大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

REオフステージ(惣堀高校演劇部)116・足がしびれた

2024-08-10 07:05:35 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
116・足がしびれた 





 ……三十分たっても大お祖母さまは現れない。

 ……だだっ広い広間なので冷える。

 トイレに行きたいんだけど、行ったら負けのような気がする。

 せめて座布団を敷きたいんだけど、大お祖母さまに会ってもいないのに座布団を使うのは無作法だ。

 むろん、こんな田舎の作法に従う気はないんだけども、大お祖母さまと勝負するまではと思う。

 声を上げれば、どこか近くで控えているメイドさん……たぶん瀬津さん(子供のころから馴染んだメイド長)が取り計らってくれる。

 だけど、そうするには瀬津さんと話さなければならないし障子や襖を開けたり閉めたり、廊下を歩いたりしなければならない。廊下などで人に会えば会釈もしなければならないだろうし。

 ここでの作法は小さいころに躾けられた子ども用の作法しか分からない。畳の縁を踏んではいけないとか、目上の前で座布団を使ってはいけないとか。だいいち、屋敷の様子は、子どもの頃に出入りしたところしか分からない。それすらおぼろで、築三百年を超える屋敷はほとんどラビリンスだ。

 大お祖母さまに会って決着を付けるまではボロは出せない。

 それに……もう、感覚が無くなるくらい足がしびれて、まともに立つこともできないだろう。

 たった三十分、大お祖母さまに会う前に悲惨なわたしだ(-_-;)。

 大お祖母さまが現れるのは、上段の向かって左側。

 おつきを従えて静々と現れるはず。

 じっと目の端でとらえているので、いまにも襖が開くような錯覚におちいる。


 失礼します


 右後ろから声がしてビックリ( ゚Д゚)。

 障子が開いたんだけど、痺れきって振り返ることもできない。

「御屋形様は急なご用事でお出ましにはなられません。まず、お部屋にご案内いたします」

 瀬津さんの声、作法通りに障子を広く開き、廊下で待ってくれている。

 ここでトチるわけにはいかない。

「承知しました……」

 かっこを付けて立とうとする。


 あわわわわ(''◇'')!


 ラノベの萌えキャラみたいな声が出た。

 バッターン!

「あ、美晴お嬢様!」

 瀬津さんが駆け寄って介抱してくれる。

「ご、ごめんなさい、ちょ、ちょっと痺れてしまって……」

「わたしの肩におつかまり下さい」

「ずびばぜ~ん」

「さ、どうぞ」

 え……?

 優しく支えてくれた、その顔は瀬津さんではなかった……。



☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  
  • 沢村留美        千歳の姉
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生
  • シンディ―       サンフランシスコの高校生
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)
 


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