【表参道の風景・オリエンタルバザーとDior】
新しく先月から来てくれている会社の女性、
REIKOさんとお昼のお弁当を食べながら、習い事の話になった。
彼女はこのところ、なにも習っていないという。
**********************
私は英会話を始めて足掛け6年。
今年でなんと7年目になる。
毎週1回。しかもたった30分間のプライベートレッスンである。
始めたきっかけは、表参道教室の目の前に
スターバックスとYahooがコラボしたコーヒー&ネットの
お店ができたことだった。
外国人の見学者や体験入学者が突然増え始め、
日本語がまったく話せない人たちが入って来たため
もういつまでも誰かに頼っているわけにはいかない!と
決心したのだった。
NHKの英語番組はかなりいいよ!という友人からの勧めで
キリのいい4月から書店で毎月テキストを買い、
辞書を片手に中学2年レベルから取り組んでみたところ、
リスニングの力がグンっとアップした。
翌年、1年のクールが終了した3月、
このまま聞いてばかりいても、相手がいないと
いつまでもしゃべることはできないわ、と思っていた矢先、
近所にある英会話教室から、春の入学無料キャンペーンの
折込チラシが目に止まった。
当時小学生だった息子にもどうかしら?と思い
2人で見学に行った際、いいタイミングだわ、と
一緒に私も入学してしまったのだ。
7年目という年月に見合うほどしゃべれるか、と言うと
決して満足のいく上達ぶりとはいえない。
以前は少しの移動時間に本を読んだり、家ではCDを聞いたり
MDウォークマンで聞きながら散歩したりとレッスン以外でも
努力をしていたが、最近ではせいぜい教室の直前に慌てて
宿題をするぐらいでちょっとサボり気味。
それでもまぁなんとか、英語がわかる国の海外旅行では
言葉がわからず路頭に迷うようなことはないし、
日本でも、ガイドブック片手に困り果てている外国人に
声をかけて道案内ぐらいはひとまずできるようになった。
先は長いが、じっくりと取り組んでいきたい課題のひとつと
思っている。なにより、文化の違う色々な国の人と直接
お話できるのが、本当に楽しい。
相手のジョークで笑えるようになった自分を
時折自分でよしよし、と思ったりする。
***************************
REIKOさんには、そんな経緯や息子との旅行での
エピソードを話していると、言いづらそうに口を開いた。
「…あの…KAORUさんはたしか、息子さんが2人
いらっしゃるんですよね?さっきからお話聞いていると、
長男の方とばかり出かけて、次男の方はいつも
どうしていらっしゃるんですか?お留守番なんですか?」
と尋ねてきた。
私は少しトーンを下げながら、
「だって次男は人間じゃないの・・・。」と言うと、
「えっっ???」と言葉に詰まった。
「犬なの・・・。」
と言ったら、さらに驚きながらも
彼女は急にホッとした表情をみせた。
「よく長男の方は、ただいま~!と会社にお見えになるのに、
次男はちっとも姿を見せないから仲が悪いのかしら?と
思っていたんです。そして、今の話を聞いて次男がかわいそう!
と思って聞かずにはいられなくなっちゃったんです。
は~、聞いてよかった!」と胸をなでおろしている。
あとから思い返してみると、彼女がそう思うのはムリもない。
お昼時、お弁当が少し残ると「お宅の次男に持って行く?」と
NAOKOも言うし、私も時折「うちの次男がね、」
なんて会話をする。
「コロ」というちょっぴり垢抜けない名前は息子が命名した。
6年前の夏、結花里さんファミリーとその友人たちと
長野の佐久にあるマミロッジで過ごしていた時、
夜更けの森の奥から忽然と姿を現した。
当時、子犬で顔には傷があり首輪はしていなかった。
息子の証言によると、バッタや虫を捕まえて食べていたという。
帰る日までの数日間、片時もロッジを離れず、
昼間は一緒に滞在していた子どもたちと森の中を走り回っていた。
「ねぇ、連れて帰ろうよ!うちで飼いたいよぉ!」と
しつこく迫る息子に、「でも、こんな自然の中で過ごしているのに、
突然、都会ではかわいそうよ。もしかした飼い主がいるのかもよ。」と
なだめながら言い聞かせていた。
帰る日まで様子を見てましょうね。と言うと、毎朝早く起きては、
子犬の姿を探していた。呼ぶとすぐに飛んでくる姿に大喜びで、
「ほらね!今日もいてくれたよ!ありがとうね!」と私に言いながら、
子犬を抱きしめ、そして子犬に向かってお礼を言っていた。
とうとう帰る日。運命の日がやってきた。
私たち一行は荷物を車に詰め込み、いよいよ乗り込むだけとなった。
出発間際まで迷っていたが、子犬はドア付近でじっと私たちを
見上げていた。「やっぱり、連れて帰ります!」と周囲に伝えると
「了解!」と順路を変えて我が家まで送ってくれることを
快く引き受けてくれた。
ロッジ付近には熊やイノシシ、鹿などがでるし、あのまま
置き去りにしても、迷ったまま飼い主の元には戻れなかっただろう。
途中、携帯メールから「今日、家族を連れて帰ります。
白い子犬、名前は“コロ”です。」とNAOKOに送ると
首輪とリード、ドックフード一式を用意して待ってくれていた。
あれから、今年の夏で丸7年。
毎日毎日、見せる愛らしい表情に息子と2人で
「白い妖精だよね!」とか、「ホントにカワイイよね!
