邪気眼少女イスカの失踪③
『もう一人のイスカ・1』
……てっきり断るのかと思った。 四階への階段を上がりながらサリナが呟く。
教室に向かう前に、三階の社会科準備室に寄ったところ。
先月から高島先生に迫られていた郷土史研究部への入部をOKしてきたのだ。
「あたしが断ったら、サリナだけが無理くりに入らされてたでしょ」
「でも、巻きこんじゃったよ」
「いいって、いいって」
「でも、急にどうして?」
「んーーーーーー内なる衝動?」
「衝動で入っていい部活じゃないわよ」
「へへ、自分でも説明つかないんだ……ま、次だよ次」
「でも……」
「気にしない、気にしない」
「うん……でも、なんで右手ニギニギしてんの?」
「え……あ、ほんとだ」
「社会科準備室出てからずっとだよ」
「どしてだろ?」
そう言いながらもニギニギをやめられないあたし。
ウォット!!!
自然に体が旋回して、旋回したあたしを掠るようにして男子がタタラを踏んだ。
「西峰くん、いつものセクハラしようとしたでしょ」
「してねーよ!」
「したよ。ほら、その指」
西峰真之介の右手の指がやらしそーに蠢いている。
「これは、打った拍子に痙攣してんだ。ケ!」
そう言って背中を向けた西峰。あたしの中で小さな爆発が起こった。
「死ね!」
爆発が収まると、西峰が再びひっくり返っていた。で、あたしは、なぜか西峰のズボンを持っている。
「え、ええ! なんだよ! なんだよ、これは!?」
「あんたのズボンが勝手に飛び込んできた」
そう言いながら、あたしは西峰のみっともない姿をスマホで撮っている。
「と、撮るな!」
「もう撮っちゃった」
「くそ、消せえ!!」
「うん、そのうち」
「雲母坂(きららざか)ああああああああああ!」
跳びかかってきた西峰を反射神経で避けてしまう。もし衝動に従っていれば、あたしの拳をモロに受けて西峰は絶命している。
「お、おまえ、ほんとうに雲母坂か? 弱虫の雲母坂イスカなのか?」
「んーーーーー多分」
自分でも驚いているんだから多分としか答えられない。
「あのさ、もう人に乱暴すんの止しなさいよね。女の子にぶつかって泣かせるなんてサイテーだからね。わぁった?」
「お、おお」
「ぶつかるだけじゃなくて、スカートまくったりブラのホック外したり。西峰流忍法の汚れだよ」
「お……お、おお」
「じゃ、今日から掃除もサボらないでね。サボったら、今度はズボンじゃすまないから。ほら、さっさと穿いて。朝礼始まっちゃうから」
西峰はズボンを持って男子トイレに駆け込んだ。西峰にもハズイという気持ちがあるようだ。
「すごいよイスカ! 郷土史研だけじゃなくて、西峰も決着つけちゃうんだ!」
「あ、これはたまたま。もう一個が本命だわさ」
「あ……それって……?」
「そう、イスカを探さなきゃ。親友のイスカをさ」
あたしは、先月から行方不明になっているもう一人のイスカを思い浮かべた。
我が友、邪気眼電波女イスカ……を。
※ 登場人物
雲母坂イスカ 戦国時代の美濃の女忍者 今は高校一年生
田中沙利菜愛利江留 イスカの親友 普段は略称のサリナで通っている
西峰真之介 西峰流忍法宗家の息子
『もう一人のイスカ・1』
……てっきり断るのかと思った。 四階への階段を上がりながらサリナが呟く。
教室に向かう前に、三階の社会科準備室に寄ったところ。
先月から高島先生に迫られていた郷土史研究部への入部をOKしてきたのだ。
「あたしが断ったら、サリナだけが無理くりに入らされてたでしょ」
「でも、巻きこんじゃったよ」
「いいって、いいって」
「でも、急にどうして?」
「んーーーーーー内なる衝動?」
「衝動で入っていい部活じゃないわよ」
「へへ、自分でも説明つかないんだ……ま、次だよ次」
「でも……」
「気にしない、気にしない」
「うん……でも、なんで右手ニギニギしてんの?」
「え……あ、ほんとだ」
「社会科準備室出てからずっとだよ」
「どしてだろ?」
そう言いながらもニギニギをやめられないあたし。
ウォット!!!
自然に体が旋回して、旋回したあたしを掠るようにして男子がタタラを踏んだ。
「西峰くん、いつものセクハラしようとしたでしょ」
「してねーよ!」
「したよ。ほら、その指」
西峰真之介の右手の指がやらしそーに蠢いている。
「これは、打った拍子に痙攣してんだ。ケ!」
そう言って背中を向けた西峰。あたしの中で小さな爆発が起こった。
「死ね!」
爆発が収まると、西峰が再びひっくり返っていた。で、あたしは、なぜか西峰のズボンを持っている。
「え、ええ! なんだよ! なんだよ、これは!?」
「あんたのズボンが勝手に飛び込んできた」
そう言いながら、あたしは西峰のみっともない姿をスマホで撮っている。
「と、撮るな!」
「もう撮っちゃった」
「くそ、消せえ!!」
「うん、そのうち」
「雲母坂(きららざか)ああああああああああ!」
跳びかかってきた西峰を反射神経で避けてしまう。もし衝動に従っていれば、あたしの拳をモロに受けて西峰は絶命している。
「お、おまえ、ほんとうに雲母坂か? 弱虫の雲母坂イスカなのか?」
「んーーーーー多分」
自分でも驚いているんだから多分としか答えられない。
「あのさ、もう人に乱暴すんの止しなさいよね。女の子にぶつかって泣かせるなんてサイテーだからね。わぁった?」
「お、おお」
「ぶつかるだけじゃなくて、スカートまくったりブラのホック外したり。西峰流忍法の汚れだよ」
「お……お、おお」
「じゃ、今日から掃除もサボらないでね。サボったら、今度はズボンじゃすまないから。ほら、さっさと穿いて。朝礼始まっちゃうから」
西峰はズボンを持って男子トイレに駆け込んだ。西峰にもハズイという気持ちがあるようだ。
「すごいよイスカ! 郷土史研だけじゃなくて、西峰も決着つけちゃうんだ!」
「あ、これはたまたま。もう一個が本命だわさ」
「あ……それって……?」
「そう、イスカを探さなきゃ。親友のイスカをさ」
あたしは、先月から行方不明になっているもう一人のイスカを思い浮かべた。
我が友、邪気眼電波女イスカ……を。
※ 登場人物
雲母坂イスカ 戦国時代の美濃の女忍者 今は高校一年生
田中沙利菜愛利江留 イスカの親友 普段は略称のサリナで通っている
西峰真之介 西峰流忍法宗家の息子