鳴かぬなら 信長転生記
ボン!!
絵にかいたようなエフェクトと煙で数秒間は目も開けられない!
玉手箱から爆発的に湧き出した煙は、砂浜の半分も覆いつくしてしまうのではないかと思われたが、やがて、海の方に移動して大きな船の形になった。
「え……ええ!?」
磯釣り専門漁師の浦島太郎は、船の巨大さ、いかつさ、物々しさに尻餅をついてる。
草薙の剣のアッチャンも、勾玉の思金神(おもいかね)も、さすがに声も出ない。
「フフ、これなら鬼ヶ島にも強行上陸ができるぞ」
「きょ、強行上陸!?」
「左右の舷側に50門づつ、前後にもそれぞれ3門の大筒、鉄砲狭間も100門づつ。船べりは全て黒塗りの鉄板で覆いつくし、鉄砲や大筒を撃たれてもビクともするものではない!」
そう、この大船は、石山本願寺攻めのおり、本願寺の坊主どもに武器や兵糧を送っていた毛利方、その水軍を打ち負かすために作らせた日の本一の戦艦! 安宅船なるぞ!
「ヒエエ……」
「浦島太郎! 貴様にこの安宅船の操縦と武器の操作をさせてやる、末代までの名誉と心得て励め!」
「お、乙ちゃん、いえ乙姫様、どうかご勘弁を( ノД`)」
「なんだとぉ、貴様、この信長……いや、乙姫の願いが聞けぬと申すか!?」
「だ、だって乙姫さま。あの大船は艪口だけでも100はございます。つまり艪を漕ぐだけでも100人、三交代にしても300人は必要です。加えて、帆や舵を操る者が100。合わせて400は必要でございましょう」
「さすがは、日本昔話随一の漁師、よくぞ言い当てた」
「それに、鬼ヶ島に着いたら、上陸して戦う兵の数が300!」
「ああ、それは乗組員が兼ねればいい。上陸しさえすれば、この信……乙姫に歯向かえる鬼などおらん。みな安心して妾の後ろに付いて、勝利の勝鬨をあげるエキストラと心得ればよいぞ」
「し、しかし、しかしですよ、この浦島太郎はたった一人です! この身一つです! やれるわけないじゃないですか!」
『あ、それはもっともかもしれんなあ……』
『ちょっとイジメっぽい』
勾玉と草薙の剣が呟くが、ムシムシ。
「浦島太郎、きさま何百年も竜宮城でグダグダと無駄飯食って惰眠をむさぼっていたではないか。本来なら、一日一人分と計算するところだが、ことは急を要する。一年を一人分とし、残りは戦をしながら考えてやる。さっさと必要人数分になって船に乗り組め!」
「そ、そんなあ( ゚Д゚)!」
シャラララーーーーーン!!
盛大なエフェクトがしたかと思うと、あっという間に浦島太郎は数百人に増殖して安宅船に乗り組んだ。
アッチャン(草薙の剣)も思金神(勾玉)も感心するばかりで何もしなかったが、軍艦マーチで景気づけをしてくれたので、文句は言わないことにした。
さあ! いよいよ、鬼ヶ島の最終決戦だ!
☆彡 主な登場人物
- 織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
- 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
- 織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
- 平手 美姫 信長のクラス担任
- 武田 信玄 同級生
- 上杉 謙信 同級生
- 古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
- 宮本 武蔵 孤高の剣聖
- 二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
- 雑賀 孫一 クラスメート
- 松平 元康 クラスメート 後の徳川家康
- リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
- 今川 義元 学院生徒会長
- 坂本 乙女 学園生徒会長
- 曹茶姫 魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
- 諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
- 大橋紅茶妃 呉の孫策妃 コウちゃん
- 孫権 呉王孫策の弟 大橋の義弟
- 天照大神 御山の御祭神 弟に素戔嗚 部下に思金神(オモイカネノカミ)