小説学校時代 16
昇降口と称するには条件が居る。
下足室と言い慣わしてきた大阪人としては思うのです。
昇降口と称するなら、昇ったり降りたりということがあるはずで、下足スペースが階段に直結していなければ理屈に合いません。
めったにないでしょうが、平屋建てだけの校舎なら昇降ということばそのものが使えません。
初めて昇降口ということ名に接した時は、その音から焼香口を連想しました。
ほら、お葬式の時、一般参列者が三人ほどまとめてお焼香をするところ。
あるいは、将校口。軍隊の営舎の入り口で、下士官や兵とは別に設えられたエライサン専用の出入り口。
そろそろ『昇降口』が普及している地方の方々から叱られそうなので、切り口を変えます。
ラノベなどの設定で、昇降口で彼や彼女の出会いがあったりしますよね。ロッカー式下駄箱の角を曲がると、たいていあわただしい朝の時間。ドーンとぶつかったところから恋が始まるとか。下駄箱を開けたら手紙が入っていて、差出人の名前は書かれていないけれど、あきらかに女の子の筆跡。そこからドラマが始まります。
放課後の屋上で待ってますとか、前からずっと好きでしたとか書かれていたり。時には、それがイタズラであったりするのですが。スクールラノベが展開していくシュチエーションとしては、屋上と並んで欠くべからざるロケーションです。
下駄箱に手紙を入れるのは女の子ですね。それもたいてい男の下駄箱に入れます。女子高の設定だと女の子が先輩女子の下駄箱に入れるのもありですね。
ラノベのたぐいはいろいろ読みましたが。男子が女子の下駄箱に入れるというのは読んだことがありません。
昇降口と言うのは、ことスクールラブにおいては、女子がアクティブになれる空間なんかもしれません。
下足室……では、モッサリしすぎでしょうか。トイレを便所と表現したのと同じくらいの違和感があるかもしれません。
全国的に見ても、昇降口が主流で、下足室と称するのは大阪を中心とする西日本の一部なので、過去の作品を見直して昇降口と書き換えております。
下足室・昇降口の現実に次回は触れたいと思います。