宇宙戦艦三笠
「ええ! また偽物!?」
樟葉が警戒心丸出しの表情で後ずさる。気づくと天音もトシも、クレアでさえ疑惑の目で俺を見て、ネコのままのネコメイドたちは「フーーーー!」って唸りながら毛を逆立てる。
「どうやら、おまえらもホログラムの偽物に会ったみたいだな……」
そう言いながら壁を叩く。
ドンという音がして、みんな安堵のため息をつく。ちょっと、手が痛かったけどな(^△^;)。
「こっちも体が触れ合うまでは、分からなかった」
「触れるって、どんな風に?」
「何気なく肩に手を掛けたら、素通しになった」
「修一が、あんまりグダグダ聞くんで、おかしいと思って……」
「オレといっしょだ。樟葉がくどかったから、おかしいと思った」
「いっしょだ。あたしは頭をはり倒したら、空振りになった。修一は?」
「キスしようとしたら、顔が重なってしまった」
「ええー、キスなんかしたの!?」
「だから怪しいと思ったからさ。ちょっと大きな声じゃ言えないって誘ったら、顔を寄せてきた。で、ホログラムの偽物だって分かった」
「本物だったら、どうするつもりだったのよ!?」
樟葉がむくれた。
他のやつらは呆れながらも笑ってる。
「しかし、なんだな……俺たちって、あんまりスキンシップしてなかったんだ」
「されてたまるか!」
「それは文化の差よ。ウレシコワさんやジェーンさんはよくボディータッチやハグしてくれてた。日本人はしないから」
クレアがフォローした。
「しかし、なにもキスしなくてもさ!」
「とっさだよ、とっさ!」
「それより、本物の艦長かどうか確認しておきましょう!」
「そうだな、ホログラムの偽物に会ったって言うけど、油断させるための罠かもしれん」
トシの提案に天音が同意して、四人と四匹で迫って来やがった。
「ちょ、おまえら目つきが怖い」
「いくぞ!」
「ちょ、やめ、いて! 痛い! ちょ、アハハ ギャハハ……」
で、捻られたり、つねられたり、くすぐられたり。俺は、まるで罰ゲームのような目に遭った。
「艦内に動きがあります……三笠にかなりの人数が……」
笑い死ぬかと思った時、クレアが警戒の顔つきになった。
「何をしに行ってるんでしょう」
「あたしたちの情報を総合して、まだ誰か残っている人間がいると思っているらしいです……」
クレアも自分でバージョンアップしているようで、この秘匿性の高い敵艦の中でも、ある程度は読めるようだ。
「他に、人間て……」
みんなの頭の中で、同時に一人の顔が浮かんだ……ミカさんだ。
「敵に動き。三笠から退去しようとしています!」
「……ミカさんは船霊、神さまだから、予見できない能力を恐れたんでしょう」
クレアの分析は正しく、ミカさんの能力は、そのクレアの分析を超えていた。なんと三笠に乗り移った敵兵たちが、三笠の艦内に閉じ込められてしまったのだ。
そして、ミカさんの力は、それだけでは無かった……。
☆ 主な登場人物
修一(東郷修一) 横須賀国際高校二年 艦長
樟葉(秋野樟葉) 横須賀国際高校二年 航海長
天音(山本天音) 横須賀国際高校二年 砲術長
トシ(秋山昭利) 横須賀国際高校一年 機関長
レイマ姫 暗黒星団の王女 主計長
ミカさん(神さま) 戦艦三笠の船霊
メイドさんたち シロメ クロメ チャメ ミケメ
テキサスジェーン 戦艦テキサスの船霊
クレア ボイジャーが擬人化したもの
ウレシコワ 遼寧=ワリヤーグの船霊
こうちゃん ろんりねすの星霊