見される。
ウ゛ィンセントはマリアンヌの実在を信じ、彼女を求めて学校から旅立つ。もう、ロマンと幻想に彩られた青春映画であります。今見たら突っ込み所満載?……いや、デュビビエの耽美映像は決して古びませんから、50年前(観たのは8~9歳頃)と同じように引き込まれるかもしれません。“マリアンヌ”は、少年から大人へと旅立つ男の子の話で、本作は、少女の傷ついた魂の救済の話。設定は全く違いますが、どこか同じ匂いがします。 いずれも自分の子供時代・青春時代を思い出して(“マリアンヌ”初見はジャリの時でしたから単に物語世界に憧れてました。)切ない胸苦しい想いに捕らわれます。 少々ホラーテイストを含んではいますが「怖い」とか「ゾッとする」とかは全くありませんのでご安心下さい。本作の重要なテーマは“許し”です。“許す”というセリフに注目して見て下さい。
さて、長編アニメからは引退した宮崎駿さんでありますが、御大も原作のファンであるらしく、実にたびたびスタジオに現れ、ある時はさりげなく絵コンテを持ち込んだり、自分の設定を喋ったりしたそうであります。たまりかねたスタッフは「宮崎駿の話を聞く会」アハハハハ〓 なんてのを開いて、存分に語ってもらったそうです。結局、殆ど無視(宮崎駿設定では舞台は「瀬戸内」とか言うてはったらしい)されたようで……。
こうなったら無視した若手に一撃を加えるべく、宮崎駿は現場復帰する以外にありません!!
復帰するなら、原作物のアレンジではなく、堂々たるオリジナルストーリーのSF/ファンタジーで勝負! 待っとります〓
『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』
8月28日発売!(税込み799円=本体740円+税)
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』
青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説!
ラノベとして読んでアハハと笑い、ホロリと泣いて、気が付けば演劇部のマネジメントが身に付く! 著者、大橋むつおの高校演劇45年の経験からうまれた、分類不可能な新型高校演劇入門ノベル!
ネット通販ではアマゾンや楽天があります。青雲書房に直接ご注文頂ければ下記の定価でお求めいただけます。
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送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。
大橋むつお戯曲集『わたし 今日から魔女!?』
高校演劇に適した少人数戯曲集です。神奈川など関東の高校で人気があります。
60分劇5編入り 定価1404円(本体1300円+税)送料無料。
お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。
青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351
『思い出のマーニー』
これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。
久し振りのジブリアニメは、いつも通りの美しい自然を背景に、ちょっと不思議な、そして、切ないまでに優しいお話でした。
原作は、1967年のイギリスの児童文学ですが、舞台を北海道に変えて作られています。 幼い時に、両親を同時に亡くし、引き取ってくれた一番近しい親戚とも死に別れ、多少 遠縁に育てられている杏奈。愛情一杯に育てられているが、ある行き違いから、愛情を信じられなくなる。そんな自分の事も大嫌い、周囲にも溶け込めない。 いつも殻の中に閉じこもり、無理にドアを開けようとする者には牙を剥く。 彼女は喘息で、中学校の夏休みに田舎の親戚の家に療養にやってくる。その海辺の町で、杏奈は不思議な少女マーニーと出合う……。
人は誰しも子供ながらに深く傷ついて、遣り場の無い怒りと悲しみに身動きがとれなくなる経験をするものだと思います。
大概は新しい経験や、他者との関わりの中で癒やされ忘れ去って行くのだと思いますが、中には生涯忘れ得ない傷として残る経験もあるかもしれません。
主人公 杏奈もそうなってしまったかも知れない、彼女はまさに崖っぷちに立っている。湾の奥に建っている洋館の少女マーニーも、金持ちのお嬢様ではあるが、愛情に飢えた存在だった。 孤独な魂が呼び合うようにして、二人は出会う。ひと夏の出会いが、この傷ついた二つの魂を癒やして行くさまを情感たっぷりに描いてあります。
これを見て、古い映画を思い出しました。
“わが青春のマリアンヌ”1955年 仏/西独合作 監督:ジュリアン・デュビビエ <マリアンヌ>にマリアンヌ・ホルト…そらもう、人に在らざると思う程 美しい女性(に見えました……ガキの目にはね)でありました。一目で彼女に恋する少年ヴィンセントにホルスト・ブーフホルツ(“荒野の七人”で一番若いガンマン役) 殆どディテールしか覚えていませんが……ヨーロッパの山中、三つの国が国境を接する所(これはウ゛ィンセントがマリアンヌを追いかけて行く先だったかな?)に寄宿学校がある。そこに、親に見捨てられたらウ゛ィンセントが転校して来る。彼はアルゼンチンからやってきたので、ウ゛ィンセントとは呼ばれず「アルゼンチーナ」と呼ばれる。湖の対岸に「幽霊城」と呼ばれる無人の古城が有った。ある日、ウ゛ィンセントは肝試しに連れ出されて古城に向かう。
無人の筈の城には、見るからに恐ろしげな大男の管理者がおり、ウ゛ィンセント以外の生徒は逃げ出す。一人城に入ったウ゛ィンセントは美しい女性の肖像画を見つける。すると、その肖像画から抜け出すようにして美少女が現れる……この女性、現実なのか幻なのか最後まで解らない。現実の存在だとしても、その正体も事情も全く解らない。マリアンヌは幻のように消え(連れ去られた?)湖畔をさまようウ゛ィンセントが発見される。
ウ゛ィンセントはマリアンヌの実在を信じ、彼女を求めて学校から旅立つ。もう、ロマンと幻想に彩られた青春映画であります。今見たら突っ込み所満載?……いや、デュビビエの耽美映像は決して古びませんから、50年前(観たのは8~9歳頃)と同じように引き込まれるかもしれません。“マリアンヌ”は、少年から大人へと旅立つ男の子の話で、本作は、少女の傷ついた魂の救済の話。設定は全く違いますが、どこか同じ匂いがします。 いずれも自分の子供時代・青春時代を思い出して(“マリアンヌ”初見はジャリの時でしたから単に物語世界に憧れてました。)切ない胸苦しい想いに捕らわれます。 少々ホラーテイストを含んではいますが「怖い」とか「ゾッとする」とかは全くありませんのでご安心下さい。本作の重要なテーマは“許し”です。“許す”というセリフに注目して見て下さい。
さて、長編アニメからは引退した宮崎駿さんでありますが、御大も原作のファンであるらしく、実にたびたびスタジオに現れ、ある時はさりげなく絵コンテを持ち込んだり、自分の設定を喋ったりしたそうであります。たまりかねたスタッフは「宮崎駿の話を聞く会」アハハハハ〓 なんてのを開いて、存分に語ってもらったそうです。結局、殆ど無視(宮崎駿設定では舞台は「瀬戸内」とか言うてはったらしい)されたようで……。
こうなったら無視した若手に一撃を加えるべく、宮崎駿は現場復帰する以外にありません!!
復帰するなら、原作物のアレンジではなく、堂々たるオリジナルストーリーのSF/ファンタジーで勝負! 待っとります〓
『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』
8月28日発売!(税込み799円=本体740円+税)
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』
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大橋むつお戯曲集『わたし 今日から魔女!?』
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