せやさかい・427
宇宙戦艦三笠には四人(四匹?)の猫が出てくる。
もともとは横須賀のドブ板通りに住んでた街ねこ。
それがネコミミメイドになって三笠に乗り組んで、乗組員の世話をしてくれるという設定。
他のメインキャラはプロの声優さん(うちは、ちょっと中途半端)やねんけど、ネコメイド四人は現役の中学生。
養成所を出てないということでは、うちと一緒やねんけど、四人とも児童劇団所属。うちよりも、よっぽどプロ。
「あ、わたくしは養成所も児童劇団にも所属しておりませんの(^_^;)」
手をワイパーみたいにして否定するのはミケメ役の高瀬川薫子さん。
「え、せやったん?」
「はい、宗武監督がうちのお店の御常連さんでして、お声をかけていただきましたの」
「え、お店?」
「はい、飲食店を営んでおりまして、監督はお祖父様の代からご贔屓にしてくださっています」
この子は、めちゃ言葉遣いがていねい。
「ええ、せやけど、高瀬川さんめっちゃうまいやんか」
「アハハ、小さいころからアニメ観て、そんな気になっていただけですぅ」
「え、そんな気てぇ?」
「え、あ、その……(#^_^#)」
「カオルンはね、画面見ていっしょに台詞喋るんですよぉ(^▽^)」
「すごく上手いんです!」
シロメの浅田さんとクロメの前田さんが加わった。
「あ、いやだあ、二人ともぉ(#^o^#)」
「作品の中に入ったみたいに、すごいんですよ」
「ああ、もうやめてぇ、そんなお話じゃないんですからぁ(#'∀'#)」
「そうそう、カオルン、どうぞぉ」
「あ、はい。実は、わたしたちテレビのお仕事頂戴しまして。榊原留美さんとご一緒させていただくことになったんです」
「え、留美ちゃん、テレビに出るのん!?」
「はい、お正月の単発ドラマなんです。大正時代のお話で、榊原さんは華族のお嬢様で、わたしたちはお屋敷のメイドなんです」
「え、そうなんや!」
「お噂で、酒井さんは……その、ご一緒にお暮らしとお伺いしましたので、榊原さんの人となりをお伺いできればと思いまして、お願いする次第なのです」
「そ、そうなんや」
「あ、今でなくて結構なんです。お仕事が明けた時に、わたくしのお店ででも」
「はい、さくら先輩ぃ、どうでしょうか?」
高瀬川さんの後ろでお願いポーズする浅田さんも、めっちゃ可愛い。
「ちょっと、あんたたち」
後ろからチャメの竹内さんが声をかけて、二人は、ちょっとアセアセになって「「すみませんでした(;'∀')!」」と、休憩室の向こうに行ってしまう。
竹内さんが、深々と頭を下げて、他の三人も、もう一回頭を下げる。
「おもしろいねぇ」
真鈴先輩がミネラルウォーターの蓋をあけながら横に座ってきた。
「吐夢(かなむ)は甘えん坊の役が多いのに、リアルじゃ委員長タイプなんだ」
「そうですねえ、タイプはちゃうけど、みんなしっかりしてますねえ」
「さくら、留美ちゃんのことは聞いてなかったの?」
「あ、うん。家では、そういう話ぜんぜんしませんからね」
「さくらは、喋るタイプだろ?」
「え、あ、いや、そうなんですけどねえ」
応えながら思た。
夏休みに入って、わたしも留美ちゃんも外に出てることが多い。
うちは、むろん『宇宙戦艦三笠』の収録やねんけど、留美ちゃんは……言わへん子ぉやさかい、気ぃつかへんかったけど、なんや世界が広がってる様子。
よし、人形焼きと東京バナナ買うて帰って、久々にゆっくり話しょうか。
帰りの新幹線でスマホを開くと、詩ちゃんからのお便り。
――お母さんが、またこっちに狂って。もういいのにね。留美ちゃんのこと女王陛下もご存知だったよ、二人ともがんばってるんだね。あ、そうそう、ソフィーが中尉に昇進したよ。仕事も増えるみたいだけど、生き生きしてます。わたしもがんばるね、ボチボチだけど(笑)――
『狂って』は変換ミスやねんやろけど、あえて、そのままにしてる感じ。
閉じようと思たら、頼子さんからメール。
――今度ね、お祖母ちゃんの一存で『王立民俗学学校』ってのができたんだけどね。その開校式に出ろって言われて出て見たら、学校の総裁ってのに任命された! ぜんぜん聞いてないし、いきなり総裁ってひどくない!? この夏は、留美ちゃんもさくらも、こっちには来れないんだよね。六日は、お祖母ちゃんの発案で広島の原爆忌に合わせて黙とうした。女王の黙とうだから国が黙とうしたのと同じ。うちは小さな国だけど小さいナリにやること出来ることはあるんだと感心した。写真は中尉に昇進したソフィーとツーショット。じゃ、またね――
髪をアップにして正装のドレスに勲章付けまくりの頼子さんは、めっちゃ貫録! 王女どころか女王さまでも通りそう。ビシッと儀式用の軍服に身を固めたソフィーは攻▢機動隊の少佐みたいにかっこええ!
ため息ついて窓の外見ると富士さん。
雪の積もってない富士山はスッピン。
スッピンでも富士山はかっこええ!
☆・・主な登場人物・・☆
- 酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校二年生
- 酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
- 酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
- 酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
- 酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
- 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
- 酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
- 榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
- 夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
- ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
- 月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
- 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
- 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
- 女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
- 江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行)
- 声優の人たち 花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎
- さくらの周辺の人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官)