大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・86『ウンコを避けただけの足としてはうまくいった』

2023-11-27 10:19:15 | 小説3

くノ一その一今のうち

86『ウンコを避けただけの足としてはうまくいった』そのいち 

 

 

 鬼灯(ほおづき)のような炎が立ったかと思うと二秒遅れて衝撃と爆発音。

 

 ドォーーーーン

 

「北に向かって!」

 サマル王子の耳もとで叫ぶ。

「ウワ! と、ととと……トォ!」

 ズザザザザ!

 衝撃と私の声にジープが揺れ、王子は数秒かかってジープを北に北に向けた。

「いまの爆発は( ゚Д゚)!?」

「…………」

 王子は狼狽えながら、アデリヤは無言で左後方に立ち昇る煙を睨んだ。

「仲間が作戦を変更したんです、直接向かいます」

 どう変更したのかは分からない、直接向かってどうするかも、この瞬間には分かっていない。

 視野の端にウンコをとらえ、とっさに跳ぶように北に向かっただけだ。北からは草原の国の戦闘車両が車列を組んでこちらに向かって来る。

「お二人は、ジープで敵の東側を掠め、D国を突き抜け高原の国に戻ってください」

「ノッチは?」

「草原の国に向かいます」

「草原……敵の本拠地だぞ!?」

「行けば、なにか開けるでしょう。えいちゃん、行くよ!」

『はい!』

 丸めたえいちゃんを手に握ると、ジープを飛び降りた。

「ソノッチぃぃぃ!」

 怒ったようなビックリしたような王女にサムズアップ、全力疾走する。

「えいちゃん、敵の車列の上を飛んだら、これを撒いて」

『これは?』

「風魔流癇癪玉、大した打撃は与えられないけど、派手に破裂して煙が出る」

『了解です!』

「いくよ」

『はい!』

 バシュ

 走りながらえいちゃんを手放すと、みるみる数十メートルの高さに舞い上がるえいちゃん。

 ピンと張った糸を少しだけ右に振ると、グンと手ごたえがあって、えいちゃんは砂煙を上げて驀進してくる車列の上に出る。

 シュパン シュパン シュパン シュパン シュパン シュパパパーン

 連続して車列の上で音がして、車列は濛々とした煙に覆われる。

 ダダダダダ ダダダダダ ダダダダダ ダダダダダ ダダダダダ ダダダダダ

 ドローンの襲撃と勘違いした敵が空に向かって、てんでに機銃を撃ちまくる。

 タタタタタ タタタタタ タタタタタタ

 反対側から乾いた音が響く、アデリヤ王女が機転を利かせて車載機銃を撃っているんだ。

 ダダダダダ ダダダダダ

 敵は、アデリヤの方にも撃ち始める。

 こちらに注意を向けさせなきゃ!

 加勢はありがたいけど、二人を危険に晒しておくわけにはいかない。

 シュパン シュパン シュパパパーン

 こちらからも癇癪玉を投げて、煙に巻く。

 キキー! グワッシャーン! ガッシャンガッシャン! ドゲシ! ボコ! グチャ!

 混乱した敵は、砂煙と癇癪玉の煙の中で多重衝突を起こす。

 

 ウンコを避けただけの足としてはうまくいった。

 

 えいちゃんを手繰り戻すと、車列の最後尾で立ち往生しているバイクを奪って北を目指した。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
  • ミッヒ(ミヒャエル)   ドイツのランツクネヒト(傭兵)
  • アデリヤ         高原の国第一王女
  • サマル          B国皇太子 アデリヤの従兄

 


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