邪気眼少女イスカの失踪②
『梅雨の晴れ間』
梅雨の晴れ間と言うのは新鮮だ。
そんなことは、これまでの十六年の人生で分かっているはずなのに、特別に思ってしまう。
ゆうべはひどい夢を見た。どんな夢だったかは忘れてしまったけど、ひどかったということだけは、感覚として鮮明に残っている。
あまりのひどさに、起き抜けから体がクタクタ。
身体を引きずるようにして起きて、まっすぐお風呂に向かった。
え……あたしって、裸で寝てたの?
パジャマを脱ごうとして気が付いた。いま思うと、とても変なんだけど、その時は、脱ぐ手間が省けたとしか感じなかった。
バスタブにお湯が無かった。スイッチを押して「お湯はりをします」の合成音声。ノロノロとお湯が満ちるのを待っているうちに眠ってしまった。
ゲホゲホゲホ。少しお湯を飲んで目が覚める。
それからはいつも通りの朝。
「いってきまーす」
玄関を飛び出して、風の匂い。見上げた空は爽やかな梅雨の晴れ間。
感動して、見上げたまま突っ立ってしまった。
「UFOとか見える……?」
真横で声がした。
「お、おはよ」
返事が上ずってしまった。目の前に居るのは……親友の田中沙利菜愛利江留(たなかさりなありえる)……とフルネームと共に思い出し、彼女の名前を呼ぶときは略称のサリナでなければならない! アラームが、頭の中で点滅した。
「だいじょうぶ、イスカ?」
「だいじょぶ、だいじょぶよサリナア……」
「ん、ひょっとして、あたしのことフルネームで呼ぼうとした?」
サリナがジト目になった。
「ん、んなわけないじゃん。今日は決着つけなきゃならない日なんだからね。緊張よ緊張! オー!」
いろんなことをいっぺんに思い出し、拳を天に突き上げてしまったあたしだった。
※ 登場人物
イスカ 戦国時代の美濃の女忍者 今は高校一年生
田中沙利菜愛利江留 イスカの親友 普段は略称のサリナで通っている
『梅雨の晴れ間』
梅雨の晴れ間と言うのは新鮮だ。
そんなことは、これまでの十六年の人生で分かっているはずなのに、特別に思ってしまう。
ゆうべはひどい夢を見た。どんな夢だったかは忘れてしまったけど、ひどかったということだけは、感覚として鮮明に残っている。
あまりのひどさに、起き抜けから体がクタクタ。
身体を引きずるようにして起きて、まっすぐお風呂に向かった。
え……あたしって、裸で寝てたの?
パジャマを脱ごうとして気が付いた。いま思うと、とても変なんだけど、その時は、脱ぐ手間が省けたとしか感じなかった。
バスタブにお湯が無かった。スイッチを押して「お湯はりをします」の合成音声。ノロノロとお湯が満ちるのを待っているうちに眠ってしまった。
ゲホゲホゲホ。少しお湯を飲んで目が覚める。
それからはいつも通りの朝。
「いってきまーす」
玄関を飛び出して、風の匂い。見上げた空は爽やかな梅雨の晴れ間。
感動して、見上げたまま突っ立ってしまった。
「UFOとか見える……?」
真横で声がした。
「お、おはよ」
返事が上ずってしまった。目の前に居るのは……親友の田中沙利菜愛利江留(たなかさりなありえる)……とフルネームと共に思い出し、彼女の名前を呼ぶときは略称のサリナでなければならない! アラームが、頭の中で点滅した。
「だいじょうぶ、イスカ?」
「だいじょぶ、だいじょぶよサリナア……」
「ん、ひょっとして、あたしのことフルネームで呼ぼうとした?」
サリナがジト目になった。
「ん、んなわけないじゃん。今日は決着つけなきゃならない日なんだからね。緊張よ緊張! オー!」
いろんなことをいっぺんに思い出し、拳を天に突き上げてしまったあたしだった。
※ 登場人物
イスカ 戦国時代の美濃の女忍者 今は高校一年生
田中沙利菜愛利江留 イスカの親友 普段は略称のサリナで通っている