大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・275『徹夜看病のあとの磯辺にて』

2025-02-04 10:14:52 | 小説4
・275

『徹夜看病のあとの磯辺にて』 東鈴 




 神社に行こうかと思ったけど、顔も洗ってないので磯に下りる。


 悟兵はタンコブができただけで、わたしとメグさんとでチェックしても脳ミソにも頸椎にも異常は無かった。

 だけど、お酒も入っていたし、大事をとって夕べはずっとつきっきりで看病。

 手足にしびれがあるって言うし、頭がボーっとするって言うからね。

 ショックで微妙にタガが外れたんだろうね、時どきうわごと……ほとんど意味不だけど、声の調子が若い。わたしにはむろん老婆婆にも見せない若いころの断片だと思う。

 夜中に手足が冷たくなってきて、ちょっとビビった。

 スキャンしても打撲とタンコブ以外に異常はないし。おそらくは見ている夢のせい。アルコールも残ってるしね。

『さ、寒い……』

 ガタガタ震えるし、手足はますます冷たいし、わたしは思い切った。

「し、仕方ない……(#'∀'#)」

 悟兵の布団に入って朝まで抱きしめてやる。素でやっていると緊張してしまうので、意識の九割を眠らせてね。


 朝には平熱に戻って、服を着たところで連絡所の下士官が見舞いに来たので、すこし外の空気を吸いに出て来たところ。


「おう、なにボーっとしてやがんだ」


 声に振り向くと、ハナが巫女姿で箒を持っている。

「おお、キチンとしてると立派な巫女さんだ」

「あたりめえだ、オンとオフは、キッチリ切り替えてるからな。オッサンはもう大丈夫なのか?」

「うん、頭打ったから熱が出るかと思ったけど、逆に体温下がって来て、少しだけビビったけど、いまはもう大丈夫」

「そっか、それなら心配しねえでモンゴルに行けるな」

「うん」

「ハナも行きてえけど、こないだ行ったしなあ……」

 ガラッパチに見えて、島のことを思っているんだ。北大街も悪くはないけど、みんな二枚も三枚も皮を被っているようなところがある。ここみたいに、人もロボットも一枚看板、せいぜい並の裏表だけで生きていけるのは、ちょっと羨ましいかもしれない。

『あ、ここに居たんだ』

 声に振り返ると、殿下が笑顔で岩鼻に立っている。軽やかに駆け下りてくると立ち上がろうとしたわたしを制して「お供が見つかりましたよ」と後ろを指さす。

 振り返ると岩鼻にごっついオッサン。

 ヒョイヒョイと二歩で駆け下りてくると、腕組みをして殿下の横に立った。

「こないだまで市会議員をやっていた、ナバホ村村長のマヌエリトです。島一番の戦士なので、モンゴル騎兵の人たちにも押し出しが効くと思います。むろん腕もたちますしね」

「まかせておけ。マヌエリト、一度はモンゴル騎兵と戦ってみたかった」

「あ、いや、戦いに行くわけじゃぁ……(^_^;)」

「冗談、気にするな」

「おもしれえ旅になりそうだな!」

 アハハハハ ニャハハハ ニャーニャー

 
 その場のみんなが笑って、ウミネコも笑って、モンゴル調査旅行のメンバーが確定した。




☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 


 

 

 

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