大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・267『マーマレードを預かって西之島を目指す』

2025-01-09 14:22:05 | 小説4
・267

『マーマレードを預かって西之島を目指す』 東鈴 




「ねえ、これを預けられた意味って分かってる?」


 西之島に向かう筋斗雲のコクピット。

 あたしと悟兵の間には大時代な袱紗に包まれたガラス瓶が収まっている。

「お手間だけど、これを西之島のお岩さんに渡して欲しいの」

 官邸のサンルームで預けられたときは――籠められた意味は何だ?――と勘ぐってしまった。

「フフ、東鈴は深読みしすぎ。作り過ぎたからお知り合いにお裾分けしたいだけなのよ(^▽^)」

「あ、はあ……」

「劉宏大統領に、果醤(コージャン)作る趣味あったアルか?」

「いいえ、作ったのはあの二人ですよ」

 サンルームの外、中庭にはこないだのモンゴル事変で見かけた女性中尉、ええと胡盛媛だったっけ。その中尉が、ホッソリした男の人といっしょに花の世話をしているのが見えた。

「おお、フーちゃんアル!」

「あ、声かけちゃダメよ」

「あ、ああ……」

「男の人は事故で記憶を失っていてね、うちで預かっていて、フーちゃんにお世話を頼んでるの。よろしくお願いするわね、孫大人」

 二人はとても穏やかで、なんだか、生物部の先輩と後輩が学校菜園の世話をしてるみたい。男性の目……が見える距離じゃないんだけど、受ける印象は春の日向のように暖かい。アーカイブから情報を拾えば高い確率で正体を知ることができるんだけど、そんなことは承知の上で「声かけちゃダメ⇒ここでは詮索しないで」と言っている。だからやらない。

 そして、中庭の二人には直接に会うことはしないで筋斗雲で北京を離れた。

 離れるにあたって、大統領は「握手しよう」と手を差し出してきた――ああ、やっぱり――そんな感じがした。

 おそらく、素体としてのあたしと大統領は姉妹の関係。たぶんJR西。

 あたしはJシリーズのロボット、いろんな事情や経緯があってカルチェタランの倉庫に収まっていた。姉妹は他にも数体あったはず……でも詮索はしない。検索禁止のプログラムがされているわけじゃない。なんだろ……ロボットに『言い伝え』というのはおかしいんだけど、そんな感じ。

 一昨日、鈴麗の体の一部を移植した時の記憶があいまい。老婆婆の他にもう一人、孫悟でもない人間が居て、移植のいっさいをやったような気がするんだけど、夢のようにボンヤリしている。

「あそこに居たのは、成治天皇五世孫の森ノ宮親王殿下アルな」

「あ、詮索しちゃダメだって!」

「大っぴらには言わないアルよ。ほんとうにダメアルなら、見せてないアルよ。劉宏も迷ってるみたいアル。ちょい出ししながら様子見てるアル」

「ん~~そうかもだけど、ちょっと下品」

「ええ、東鈴、ワシに下品言うあるかぁ!?」

「うん、で、そのアルアル語やめてくれない。緊急事態でもないんだからさ」

「そうか……それでは、普通に喋ろう(-_-)」

「え、なに、そのオスマシダンディーは!?」

「久しぶりの西之島でもあるからな、島には馴染みも多い、ドンパチも収まった。ゆっくりリゾート気分で羽根を伸ばすとするか……ん? どうして目をつぶるんだい?」

「あ、声だけなら、けっこうイケてるかもだから」

「え、そう……って、目を開けたら台無しってことぉ!?」

「うん」

「ああ、傷つくなア、傷つくアルよお!」

「ああ、もう、だからアルアル語わぁ! あ、目開けちゃったじゃない! もう、着くまでそっち向いててよ!」

「ああ、もう東鈴わあ!」

「もう、わあわあウルさい!」

「うるさいくらい辛抱するアル!」

 ガクンガクン

「キャ!」「うわ!」

『操縦が不安定なので、オートに切り替えますよ』

 しびれを切らした筋斗雲がオートに切り替えて、直近のコースで西之島を目指した。

 でも、オートの声は老婆婆ソックリ。

 島に着いたら、人工音声を切り替えようと、これだけは意見が一致した。



 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 栗 尊宅(りつそんたく)        輸送船の船長  大統領府参与
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!111『エキストラジョーカー』

