やくもあやかし物語 2
「魔王女トバリの弟、魔王子トバルだ。見知りおけ」
姉のトバリそっくりのニクソイ笑顔でマウントをとりに来る。
「あなたたち双子なの?」
「ああ、そうだよ。でも、戦い方は違うよ。トバリは結界を張って地霊どもを従えて戦うけど、ぼくは、こうやって戦うんだ……」
顔の前で腕をXに組んだかと思うと、トバルの体はボンヤリと滲んで6:4くらいに分裂。そして、ふたたびハッキリしてきたと思ったら、6の方がメイソンに4の方がわたしソックリになった!
「ええ!?」
シャキーーン
「こいつは、相手ソックリに擬態して戦うんだ……トオオオ!」
剣を構えると、最後まで言い切らずに打ちかかるメイソン! トバルメイソンも同時に打ちかかって来る。なんだか、左右を逆に映す鏡みたいだ。
トオーー!
安心してはいられない、わたしにソックリなトバルヤクモの方は先手を取って討ちかかってきたよ(''◇'')!
右手に思い槍、左手にミチビキ鉛筆を持って、トバルヤクモの攻撃を受け止める!
ガシ!
互いに同じ武器、同じ力なんだから打ち消し合う……と思ったら、ジリジリと押し込まれる。
ええ、なんでぇ( >Д<)?
「相手は高い位置からダッシュしてきて勢いがついてるからだ! 少し踏みとどまればチャンスも見えてくる!」
自分も苦しい戦いをしているのに、ちゃんとアドバイスをしてくれるメイソン。ノブリスオブリージュ! 貴族の息子だけのことはある!
カシーン! ブンブン! ジャキーン! ガシガシ!
メイソンは、攻撃をいなして相手の隙を誘っては攻撃を加えるけど、やっぱり同じスキルなのでラチが明かない。助けて欲しいけど、どうも無理っぽい。
グヌヌヌ("皿″)……グギギギ(>皿<)……歯を食いしばって押し込まれないようにがんばるけど、こっちは互いに運動神経が悪いので、ひたすら押し合うだけだよ。
ズズ……ズズズ……ズズ……
「まずい……」
変な音がするのでなんだろうと思っていたら、メイソンの方が気づいた。
「トバリが結界をすぼめてきている、結界がすぼまると、こいつの力が増していくみたいだ!」
「ええ!? あ、ほんとだぁ……(''◇'')」
押し込まれる力が微妙に強くなってきている」
「ほかの子たちはどうしてるんだろッ……」
ほんとは「なにをしてんのよ!」なんだけど、優しく言ってみる。
「力を使い果たしたんだろ、もう気配がしない……」
「そんなぁ」
「僕も、そろそろ危ないかもしれない……」
「あ、ちょ……メイソン!」
ああ、絶体絶命……と思ったら、ポケットから御息所がフワフワ浮き出て来た。
「「なんだ、おまえは?」」
トバルヤクモとトバルメイソンが同時に声を上げる。
そうか、御息所はコピーできていないんだ。でも、御息所の力ってたかが知れてるっぽい。
『妾は六条の御息所じゃ、畏れ多くも先の東宮殿下の妻である。見知りおけ』
おお、バリバリのお局言葉! これは勝算があるのかも!
☆彡主な登場人物
- やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
- ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
- ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
- メグ・キャリバーン 教頭先生
- カーナボン卿 校長先生
- 酒井 詩 コトハ 聴講生
- 同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ ヒトビッチ・アルカード ヒューゴ・プライス ベラ・グリフィス アイネ・シュタインベルグ アンナ・ハーマスティン
- 先生たち マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
- あやかしたち デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女 マーフォーク(半魚人) トバル(魔王子) トバリ(魔王女)