大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・かざみ 時と風の少女・12『危うく墜落!』

2015-09-17 15:51:30 | 時かける少女
かざみ 時と風の少女・12
『危うく墜落!』
 
  

 ジェット旅客機は河川敷に沿って墜落、長さ五百m幅三百mに渡って被害を及ぼす。

 河川敷にいる高校生、サラリーマンとOL、ロケの役者とスタッフ、四百人余りが巻き添えで死亡!
 かざみの体内埋め込み型情報端末タマホは、そうシュミレートした。むろんかざみも生きてはいられない。

 あの事故よりも悲惨だ!

 自分が孤児の赤ん坊になった十七年前の航空機事故が頭をよぎる。
――せっかくお父さんの謹慎が解けて、これからだっていうのに、百年前に時空移動させられ、飛行機事故の巻き添えで死ぬ? いやだ!!――
 そう思ったが『ここが墜落の中心、生存率ゼロパーセント』タマホは他人事のような分析をする。
 河川敷にいる人たちは、呆然と至近距離に迫った旅客機を見上げるばかりで、逃げることもしない。かえって被害が及ばない堤防上の人たちが逃げ出している。

 パニックなんだ……!

「タマホ、あの旅客機の墜落原因は!?」
『じきに死ぬのに、そんなの知って、どうするんだ?』
「つべこべ言わないで、サーチしなさい!」
『………………』
「早く!」
『サーチの最中だ』
「急いで!」
『……コンピュターがハッキングされている。サイバーテロだな、機内からのコントロールは不能』
「じゃタマホ、こちらから旅客機のコンピューターに接続してコントロ-ル!」
『旅客機のコンピューターに接続するのは違法だ』
「それは二十二世紀でよ。ここは百年前の二十一世紀!」
「でも、タマホの能力じゃ、セキュリティーは破れない』
「この時代のセキュリテーなら突破できるでしょ!」
『えと……お、コンタクト成功……ハッキングブロック、エンジン出力マックス!』

 言問橋の上に迫っていた旅客機のエンジン音が十倍ほどに大きくなり、機首が上がった。

 河川敷に居る人たちの鼻先をかすめ、旅客機は川上の白髭橋の方に飛びさっていった。
「あぶないとこだった……」
『この時代のコンピューターはチョロい……ん、かざみ、体が透けていたんじゃないのか?』
「あ……元に戻ってる!」
 かざみの消えかけていた手足が、しっかりもどっていた。

――やったわね! あの旅客機にひいひいお祖父ちゃんの太田義純さんが乗ってたの。かざみさんが救けなきゃ、飛行機事故で死んでるところ!――玄孫のなゆたの思念が届いた。
「やった! じゃ、これで二十二世紀に戻れるのね!」
――……かざみさんのひいひいお祖父ちゃんお祖母ちゃんは十六人、八組いるの。まだ不安要素は残ってる、もう少しがんばって――
「ちょ、ちょっと、がんばるって……!」
――あ、時空が歪んできた……かざみさ……だから……あ……――
 なゆたの思念はとぎれとぎれになり、消えてしまった。

 百年前の隅田川テラスに一人取り残された。慣れない街中に出るのも億劫で、かざみは川辺の遊歩道をボンヤリと歩いた。

「かざみ……かざみじゃないか?」
 振り返ると、かざみと同じ帝都国際高校の制服を着た男子生徒が立っている。かざみは判断がつかない。
『時空パルスは2103だ、この時代の人間だ』タマホが解析した。
 かざみは混乱した。この時代の人間が、なぜ百年後の自分を知っているんだ……男子生徒は人懐っこい笑顔でかざみを見つめる。
 かざみは曖昧な笑顔を返すしかなかった……。


※:登場人物

 時任かざみ     百年の時空を超えて旅する少女 航空機事故の生き残り
 時任祐之      陸軍中佐 航空機事故でかざみを救う かざみを引き取り十七歳まで育てる
 ノラ          軍から派遣された監視用アンドロイド 祐之の謹慎が解けてからはハウスキーパー かざみのサポーター
 満腹亭のオヤジ  祐之の元部下 戦争で負傷 脳みそ以外義体
 加藤珠美      かざみのクラスメート 野球部のマネージャー 名ばかりエース佐藤の彼女
 佐藤球児      下り坂の野球部エース
 なゆた       かざみの玄孫 百年未来から来てかざみを百年前の世界にもどした

※:かざみの使命  百年前に戻って高祖父母をめでたく結びつける


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