ここは世田谷豪徳寺 (三訂版)
第137話《さくらの中間テスト》さくら 
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朝からやってもちゅうかん(昼間)テスト……なんて親父ギャグが出てくる。
フゥワ~~( ´⚰︎` )
あくびを噛み殺す……要は退屈なんだ。
今は二限目の日本史。日本史って暗記科目。だから暗記したことをみんな書いたら、あとは退屈なだけ。
今は二限目の日本史。日本史って暗記科目。だから暗記したことをみんな書いたら、あとは退屈なだけ。
終わりのベルがなるまで、あと15分……ちょっと長い。
あ……気が付いたら答案用紙の端っこに招き猫の落書きをしている。
〇と△を組み合わせた保育所の頃からの定番。
日本史の先生は、こういうの嫌がるから消しておく。
消したあと、息を吹きかけて消しゴムのカスを飛ばす。
おやぁ……?
気づくと机の上に蟻が歩いている……消しゴムのカスに出会って、触角で何ものなのか確かめている。
「バカね、それは消しゴムのカス。食べ物じゃないわよ」
教えてやると、まるで、それが聞こえたみたいに蟻が触角を停めてこちらを向いた。
「そんなこと分かってるわよ」
蟻が口をきいた。
「え?」とは思ったけど、さほどには驚かない。あたしはひい祖母ちゃんの霊とだって話ができる。
気づくと机の上に蟻が歩いている……消しゴムのカスに出会って、触角で何ものなのか確かめている。
「バカね、それは消しゴムのカス。食べ物じゃないわよ」
教えてやると、まるで、それが聞こえたみたいに蟻が触角を停めてこちらを向いた。
「そんなこと分かってるわよ」
蟻が口をきいた。
「え?」とは思ったけど、さほどには驚かない。あたしはひい祖母ちゃんの霊とだって話ができる。
「んじゃ、どうして、そんなカスに興味があるわけ?」
「考えてるのよ、なんの役に立つか」
「蟻さんが考える?」
「バカにしちゃいけない、蟻だって考えるわ。人間とは考え方が違うけど」
「どう違うの?」
蟻さんは、直射日光が苦手なようで、机の日陰になっている方に移動した。
「蟻はね、情報を共有して、何万匹って蟻が一斉に考えてるの。それぞれ何万分の一かの脳みそ使ってね」
蟻さんは、直射日光が苦手なようで、机の日陰になっている方に移動した。
「蟻はね、情報を共有して、何万匹って蟻が一斉に考えてるの。それぞれ何万分の一かの脳みそ使ってね」
「なんだか、あなたって話し方が女っぽいけど、女の子?」
「そんなことも知らないの? 蟻はみんな女の子よ」
「へえ、女の子ばっかでたいへんなんだ。そうだ、昔から不思議だったんだけど『アリとキリギリス』の結論て二つあるじゃん。どっちが正しいの?」
「ああ、最後に蟻がキリギリスを助けるか見捨てるかね?」
「そうそう。保育所のころは、助けるって聞いたんだけど、お父さんの図書館で調べたら、蟻はキリギリスを見捨てるの。どっち?」
「両方とも不正解よ」
「両方とも!?」
あやうく大きな声になるところだった。
「蟻とキリギリスはコミニケーションなんかとらないの。死んだキリギリスは解体して食糧にするだけ」
あやうく大きな声になるところだった。
「蟻とキリギリスはコミニケーションなんかとらないの。死んだキリギリスは解体して食糧にするだけ」
「へえ、そうなんだ……」
「ちなみに、元のイソップ童話は見捨てることになってるけど、あれは寓話だからね。それと人間だって蟻が持ってる能力が少し残ってるのよ」
「ほんと?」
「サッカーとか野球とかバレーボールとかの団体競技、なんか全員で一つみたいになることあるじゃない。あれって、蟻同士のシンパシーといっしょね」
「ああ……なるほどね」
「さくら、あなた答え間違ってるわよ」
「え、どこ?」
「硫黄島の読みは『いおうとう』太平洋戦争は『大東亜戦争』が正しいの」
「え、だって、こう習ったよ」
「教えてる方が間違えてるの。注釈付けて書き直す。ほらほら!」
「でも、だって……」
意志が弱いので書き直すけど、口ごたえしてしまう。
「その読み方と、呼び方は戦後アメリカが日本に強制した呼び方。日本人なら正しい表現をしましょう」
意志が弱いので書き直すけど、口ごたえしてしまう。
「その読み方と、呼び方は戦後アメリカが日本に強制した呼び方。日本人なら正しい表現をしましょう」
「蟻さんが、どうして、そんな昔のことまで知ってるの?」
「言ったじゃない、蟻は情報を共有してるって。共有って横だけじゃなくて縦にもね……」
「縦って……むかしむかしのこととか?」
「そう、さくらだってひい祖母ちゃんとお話しできるじゃん。それの、もっとすごいの。さあ、もう時間ないわよ急いで急いで!」
あたしは急いで書き直した。最後の(。)を打ったところで鐘が鳴った。
鐘が鳴ったら目が覚めた。答案は……ちゃんと書き直してある。消しゴムのカスもきれいに無くなっていた。
カスにも使い道はあるらしい。
あたしは急いで書き直した。最後の(。)を打ったところで鐘が鳴った。
鐘が鳴ったら目が覚めた。答案は……ちゃんと書き直してある。消しゴムのカスもきれいに無くなっていた。
カスにも使い道はあるらしい。
☆彡 主な登場人物
- 佐倉 さくら 帝都女学院高校1年生
- 佐倉 さつき さくらの姉
- 佐倉 惣次郎 さくらの父
- 佐倉 由紀子 さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
- 佐倉 惣一 さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
- 佐久間 まくさ さくらのクラスメート
- 山口 えりな さくらのクラスメート バレー部のセッター
- 米井 由美 さくらのクラスメート 委員長
- 白石 優奈 帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
- 原 鈴奈 帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
- 坂東 はるか さくらの先輩女優
- 氷室 聡子 さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
- 秋元 さつきのバイト仲間
- 四ノ宮 忠八 道路工事のガードマン
- 四ノ宮 篤子 忠八の妹
- 明菜 惣一の女友達
- 香取 北町警察の巡査
- クロウド Claude Leotard 陸自隊員
- 孫大人(孫文章) 忠八の祖父の友人 孫家とは日清戦争の頃からの付き合い
- 孫文桜 孫大人の孫娘、日ごろはサクラと呼ばれる
- 周恩華 謎の留学生