やくもあやかし物語 2
「ミヤスドコロぉ?」「 なんだ、その観光地の休憩場所みたいな名前はぁ?」
「ふん、哀れなな異世界王子よ。読み仮名だけ拾っても妾(わらわ)の値打ちは分かるまいぞ」
「なにを……ぼくは世界中の言語を理解する力があるんだぞ」「六条御息所……か、フフ、休憩所どころか京都の公衆トイレみたいな字面ね」「トバリヤクモは容赦ないね」「あなたは力でおしていきなさい」「ああ、リアルメイソンと同じ力だからね」「その意気よトバルメイソン」
トバルヤクモとトバルメイソンが交互に反論してくる。
「フン、では、その公衆トイレに勝ってみよ!」
「「望むところ!」」
「あぶない、御息所ぉ!」
ブン! ブブン! ブン!
姉のトバリと同じような音をさせて御息所に攻撃を仕掛ける二人の分身トバル。
フワリ フワフワ
ブブン! ブン!
フワ
ブブン!
フワリ
トバルヤクモとトバルメイソンに分身してるんで敵わないかと心配になったけど、けっこう身軽に躱していく御息所。
「なかなかやるじゃないか、おチビちゃん」
悪気無く禁句を使って応援するメイソン。いつもだったら「おチビちゃん言うなあ!」と文句を言うんだけど、黙々と異世界王子の攻撃をかわしていく御息所!
ブン! ブブン! ブン!
フワ フワ ヒラリ フワワ
ブブン! ブン!
フワリ フワフワ ヒラリ
「頑張ってるけど、なんだか躱してばかりだなあ……だいじょうぶか?」
「だいじょうぶ、なにか考えがあってのことだと思う」
「フワフワ逃げてばかりいないでぇ」「かかってこいぃ!」
ブブン! ブン!
ハラリ フワフワ ヒラリ
『よし、もうこのくらいで良いであろう』
「「なんだと?」」
呆気にとられるトバルを尻目に両手を広げてトバリの周囲をグルリと回る御息所。
その入っている手袋からはハラハラと星くずみたいな花粉みたいなのが振りまかれ、二人のトバリは急速に眠くなってきて一つになって元の一人トバリの姿になったよ。
『トドメじゃ!』
ウワァアアア!
トバルは目をつぶったまま恐慌状態になって、叫び声をあげると逃げるように急上昇した。
ズゴン! ギャフン!
衝撃音と悲鳴があがる。
急上昇したトバルは、そのまま結界の頂点にいた姉のトバリに激突して消えてしまった。
ピ~~ピピ~
ヒバリの声だけがして、あたりは元の穏やかな草原に戻ったよ。
でも、メイソンも他の仲間も姿が見えない。
時間切れになったんだ。
メイソンも言ってたし、ちょっと寂しいけど……まあ、仕方がない。
「ねえ、どうやってやっつけたの?」
御息所に聞いてみる。
『あれはね、あいつがこれまで見た悪夢をぜんぶ思い出させてやったのよ』
もう通常モードになって、それだけ言うとポケットの中に戻ってしまう御息所。
ZZZZ……ZZZZ……ZZZZZZ……
「疲れちゃったんだね……しかたない、一人で行くかぁ」
メイソンたちが持ってきてくれた食料の中からチキンラーメンを出して、ボリボリ齧りながら先に進んだ。
ゲフ
一袋まるまるかじって食べたら、けっこうお腹がいっぱいになった。
キーストーンを取り返す旅はまだまだ続いていきそうだ……。
☆彡主な登場人物
- やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
- ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
- ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
- メグ・キャリバーン 教頭先生
- カーナボン卿 校長先生
- 酒井 詩 コトハ 聴講生
- 同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ ヒトビッチ・アルカード ヒューゴ・プライス ベラ・グリフィス アイネ・シュタインベルグ アンナ・ハーマスティン
- 先生たち マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
- あやかしたち デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女 マーフォーク(半魚人) トバル(魔王子) トバリ(魔王女)