ここは世田谷豪徳寺 (三訂版)
第138話《おとついの蟻さん?》さくら 
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コップに半分の水をどう表現するか?
もう半分しかない派と、まだ半分有る派に分かれる。
わたしは「まだ半分有る」派のお気楽人間。
だから、デフォルトのわたしは夏休みが半分過ぎても、小遣いが半分になっても「まだ半分有る」と、ポジティブに生きている。
でも、今度の中間テストでは逆だった「もう半分終わった!」と思って、マクサと恵里奈とついカラオケでハジケテしまった。まあ、女子高生の自称『ナントカ派』なんてあてにならないんだろうけど。
でも、今度の中間テストでは逆だった「もう半分終わった!」と思って、マクサと恵里奈とついカラオケでハジケテしまった。まあ、女子高生の自称『ナントカ派』なんてあてにならないんだろうけど。
一応は、マクサの家でお勉強という名目だったけど、10分もたつとガールズトークになってしまった。
昨日の日本史のテストで居眠りして『蟻さんの夢』の話をしたのがよくなかった。マクサも恵里奈もケラケラ笑って勉強にならない。
「ちょっと休憩にカラオケでもいこっか!」
お気楽が伝染した恵里奈が言いだした。言いだしべえは恵里奈だけど、三人とも同じように気が弛んでいたことは確かだ。けっきょくマクサんち近くのカラオケで5時まで遊んでしまった。夢の中の蟻さんが言ってたシンパシーなんだろうけど、気持ちの発信者はわたしだ。それくらいの自覚はある。
三人それぞれ家に帰ってから、今日のテスト勉強はしてるので、ノープロブレムっちゃ、それまでなんだ。だけど、めっちゃきつかったし、朝は久々にお母さんに起こされた。
昨日の日本史のテストで居眠りして『蟻さんの夢』の話をしたのがよくなかった。マクサも恵里奈もケラケラ笑って勉強にならない。
「ちょっと休憩にカラオケでもいこっか!」
お気楽が伝染した恵里奈が言いだした。言いだしべえは恵里奈だけど、三人とも同じように気が弛んでいたことは確かだ。けっきょくマクサんち近くのカラオケで5時まで遊んでしまった。夢の中の蟻さんが言ってたシンパシーなんだろうけど、気持ちの発信者はわたしだ。それくらいの自覚はある。
三人それぞれ家に帰ってから、今日のテスト勉強はしてるので、ノープロブレムっちゃ、それまでなんだ。だけど、めっちゃきつかったし、朝は久々にお母さんに起こされた。
「また、髪の毛乾かさずに寝たでしょ」
怒られた。
お母さんはフェルンじゃないから櫛なんかかけてくれないし、久々にヘアピンをXの形につけて学校に行く。電車の窓に映った顔はショボショボでエルフの魔法使いそっくり。でも、魔法なんて使えないし奇跡も起こらなくてみっともないだけ。
ダスゲマイネ
久々に呪いの言葉まで浮かんで気持ちは完全にブルーだ。
高校二年にもなろうかと言うのに、わたしは一年先の自分も見えていない。で、マクサや恵里奈のようにクラブとかにどっぷり浸かって高校生活をエンジョイしきっているわけでもない。その時その時の面白いことに引きずられ騒いでいるだけだ。
お姉ちゃんは大学に行きながら出版社でバイト。近頃ではバイト以上の能力を発揮して記事のネタを拾っている。こないだの兵隊さんの髑髏ものがたりが大ヒット。むろん編集責任は本業の編集者になっているけど、中身はお姉ちゃんが集めてきたものだ。
お姉ちゃんは、確実に自分の道を探り当てつつある。
そうニイは、海上自衛隊の幹部で、全身生き甲斐のカタマリ。たまに帰ってくると、妹としてはとても眩しい。そうニイには、相変わらず無邪気でわがままな妹一般で通している。兄貴は「相変わらずのガキンチョ」だと思ってるだろう。
『ゴンドラの唄』が少しブレイクしかけた。SNSのアクセスも沢山あって、スカウトなんかも少し来た。
でも、あれはひい祖母ちゃんが歌っているのといっしょ。けしてわたしの力なんかじゃない。それはわたしとひい祖母ちゃんだけの秘密なんだけど、お姉ちゃんは知ってか知らでか、わたしが、流れのままにそっちにいく道を閉ざしてくれている。
