大阪ガールズコレクション:6
考えすぎるんやで、万梨阿は。
言われ続けて、この世界に入ったのは24歳の春。
日本橋某所にあるメイドカフェ『カセイド-ル』の13人目のメイド。
ホーリーネーム(源氏名)は本名をカタカナ読みしただけのマリア。
このバイトを勧めた恵子はとっくに足を洗って某ゲーム会社に勤めている。
「今月から、メイド服を一新します!」
オーナーの林さんがそれを示すと、メイドの子たちから「オーーーー!」とどよめきが起こる。
それまでのペラペラのコスプレメイド服ではなくて、裏地までしっかりついた本物のゴスロリメイド服。
「レースは取り外しができるんで、クリーニングするときは外してね。それから、今日から入ってもらう万梨阿さん。一昨年までいたルシファさんのお友だち、よろしくね」
簡単な自己紹介をやった後、さっそくお仕事。
「分からないことがあったら、なんでも聞いてね(^▽^)/」
「万梨阿さん可愛いから、すぐに看板になれるわよ🎵」
「制服モデルチェンジしたのは、万梨阿さんが入ったからだよ(^^♪」
「そ、そんなことないわよ(^_^;)」
「ううん、あるある!」
「わたしも、万梨阿さんにあやかりたいなあ(n*´ω`*n)」
みんな嬉しいことを言ってくれるけど、なんだかいたたまれない。
だって、24歳なんだよ。
それも、ただの24歳じゃない。
この三月までは都島区の小学校で先生をしていた。先生と言っても講師だけどね。
二次の採用試験に落っこちて、心機一転別のバイトして夏の採用試験に挑もうというわけなんだ。けども、実年齢ともどもみなさんには内緒。
「うわあ、マリアさん、17歳では通用しませんよー!」
制服に着替えて髪をまとめたところで先輩メイドのシャルロットさんに言われてドキリとする。
「え、あ、マズかったかな(#0#)」
「うん、14歳くらいにしか見えないよぉ」
「え、あ……」
らしく見せようとしたツインテールを崩してザックリまとめてバレッタで留めるというメイドとしては、やや反則にしてみる。
「あ、いい! なんか健気な働き者って感じ!」
「バレッタ萌ぇ~」
そんなこんなで、24歳のメイドの物語が始まった。
つづく