鳴かぬなら 信長転生記
150『信長版西遊記・敦煌・4・仏どもに取り囲まれる!』信長
釈迦:「もう少しここに居てくれぬか、三蔵法師」
図体のデカさから、ゴジラのような声かと思ったら、釈迦は意外にきれいなバリトンだ。
釈迦:「ああ、よく言われるよ」
三蔵(信長):「あ、まだ口にしておりませんが」
釈迦:「寝そべってはいるけど、一応は釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)だからね、思ってくれただけで分かるんだ」
三蔵(信長):「それは、有難くも尊いことであります」
しおらしく合掌しておく。
釈迦:「それに……きみの本性が織田信長だっていうことも知ってるよ」
ヒソヒソと、俺にだけ聞こえるように言いやがる。
信長:「知っているのか……」
釈迦:「三千世界に結縁(けちえん)しているからね、ま、インターネットで繋がってるようなものなんだ」
信長:「信長と知って、その上で呼び止めたと言うのか?」
釈迦:「ああ、でも、今は三蔵法師だ」
信長:「目的を言え、なぜ、俺に残って欲しい?」
釈迦:「きみも、ここで仏になりたまえよ」
信長:「俺が仏にか?」
釈迦:「ああ、この莫高窟には空き家の石窟がいくつもある。そうだ、帝釈天さ~ん」
帝釈天:「はい、なんでしょうかお釈迦様」
像に乗って一本独鈷をかまえた仏が出てきた。
釈迦:「きみのところに、いたでしょ、建築の管理してる……」
帝釈天:「ああ、毘首羯磨(びしゅかつま)ですね。毘首羯磨~、お釈迦さんがお呼びだよ」
毘首羯磨:「はいはい、なんでしょうか?」
四本の手に大工道具を持って、ねじり鉢巻きした棟梁みたいなのが汗を拭きながらやってきた。
釈迦:「あ、ごめん作業中だったんだね」
毘首羯磨:「あはは、莫高窟は700も石窟がありますからねえ。いつもメンテナンスしてます。いえ、仕事というか生き甲斐ですので、お気になさらないでください」
釈迦:「いつもありがとう。で、すぐに、立派なのを一つ整備してくれませんか。こちらの三蔵法師に入居してもらうんだ」
毘首羯磨:「おお!」
帝釈天:「こちらが、あの三蔵法師ですか!?」
釈迦:「そうだよ、はるか天竺から経を持ち帰った帰りに立ち寄ってくれたんだ。そして、その本性は、あの織田信長であったりするんだよ!」
おお!
居並ぶ仏や羅漢どもが感嘆の声を上げる。
帝釈天:「おお、それは結構なことです! 結構毛だらけ猫灰だらけ! お尻のまわりはクソだらけ!」
なんだか、この帝釈天、柴又駅前のブロンズ像みたいだ。
釈迦:「それで、三蔵くんに入居してもらったら、一大キャンペーンを張るんだよ『三蔵法師入居記念セール』とかさ」
帝釈天:「敦煌の商店街とタイアップして、フェスティバルにしましょう!」
釈迦:「それはいい考えだ、担当は恵比寿クンと大黒クン」
帝釈天:「毘沙門天も呼んでやりましょう!」
お呼びでしょうかぁ(^▽^)!?
笑顔を振りまきながら七福神どもまで出てきおったぞ(^_^;)
毘首羯磨:「話が大きくなってきましたねえ(^▽^)/」
帝釈天:「毘首羯磨だけじゃ足りないかも、おーい、イベントやらパビリオンに経験のある人、集まってぇ!」
ハーーイ!
ムグ、まだまだ集まって来おるぞ。
釈迦:「いやはや、ここは天下の莫高窟だからねぇ」
帝釈天:「世界遺産だからねぇ」
俺は、こういうのは嫌いだ。なんだか、延暦寺の坊主どもみたいに俗すぎるぞ。
釈迦:「信長、いや三蔵くん」
信長:「なんだ!?」
釈迦:「この莫高窟はね、シルクロードからやってきた泰西や西域、天竺の文化が溶け合って仏教を荘厳する場所なんだよ。絶えず更新してアップグレードしておかなきゃなのさ。お経や教えも大事だけど、みんなが願うのは、やっぱり現世利益。ここで祈れば願いが叶う、そう憧れてもらうことが大事さ」
信長:「断る!」
帝釈天:「それは無いわあ、あんたらの活躍ぶりは、もう莫高窟どころか、三国志の国々にまで伝わってる。玉門関とか羅刹女とか、もうアニメ化の話まであるって噂だよ」
信長:「そんなことは知らん!」
帝釈天:「知らん?……いいのかなあ……そこまで言い切っちゃったらぁ……キミぃ、莫高窟の仏をみんな敵に回すことになるぞぉ……」
ザワザワ
異様な気配に振り向くと、いつの間にか、148窟は地下帝国のように広がってしまい、数多の菩薩や仏神や羅漢や羅刹どもに取り巻かれている。
ゾワ
怖気に、もう一度振り返ると、真ん前に96窟の大仏が仁王立ちして見下ろしている!
こいつは、もう仏の姿をした大魔神だ!
南無三、ぬかったか!?
☆彡 主な登場人物
- 織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
- 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
- 織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
- 平手 美姫 信長のクラス担任
- 武田 信玄 同級生
- 上杉 謙信 同級生
- 古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
- 宮本 武蔵 孤高の剣聖
- 二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
- 雑賀 孫一 クラスメート
- 松平 元康 クラスメート 後の徳川家康
- リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
- 今川 義元 学院生徒会長
- 坂本 乙女 学園生徒会長
- 曹茶姫 魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
- 諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
- 大橋紅茶妃 呉の孫策妃 コウちゃん
- 孫権 呉王孫策の弟 大橋の義弟
- 天照大神 御山の御祭神 弟に素戔嗚 部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主