本当は、今日の午後はラジオ出演が決まっていたんだけど、お姉ちゃんがNGにしてくれた。
高校二年にもなろうかと言うのに、わたしは一年先の自分も見えていない。で、マクサや恵里奈のようにクラブとかにどっぷり浸かって高校生活をエンジョイしきっているわけでもない。その時その時の面白いことに引きずられ騒いでいるだけだ。
お姉ちゃんは大学に行きながら出版社でバイト。近頃ではバイト以上の能力を発揮して記事のネタを拾っている。こないだの兵隊さんの髑髏ものがたりが大ヒット。むろん編集責任は本業の編集者になっているけど、中身はお姉ちゃんが集めてきたものだ。
お姉ちゃんは、確実に自分の道を探り当てつつある。
そうニイは、海上自衛隊の幹部で、全身生き甲斐のカタマリ。たまに帰ってくると、妹としてはとても眩しい。そうニイには、相変わらず無邪気でわがままな妹一般で通している。兄貴は「相変わらずのガキンチョ」だと思ってるだろう。
『ゴンドラの唄』が少しブレイクしかけた。SNSのアクセスも沢山あって、スカウトなんかも少し来た。
でも、あれはひい祖母ちゃんが歌っているのといっしょ。けしてわたしの力なんかじゃない。それはわたしとひい祖母ちゃんだけの秘密なんだけど、お姉ちゃんは知ってか知らでか、わたしが、流れのままにそっちにいく道を閉ざしてくれている。
本当は、今日の午後はラジオ出演が決まっていたんだけど、お姉ちゃんがNGにしてくれた。
テストは赤点じゃないだろうけど散々だった。親友二人もさすがに直帰。
帰りの電車に乗ろうとパスを出すと、カバンに着けた招き猫の金具が指に当って血が出てくるし。
家の近所まで帰りながら、わたしは近所の公園のブランコに揺られている。子供のころから乗り付けたブランコ。わたしは、いつまでこうしているんだろう……。
足許を蟻さんが歩いている。じっと見つめていると、ふいに蟻さんが顔挙げてわたしを見たような気がした。
おとついの蟻さん? まさかね(^_^;)。
家の近所まで帰りながら、わたしは近所の公園のブランコに揺られている。子供のころから乗り付けたブランコ。わたしは、いつまでこうしているんだろう……。
足許を蟻さんが歩いている。じっと見つめていると、ふいに蟻さんが顔挙げてわたしを見たような気がした。
おとついの蟻さん? まさかね(^_^;)。
☆彡 主な登場人物
- 佐倉 さくら 帝都女学院高校1年生
- 佐倉 さつき さくらの姉
- 佐倉 惣次郎 さくらの父
- 佐倉 由紀子 さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
- 佐倉 惣一 さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
- 佐久間 まくさ さくらのクラスメート
- 山口 えりな さくらのクラスメート バレー部のセッター
- 米井 由美 さくらのクラスメート 委員長
- 白石 優奈 帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
- 原 鈴奈 帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
- 坂東 はるか さくらの先輩女優
- 氷室 聡子 さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
- 秋元 さつきのバイト仲間
- 四ノ宮 忠八 道路工事のガードマン
- 四ノ宮 篤子 忠八の妹
- 明菜 惣一の女友達
- 香取 北町警察の巡査
- クロウド Claude Leotard 陸自隊員
- 孫大人(孫文章) 忠八の祖父の友人 孫家とは日清戦争の頃からの付き合い
- 孫文桜 孫大人の孫娘、日ごろはサクラと呼ばれる
- 周恩華 謎の留学生