大橋むつおのブログ

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鳴かぬなら 信長転生記 64『茶姫の手の平に載る』

2022-03-19 11:19:45 | ノベル2

ら 信長転生記

64『茶姫の手の平に載る』信長  

 

 

 転生は扶桑の専売特許ではないのよ。

 

 あやうく茶を噴き出すところだった。

 秘書官の備忘録の用件がすんで、椅子に腰かけるやいなや、カマされた。

「職丹衣(しょく にい)、君は織田信長の生まれ変わり。で、そちらは信長の妹、市の生まれ変わりの……こちらでは、職市(しょく しい)よね?」

「なぜ、知っている?」

 今朝出会った時から、かなりのところまで知られていると思っていたが、まさか転生したことまで知っていたとは思わなかった。

「スパイを送り込んでいるのは、そちらばかりではない……とは思わないかしら?」

「であるか」

「でも、職丹衣とは、うまくつけたわね」

「そうか」

「ええ、シイが君を呼ぶときは『にいちゃん』で済むわよね。シイ……市は、良くも悪くも兄妹愛が抜けないみたい」

「そんなことはない!」

「市、おまえは黙ってろ」

「なにさ!」

「アハハハハ」

「「なにがおかしい!?」」

「いや、失礼。報告にあった市という子は、針の先のように鋭く気難しいというものだったのでね。いや、見た目通りの女の子なので、ちょっと嬉しくなったわ」

 たしかに、三国志に来てから、少々幼さを感じさせる市だが、そこまで茶姫は見抜いている……だけではなく、茶姫は『幼い』とは言わずに『見た目通り』と、市の神経を傷つけない言葉を選んでいる。ちょっと油断がならない。

「おまえも、誰かの転生なのか?」

「うん……というか、いいえでもある」

「なんだ、それは?」

「転生の自覚はあるけで、あなたたちのように、誰の転生なのかは分からない」

「ほお……」

「あら、にいちゃんは、なにか感心するところがあるようね」

「にいちゃんと呼ぶのは止せ」

「じゃあ、にいさん?」

「ただの『にい』でよい」

「天下の織田信長を?」

「ここでは、ただの職丹衣だ」

「だからにいさん」

「う」

「アハハハハ(≧∇≦*)」

「笑うなシイ!」

「困ったわね、おにいさん」

「コラ(;`O´)o」

「じゃあ、少佐」

「少佐?」

「ええ、決めたわ。近衛少佐職丹衣と同じく近衛少尉の職市」

「え、わたし三階級も下の少尉なの!?」

「厳密には特任少佐と少尉。まあ、参謀と話相手の中間みたいな。実質無任所だから動きやすいと思うわ」

「御伽衆のようなものね? うん、わたしは、それでいいよ」

「しかし、なぜ、そこまで好意的なのだ?」

「それを含めてスパイしてくれるといいわ。条件は一つだけ」

「なんだ」

 瞬間、茶姫の瞳が真剣な光を宿すので身構えてしまう。

「なにを調べてくれてもいいけど、破壊活動だけはしないで。ものを壊したり、人を殺したり……」

「もう、殺してしまったぞ」

「夕べの事は、人命救助のための正当防衛でしょ」

「そうだ」

 そうか、とりあえずは、俺たちを近衛として取り込むことで曹素への牽制にはなる。

 そう理解して、取りあえずは茶姫の手の平に載ることにしたぞ。

 

☆ 主な登場人物

 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生
 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
 織田 市        信長の妹
 平手 美姫       信長のクラス担任
 武田 信玄       同級生
 上杉 謙信       同級生
 古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
 宮本 武蔵       孤高の剣聖
 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
 今川 義元       学院生徒会長 
 坂本 乙女       学園生徒会長 
 曹茶姫         魏の女将軍

 


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