誤訳怪訳日本の神話・19
八岐大蛇(やまたのおろち)を語りたいのですが、高天原で忘れていたことがあるので、ちょっと遡ります。
スサノオがアマテラスへの意地悪でやったことを天津罪(あまつつみ)であると紹介しました。
天津とは天界(たかまがはら)で侵された罪という意味です。神さまをお祀りすることや農耕に関する罪だと申しました。
この天津罪と並ぶのが国津罪です。言葉的には地上に国が出来て、その国での罪を記したものとなっています。
しかし、内容的には天津罪よりも深い罪や穢れの意識が反映されているのではないかと思います。
:国津罪とは
生膚断(いきはだだち)
生きた人間を傷つけることで、今でいう傷害罪です。いつの世も人は傷つけてはいけないぞということでしょう。
:死膚断(しにはだだち)
死体損壊 あるいは傷つけたことで死に至らしめること(殺人罪・傷害致死)とも言われています。
:白人(しろひと)胡久美(こくみ)
共に皮膚に顕著な症状が現れる病気で、白人はハンセン病、胡久美はコブやイボができる病気らしいのですが、詳しいことは分かりません。
:己が母犯せる罪、己が子犯せる罪
そのものズバリ近親相姦であります。当たり前だろうと思いますが、兄妹間は禁止されておりません。昔は伯父(叔父)姪や腹違いの兄妹は違法ではありませんでした。天智天皇が大化の改新のクーデターのあと帝位につくのに二十三年がかかっています。その理由の一つが同腹の妹を妃にしたからで、この妹妃が亡くなるまでは憚りがあったからだとも言われています。
今の日本ではいとこ同士の結婚はノープロブレムですが、新婚旅行に韓国や中国や台湾にいくと「え!?」という顔をされます。中華圏と申しますか、儒教が浸透している国では一般にいとこは兄弟同然なのです。親同士が再婚の義理の兄妹は、たしか結婚できるはずです。『俺の妹がこんなに可愛いわけがない!』PSPのゲームで京介・桐乃の兄妹が結婚して子供まで生まれるというのがあります。この設定は、本当は血のつながりが無かったということにして成立しています。アハハと笑ってよかったよかったと納得しますが、外国では義理の関係でもNGになるところが多いと思います。
中華ついでにもう一つ。アグネス・チャンが日本に来て公園でたくさんの鳩を見た時「ああ、おいしそうだ♡」と感じたそうです。同じ鳩を見て日本人の多くは「平和のしるし」と思います。フランス人は鳩は「空飛ぶ鼠だ!」と嫌います。
日本では、脱いだ靴は爪先を外に向けて並べますが、韓国では逆に内に向けます。よその家に行って外向きに揃えると「おまえは、そんなに早く帰りたいのか?」と思われるそうです。
マレーシアは多民族国家で、中国出身者が力を持っていますが、それでもこんなところに気を遣うそうです。
中国では十二支の猪は豚のことです。亥年の旧正月になると盛んにブタ料理を作り、豚の張りぼてや飾り物を家や街のあちこちに飾ります。しかし、イスラム系の人たちに気を使って、公には豚の飾り物はしなくなっているそうです。笑ってはいけないのですが、西遊記から猪八戒を抜いたり扱いを小さくしたりもするそうです。三十年近い前には、屋台で売っているラーメンに味の素が使われているということで、屋台の店が襲撃にあうということが頻発しました。味の素の原料に豚が使われているという噂が流れ、現地の味の素関連の日本人が逮捕されるようなことがあったそうです。事の真偽はともかく、異文化が共存するということは、そういうことなのですね。
ことほど左様に、国や民族や地方によって感性や受け止め方が違います。グローバリズムやリベラリズムは結構なのですが、人類のこういう融通が利かないところは無理に合わせられませんし合わせない方がいいと思います。人類というのは程よく国という垣根を持っていた方がいいと思うのですが、いかがでしょう?
:畜(けもの)犯せる罪
えと、獣姦というやつですなあ。気持ち悪いことはすんな! ということのほかに病気のことなどがあったのではと思います。
:昆虫(はうむし)の災
農業における虫害のことです。虫が湧くことも、何かよからぬことの報いであると思われていたんですなあ。
:高津神の災
落雷だといわれています。平安時代に菅原道真が雷さんになって落雷で宿敵たちを殺したことを恐れて天神さんにされました。
:高津鳥の災
鳥による農業災害 不勉強なので具体的にはよく分かりません。
:畜仆(たお)し
呪いや呪いで人の家畜を殺すこと。昔は呪っただけで罪になりました。
:蠱物(まじもの)する罪
動物の死体を使って呪いをかけること。
なんだか、テスト前のまとめっぽくなりました(^_^;) 次は、もっと工夫いたします。