宇宙戦艦三笠
東北弁とダースベーダー風の衣装は、とっても似つかわしくない。
「まえだおぢが目指すてらピレウス北極どするど、この三笠は、やっと福島あだりだ。というごどだげでもねんだが、言葉はやっぱ訛ってまる、ガースー」
その間にもダースは、特有の籠ったような声で、荒い息遣いだ。
「訛ってても、貫録あるねぇ。下手に取り巻き連れてかっこつけてないとこなんか、シブいよ!」
こういうことに関しては、トシは独特の感性で反応する。
「それはだな……ゲホンゲホン、ゼーゼー……」
「大丈夫、ダースさん?」
「なんでもね、歳なんだ。聞ぎぐるすくてすまね、ガースー」
みかさんの質問に、ダースは年寄りくさく応えた。
「で、御用はなんなのかしら(`Д´)?」
お誕生会に水を差されたウレシコワは、いささかカドがある。
「折り入って頼みがあるんだ。そえで、みんな集まってらどごろがいど思ってな、ガースー」
「断りもなく現れて、お願いって言われてもねえ」
天音も、そっぽを向いた。
「まあ、聞くだけ聞いてみようや」
俺は間に入った。年寄りイジメ的なのは嫌だからな。
「すまね艦長。この暗黒星団は宇宙の大田舎なんだ。ガースー、なんの因果か、星雲の外がらは中の様子は分がね。なんだが、とでづもね暗黒帝国があるみだいに思わぃでら。要は宇宙開闢以来、電波も光も外がらは通さね。ガースー、そえで、宇宙のみんなはおっかねものど思って、寄り付ぎもすね。グリンヘルドやシュトルハーヘンでさえも見向ぎもすね。おめんどが名付げだロンリネスなんて、星どすては一等地なんだぞ、ガースー」
「ひょっとして、暗黒星団の宣伝してこいとか?」
「いや、図々すいお願いなんだが、ガースー、ピレウスまで、一人同乗させではもらえねびょんか?」
「あ、帝国の皇帝とかならお断りだぜ! せっかく和気藹々とやってるとこに、えらそーなオッサンなんてごめんだからな」
「皇帝どがはいねじゃ。このダース、暗黒星雲の代表だ、ガースー」
「でも、そういうナリしてると、皇帝がいるように思うわ」
「そう思っでもらえるみでぐ、こったナリすてらんだ。なんか、もっと偉ぇ存在がいるみでぐ思うびょん、ガースー」
「……ああ」「なるほどね」
クルーたちは、変に納得した。
「そえで、お願いどいうのは……ガースー……」
「わーがらしゃべるじゃ!」
もう一人現れた。純白のローブが良く似合う、見るからに王女だった。
「あ、姫……」
「秘密ばらすてはまいねだ!(ダメです!)」
「最後の秘密は……ガースー」
「しゃべったも同然でねの」
「あのう……ひょっとしてお孫さんですか?」
樟葉が、遠慮なく核心をついた。
「ほら、分がってまったでねの!」
「すまね。実は、このレイマ姫ピレウスさ連れでいっで欲すいのだ。ガースー、この三笠の遠征は一大叙事詩なるびょん。きっど宇宙のレガスーになるびょん。それに、うぢの王女さまが一緒であったどいうごどになるど、暗黒星団の名前も挙がる。ガースー、姑息な手段ど笑わぃるがもすれねがな。それえも、オラだぢは、王女さ、レイマ姫にかげでみるすかねのだ、ガースー」
「あの、レイア姫じゃないんですか?」
「うんにゃ、レイマ姫だ。著作権の問題だす」
「もう、違います。暗黒星雲の言葉で『希望』って意味があるんだ。ずっちゃ、卑下のすすぎだ」
といういきさつで三笠のクルーが増えた。主だったポストは埋まっているので、レイマは主計長ということになった。
だが、この見かけは宇宙一可愛く、喋らせると完全に東北弁のレイマ姫は、とんでもない力の持ち主だった……。
☆ 主な登場人物
修一(東郷修一) 横須賀国際高校二年 艦長
樟葉(秋野樟葉) 横須賀国際高校二年 航海長
天音(山本天音) 横須賀国際高校二年 砲術長
トシ(秋山昭利) 横須賀国際高校一年 機関長
ミカさん(神さま) 戦艦三笠の船霊
メイドさんたち シロメ クロメ チャメ ミケメ
テキサスジェーン 戦艦テキサスの船霊
クレア ボイジャーが擬人化したもの
ウレシコワ 遼寧=ワリヤーグの船霊
こうちゃん ろんりねすの星霊
レイマ姫 暗黒星団の王女 主計長