RE・かの世界この世界
「ありがとうございます、やっと人心地がつきました……」
アメノミヒシャクにかぶりつき、喉を鳴らして飲み続けたタングニョーストは顎の雫を拭うと、ひとまずの礼を言った。
「こちらは、この世界の主神であられるイザナギさまだ。人心地着いたら、ご挨拶しろ」
「これはご無礼をいたしました。自分は北欧の主神であるオーディン陛下の臣にして、ムヘン方面軍司令トール元帥の副官を務めております、タングニョ-ストであります。任務とは言え、無断で、こちらの世界に侵入して申し訳ありません。アメノミヒシャク、ありがとうございました」
「いや、こちらも、やっと国造りの緒に就いたところでしてね、ヒルデさんたちには大変助けていただいているんです。慣れない国生みで妻のイザナミを死なせたのですが、まだまだ国づくりには妻の力が必要なので、黄泉の国まで迎えに行くところなんです。よかったら、タングニョーストもいっしょに来てはくれませんか?」
「むろんです。姫がお決めになられたことであれば、その指揮のもとに行動するのは臣の務めでありますし、軍司令トール元帥の命じるところでもあると心得ます」
「ありがとう。それでは、しばらくの間、よろしくお願いします」
「ハ! 了解いたしました!」
イザナギに正対して、ビシッと敬礼を決めるタングニョースト。ちょっと遅れて答礼するイザナギ……なんとも敬礼の似合わない神さまだけど、これが日本の神さまの大元だと思うと、ちょっと微笑ましくもある。
「ところでタングニョ-スト、タングリスはどうした?」
あ……わたしも気には掛けていたけど、ヒルデははっきりと聞いた。
タングリスは、瀕死の重傷を負ったトール元帥に自分の体を食べさせたのだ。
そういう宿命にあったとはいえ、森の中、大破した戦車の陰でトール元帥に自分の体を与えていたタングリスの姿、そしてガツガツと音を立てながら貪っていた元帥の背中は日本人のわたしには、ちょっとトラウマになる光景だった。
「タングリスは、この背嚢の中であります」
え!?
これには我々も驚いた。
タングリスはトール元帥に食べられて骨と皮だけになっている。その、骨と皮だけになったタングリスが入っているのかと思うと、ちょっとね……。
「タングリスも最後まで姫のお供をすることを希望しておりましたので、トール元帥が同道することを許可してくださいました」
「そ、そうか」
「骨と皮が残っていれば、環境が良ければ数週間で回復するよ。回復したら、よろしくな(^▽^)」
ヒルデが背嚢を叩くと、カサカサと骨がこすれる音がした。
「タングリスも頑張るって言ってるみたい! 今の音は、笑顔になって顎の関節が動いた音だよ!」
気味悪がっていたケイトも、旧友と言っていいタングリスの気分が分かって嬉しいようだ。
カサカサ ポロロン
「おお、肋骨を鳴らして、相棒も嬉しいようであります(^▽^)」
ムヘン組は和やかな気持ちになったが、イザナギは笑顔のまま頬が引きつっている(^_^;)。
タングニョーストを交えて食事を済ますと、我々は西の対岸、四国を目指した……。
☆ ステータス
HP:10000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・1000 マップ:1000 金の針:1000 福袋 所持金:450000ギル(リボ払い残高0ギル)
装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
白魔法: ケアル ケイト(ケアルラ) 空蝉の術
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
ペギー 異世界の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
ナフタリン ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
その他 フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長