2025-01-09 09:41:56 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
111『エキストラジョーカー』 




「本当なのかい、このAKR47が本当は48だって」


「ええ、たしかよ。おそらくオーディションの段階まではね、48人いた……」

 仁和は、あとの言葉を、たゆとう香の芳しさに滲ませやがった。

「ちょっと、トランプをやってみましょう。簡単に勝負のつくババ抜きよ」

 慣れた手つきで、カードをシャッフルし、手早く仁和はカードを配った。

「トランプは、ダイヤ、ハート、クラブ、スペードの四種類で、それぞれ春夏秋冬を現してるの、で、それぞれ1~13まで。足すと91。で、4をかけると……」

「364……ですね」

 黒羽が暗算して、光会長に札をひかせた。ジョ-カーを引いたみてえで、渋い顔になりやがる。

「ホホ、ミツルくんは分かり易いわね。今のジョーカーでしょ」

「知らん(>o<)!」

「364は一年を表すわ」

「一年は365だろ」

「ジョ-カーを加えると」

「365ですね」

「ジョーカーは二枚あるのよ」

「ああ、エキストラジョーカーだろ」

「あ、なるほど。普通のゲームじゃ使いませんね」

「そう、ジョーカー二枚で閏年。考えた人って、偉いわね」

 光会長は、仁和にジョーカーを掴ませそこなった。

「で、ダイヤは春、ハートは夏、クラブは秋、スペードが冬と四季まで表現して……」

 と、仁和がウンチクをたれているうちにババ抜きは終わった。

「ちょっと変だぞ。ジョーカーとスペードの4が残っちまった」

 光会長が不足を言った。

「そう、最初から、クロ-バーの4が抜いてあるから」

 仁和が、手品のようにクラブの4を出した。

「ずるいよ、これは」

「……これが、仁和さんの謎かけですね」

「そう、最後に気づくの、一枚足りないって」

「ぼくは、途中で気づきました、捨てられた札にも、回ってくる札にもクラブの4が見あたらなかった」

「さすがは黒羽くん。わたしもいっしょ。途中で一人足りないことに気づいた……最初は神楽坂24のプロモの撮影だった。ひとり人間じゃない子が混じっていた……けしてワルサをするような者じゃなかったけど。で、オモクロに念を飛ばしてみたら、そこにも一人。これもワルサはしないわ。そしてAKRを調べたら、すぐに分かった。人の魂は持っているけど、人の体じゃない子がいることが」

「で、それは、いったい誰なんだ?」

「それは言えないわ。とてもデリケートで、切ないことだから」

「じゃ、なぜ分かったんだ。それぐらいは教えてくれよ」

「光クンって、偶数が好きでしょ。芸名だって、奇数から偶数にしたし、フォークやってたころも四人グループだったでしょ」

「そうか、47の奇数、ちょっと変ですよね」

「……そう言えば」

 光会長がアゴを撫でた。

「で、とりあえずクロ-バーの4をめざすの」

「あの、クラブじゃないんですか?」

「クローバーと言っても間違いじゃない。まあ、動き出したから、上手くいくわよ」

 仁和が、クラブの4をクルリと回すと、3に変わった。しかしクラブの三つ葉は有りえねえ四つ葉に変わっていたぜ。


 マユのアバターに入った拓美は、みるみるうちに歌も振りも上手くなってよ、ついてこられねえ奴らの指導をするまでになったぞ。そんで、だれ言うともなく、AKRはリーダーが二人になった。大石クララと出昼マユ。

 むろん、マユの中身は浅野拓美だけどな。

 拓美の毎日は充実していた。でもよ、もどかしさとも違和感とも言えねえ気持ちが膨らんできやがる。なんだかジョーカー二枚のトランプみてえでよ。

 拓美は、本物のマユである仁科香奈に無性に会ってみたくなってきやがった……。




☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院 オモクロでは仁科香奈
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
服部 八重    オーディションの受験生
矢藤 絵萌    オーディションの受験生
上杉       オモクロのプロディューサー
桃畑 加奈子   オモクロの創設メンバー  

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