ここは世田谷豪徳寺 (三訂版)
第122話《尾てい骨骨折・2》さくら 
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昨日の学校はさんざんだった。
教室の席に座る時は、家での体験があるので、尾てい骨を庇うように座れる。
だけど授業中にノートをとろうとして顔を上げた拍子に姿勢が真っ直ぐになって、もろに尾てい骨に響く。
さすがに家にいるときのように気軽に叫んだり唸ったりはできず、その分表情に出る。
「佐倉、おれの授業、そんなにつまんないか?」
数学の先生は、三度目に目が合ったときに言った。
「いえ、そんなことはありません」
「……だったらいいんだけどな」
で、授業の後半、ムズイ公式の説明になって、またやらかした。論理的な思考が苦手なんで、説明はじっくり聞かなければ全然わからない。で、つい身を乗り出したところで、まともに尾てい骨に響いた。
「……(>▲☆)!!」
声にこそ出なかったけど、痛みはマックスで、我ながら怒った顔のようになったと自覚した。
「あのなあ佐倉、数学なんてつまんねえよ。教えてる自分でもそう思うよ。数学なんて、買い物に行った時にお釣りの計算出来りゃ十分だ。微分なんて微かに分かったでいいし、積分なんて分かった積りでいいんだ。要は数学を通じて、論理的な説明に慣れるようにすることが重要なわけ。分かるか? そうすれば将来結婚しようかなって相手に出会った時に、惚れた晴れたってこと以外に互いの所得や月々の経費、ローンの計算なんかがきちんとできるわけさ。そうすりゃ、つまらん家庭争議なんか起こさずにすむんだよ! いいか、佐倉……」
そのお説教の最中に、悪気はないんだろうけど「だいじょうぶ?」という気持ちで、マクサがシャーペンでお尻をつついてきた。
「ウググ……!!」
で、授業の後半、ムズイ公式の説明になって、またやらかした。論理的な思考が苦手なんで、説明はじっくり聞かなければ全然わからない。で、つい身を乗り出したところで、まともに尾てい骨に響いた。
「……(>▲☆)!!」
声にこそ出なかったけど、痛みはマックスで、我ながら怒った顔のようになったと自覚した。
「あのなあ佐倉、数学なんてつまんねえよ。教えてる自分でもそう思うよ。数学なんて、買い物に行った時にお釣りの計算出来りゃ十分だ。微分なんて微かに分かったでいいし、積分なんて分かった積りでいいんだ。要は数学を通じて、論理的な説明に慣れるようにすることが重要なわけ。分かるか? そうすれば将来結婚しようかなって相手に出会った時に、惚れた晴れたってこと以外に互いの所得や月々の経費、ローンの計算なんかがきちんとできるわけさ。そうすりゃ、つまらん家庭争議なんか起こさずにすむんだよ! いいか、佐倉……」
そのお説教の最中に、悪気はないんだろうけど「だいじょうぶ?」という気持ちで、マクサがシャーペンでお尻をつついてきた。
「ウググ……!!」
「あ、ひょっとして、こんな愚痴こぼすおれのことバカにしてんだろ! いいよ、どうせお前らは、おれのこと……おれのこと……今日は、もうこれでおしまいだヽ(`Д´)ノ!!」
八分も早く数学が終わってしまって、ちょっとクラスは騒ぎになった。「先生、昨日彼女と一悶着あったんだよ」「え、フラれたとか!?」「フラれるってことは、フッテくれる彼女がいたってことでしょ」「でも、さっきのさくらは、やっぱ変だよ……」
マクサや恵里奈が聞いてきたのなら「うるさい、あんたたちに関係ない!」と開き直れるんだけど、由美と吉永さんというクラス一番と二番の清純真面目コンビニ聞かれたから、つい喋ってしまった。
「じつは……」
「「え、尾てい骨骨折!?」」
クラスのみんなに知られてしまった。
二人に悪気はない「骨折」というところにアクセント感じて共感の叫びをあげただけ。恵里奈はジョバレだけあって、尾てい骨骨折のなんたるかを知っているんだろう。こいつも悪気なく爆笑。とんだ人気者になってしまった。
八分も早く数学が終わってしまって、ちょっとクラスは騒ぎになった。「先生、昨日彼女と一悶着あったんだよ」「え、フラれたとか!?」「フラれるってことは、フッテくれる彼女がいたってことでしょ」「でも、さっきのさくらは、やっぱ変だよ……」
マクサや恵里奈が聞いてきたのなら「うるさい、あんたたちに関係ない!」と開き直れるんだけど、由美と吉永さんというクラス一番と二番の清純真面目コンビニ聞かれたから、つい喋ってしまった。
「じつは……」
「「え、尾てい骨骨折!?」」
クラスのみんなに知られてしまった。
二人に悪気はない「骨折」というところにアクセント感じて共感の叫びをあげただけ。恵里奈はジョバレだけあって、尾てい骨骨折のなんたるかを知っているんだろう。こいつも悪気なく爆笑。とんだ人気者になってしまった。
で、二時間目以降は、例の睡魔と尾てい骨の痛みが交互にやってきて地獄の一日だった。
ゆうべ夢を見た。
夢の中にあたしに似た女学生が出てきた。制服はスカートが長めだったけど、同じ帝都だ。
―― あなただれ……? ――
ゆうべ夢を見た。
夢の中にあたしに似た女学生が出てきた。制服はスカートが長めだったけど、同じ帝都だ。
―― あなただれ……? ――
―― 佐倉桜子よ ――
―― え……? ――
―― あなたのひいばあちゃん ――
―― え、ひいばあちゃんが、どうして、そんな若い格好で……? ――
―― 実はね…… ――
なんだか長い物語を聞かされた。
なんだか長い物語を聞かされた。
そして、最後にとんでもないことを頼まれた。
☆彡 主な登場人物
- 佐倉 さくら 帝都女学院高校1年生
- 佐倉 さつき さくらの姉
- 佐倉 惣次郎 さくらの父
- 佐倉 由紀子 さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
- 佐倉 惣一 さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
- 佐久間 まくさ さくらのクラスメート
- 山口 えりな さくらのクラスメート バレー部のセッター
- 米井 由美 さくらのクラスメート 委員長
- 白石 優奈 帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
- 原 鈴奈 帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
- 坂東 はるか さくらの先輩女優
- 氷室 聡子 さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
- 秋元 さつきのバイト仲間
- 四ノ宮 忠八 道路工事のガードマン
- 四ノ宮 篤子 忠八の妹
- 明菜 惣一の女友達
- 香取 北町警察の巡査
- クロウド Claude Leotard 陸自隊員
- 孫大人(孫文章) 忠八の祖父の友人 孫家とは日清戦争の頃からの付き合い
- 孫文桜 孫大人の孫娘、日ごろはサクラと呼ばれる
- 周恩華 謎の留学生