かざみ 時と風の少女・2
『あの事故から十七年』
花園先生は、授業中に五人か六人の生徒をあてる。
四人ですむこともなく、七人あてられることもない。それも出席番号順なので、ほぼ予想がつく。
先週は渡辺君まであたったので、今週は女子の頭から。
かざみは二十一番、女子の六番目なので、今日あたる確率は五十パーセント。
五十パーセントの確率なら、作戦実施です!
ノラがそう言うので、彼女が協力することを条件に決行と決めた。
教室には軍事用の試作ホログラムを仕掛けてきた。六時間目の開始直前にスイッチが入る。
かざみが教室に入って座席に着くまで本物のかざみと寸分違わないホログラムが完全な3Dで空間に投影される。民需用のホログラムと違って、体温や心拍までモニターに認識され、本物と区別がつかない。軍のアナライザーでもホログラムであることを見破るのに五分かかった。
ただ機動時間が九十分しかなく、会話する機能も無い。また、触れば手がすり抜けてしまうので、話しかけられたり触られたりしたら一発でバレてしまう。
「しかし、なんでここまでやって六十分の時間を稼ぐの?」
ノラが遠隔操作で学校のセキュリティーを戻しながら聞いた。
「今日は記念日なの」
「なんの?」
「言えない。ノラさんに言ったらお父さんに筒抜けだもん」
「言わないわよ。原則、事と次第によりけりだけど、記念日みたいに良いことだったら言わないわよ」
「ごめん、あと三時間もしたらノラさんにも分かるから、それまでは単独行動させて……ね?」
「ん……ま、仕方ないか、あたしもここまで首突っ込んだんだから。じゃ、六時までね、約束だよ」
「うん」
ノラと別れると、かざみはカバンを調べた。ぶら下げているマスコットの茶々が監視機能のあるものにすり替えられていた。
「あら、おじさん、店で待っていてくれるんじゃなかった?」
満腹亭のオヤジが、店の二つ手前の角で待っていた。
「スパイが付いてるよ」
「え、それならノラさんと別れた直後に始末した。マスコットに化けてた」
「そりゃダミーだよ、本物は……」
満腹亭のオヤジは穴の開くような目でかざみの体を上から下までサーチした。オヤジは脳みそ以外は義体である。
「かざみちゃん、スパイはお腹の中だ。朝ごはんに仕掛けられたね……いま無効にしてやるから」
オヤジが手をかざすと、お腹がポッと温かくなった。お腹の中でスパイが破壊された。
「やるね、ノラさん」
「ま、元々は軍事用アンドロイドのプロトタイプ。本人も無意識でやっちまうんだ、堪忍してやりな」
「平気、ノラさんは赤ん坊のころから、こんなふうにして遊んでもらってたから」
「でも、今夜の作戦はバレちゃまずいからな。そうだろ?」
「うん、あと二時間半だ。よろしくオジサン」
「じゃ、最初に、あそこに行くか」
「うん、よろしく!」
二人はニマニマしながら「あそこ」を目指した。あの事故から、ちょうど十七年目の九月一日だった……。
『ノラ バーチャルからの旅立ち』ノラ バーチャルからの旅立ち:クララ ハイジを待ちながら:星に願いを:すみれの花さくころの4編入り(税込1080円)
『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』 (税込み799円=本体740円+税)
東京から転校してきた坂東はるかが苦難を乗り越えていっぱしの演劇部員になるまでをドラマにしました。店頭では売切れはじめています。ネット通販で少し残っています。タイトルをコピーして検索してください。また、星雲書房に直接注文していただくのが確実かと思います。
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』
青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説と戯曲集!
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ラノベとして読んでアハハと笑い、ホロリと泣いて、気が付けば演劇部のマネジメントが身に付く! 著者、大橋むつおの高校演劇45年の経験からうまれた、分類不可能な新型高校演劇入門ノベルシリーズと戯曲!
ネット通販ではアマゾン(完売)や楽天があります。青雲書房に直接ご注文頂ければ下記の定価でお求めいただけます。
青雲書房直接お申し込みは、下記のお電話かウェブでどうぞ。送料無料。送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。
お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。
青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351
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「かざみちゃん、スパイはお腹の中だ。朝ごはんに仕掛けられたね……いま無効にしてやるから」
オヤジが手をかざすと、お腹がポッと温かくなった。お腹の中でスパイが破壊された。
「やるね、ノラさん」
「ま、元々は軍事用アンドロイドのプロトタイプ。本人も無意識でやっちまうんだ、堪忍してやりな」
「平気、ノラさんは赤ん坊のころから、こんなふうにして遊んでもらってたから」
「でも、今夜の作戦はバレちゃまずいからな。そうだろ?」
「うん、あと二時間半だ。よろしくオジサン」
「じゃ、最初に、あそこに行くか」
「うん、よろしく!」
二人はニマニマしながら「あそこ」を目指した。あの事故から、ちょうど十七年目の九月一日だった……。
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東京から転校してきた坂東はるかが苦難を乗り越えていっぱしの演劇部員になるまでをドラマにしました。店頭では売切れはじめています。ネット通販で少し残っています。タイトルをコピーして検索してください。また、星雲書房に直接注文していただくのが確実かと思います。
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