大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・邪気眼少女イスカの失踪②『梅雨の晴れ間』

2016-06-23 13:57:51 | 小説
邪気眼少女イスカの失踪②
   『梅雨の晴れ間』



 梅雨の晴れ間と言うのは新鮮だ。

 そんなことは、これまでの十六年の人生で分かっているはずなのに、特別に思ってしまう。
 ゆうべはひどい夢を見た。どんな夢だったかは忘れてしまったけど、ひどかったということだけは、感覚として鮮明に残っている。
 あまりのひどさに、起き抜けから体がクタクタ。
 身体を引きずるようにして起きて、まっすぐお風呂に向かった。

 え……あたしって、裸で寝てたの?

 パジャマを脱ごうとして気が付いた。いま思うと、とても変なんだけど、その時は、脱ぐ手間が省けたとしか感じなかった。
 バスタブにお湯が無かった。スイッチを押して「お湯はりをします」の合成音声。ノロノロとお湯が満ちるのを待っているうちに眠ってしまった。
 ゲホゲホゲホ。少しお湯を飲んで目が覚める。
 それからはいつも通りの朝。
「いってきまーす」
 玄関を飛び出して、風の匂い。見上げた空は爽やかな梅雨の晴れ間。

 感動して、見上げたまま突っ立ってしまった。

「UFOとか見える……?」
 真横で声がした。
「お、おはよ」
 返事が上ずってしまった。目の前に居るのは……親友の田中沙利菜愛利江留(たなかさりなありえる)……とフルネームと共に思い出し、彼女の名前を呼ぶときは略称のサリナでなければならない! アラームが、頭の中で点滅した。
「だいじょうぶ、イスカ?」
「だいじょぶ、だいじょぶよサリナア……」
「ん、ひょっとして、あたしのことフルネームで呼ぼうとした?」
 サリナがジト目になった。
「ん、んなわけないじゃん。今日は決着つけなきゃならない日なんだからね。緊張よ緊張! オー!」

 いろんなことをいっぺんに思い出し、拳を天に突き上げてしまったあたしだった。


 ※ 登場人物

 イスカ       戦国時代の美濃の女忍者 今は高校一年生

 田中沙利菜愛利江留    イスカの親友 普段は略称のサリナで通っている


 
コメント
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