これって決して親バカじゃないよね?」と言い合って溺愛している。
***************************
たぶん、それは我が家だけではないだろう。
先日も親戚が久々に集まった時、
まず自慢しあったのは“犬の携帯画像”
遠慮することなく、うちのコが一番!と言い張っていた。
そして、その現象は、携帯アドレスからも推測できる。
たとえば、私のアドレスは「korotatsu …@」 で、犬が先、
子どもが後になっている。友人は「cocokana…@」でやはり
ココちゃんというトイプードルが先、娘のKANAちゃんが後だ。
こんな感じで 、ペットと子どもの名前アドレスは非常に多いが、
ダンナの名前をアドレスに入れている人は
ほとんどいないのはちょっぴり淋しい。
もちろん、照れもあるだろう。
***************************
ペットへの愛情ように、見返りなんて期待していない、
その場に居てくれるだけで幸せと思う“手放しの愛”のような
気持ちになるだけで心が満たされる。
たとえばペットに、世話したんだから、
自分の世話もしてほしいと願うだろうか?
私の気持ちをぜんぜん理解してくれない、と
本気で悩むだろうか?
こちらがたくさんの愛情を注げば、
何も出来なくても、何も言わなくても、
彼らは精一杯の愛を無言で送ってくれているのがわかる。
たとえそれが拾ってきた犬でも愛を注ぐ相手がいたら
自分の心が豊かになっていくはずだ。
人間同志も同様に思えたら、本当にステキな関係
が築いていけるのに、と心からそう思う。
新しく先月から来てくれている会社の女性、
REIKOさんとお昼のお弁当を食べながら、習い事の話になった。
彼女はこのところ、なにも習っていないという。
**********************
私は英会話を始めて足掛け6年。
今年でなんと7年目になる。
毎週1回。しかもたった30分間のプライベートレッスンである。
始めたきっかけは、表参道教室の目の前に
スターバックスとYahooがコラボしたコーヒー&ネットの
お店ができたことだった。
外国人の見学者や体験入学者が突然増え始め、
日本語がまったく話せない人たちが入って来たため
もういつまでも誰かに頼っているわけにはいかない!と
決心したのだった。
NHKの英語番組はかなりいいよ!という友人からの勧めで
キリのいい4月から書店で毎月テキストを買い、
辞書を片手に中学2年レベルから取り組んでみたところ、
リスニングの力がグンっとアップした。
翌年、1年のクールが終了した3月、
このまま聞いてばかりいても、相手がいないと
いつまでもしゃべることはできないわ、と思っていた矢先、
近所にある英会話教室から、春の入学無料キャンペーンの
折込チラシが目に止まった。
当時小学生だった息子にもどうかしら?と思い
2人で見学に行った際、いいタイミングだわ、と
一緒に私も入学してしまったのだ。
7年目という年月に見合うほどしゃべれるか、と言うと
決して満足のいく上達ぶりとはいえない。
以前は少しの移動時間に本を読んだり、家ではCDを聞いたり
MDウォークマンで聞きながら散歩したりとレッスン以外でも
努力をしていたが、最近ではせいぜい教室の直前に慌てて
宿題をするぐらいでちょっとサボり気味。
それでもまぁなんとか、英語がわかる国の海外旅行では
言葉がわからず路頭に迷うようなことはないし、
日本でも、ガイドブック片手に困り果てている外国人に
声をかけて道案内ぐらいはひとまずできるようになった。
先は長いが、じっくりと取り組んでいきたい課題のひとつと
思っている。なにより、文化の違う色々な国の人と直接
お話できるのが、本当に楽しい。
相手のジョークで笑えるようになった自分を
時折自分でよしよし、と思ったりする。
***************************
REIKOさんには、そんな経緯や息子との旅行での
エピソードを話していると、言いづらそうに口を開いた。
「…あの…KAORUさんはたしか、息子さんが2人
いらっしゃるんですよね?さっきからお話聞いていると、
長男の方とばかり出かけて、次男の方はいつも
どうしていらっしゃるんですか?お留守番なんですか?」
と尋ねてきた。
私は少しトーンを下げながら、
「だって次男は人間じゃないの・・・。」と言うと、
「えっっ???」と言葉に詰まった。
「犬なの・・・。」
と言ったら、さらに驚きながらも
彼女は急にホッとした表情をみせた。
「よく長男の方は、ただいま~!と会社にお見えになるのに、
次男はちっとも姿を見せないから仲が悪いのかしら?と
思っていたんです。そして、今の話を聞いて次男がかわいそう!
と思って聞かずにはいられなくなっちゃったんです。
は~、聞いてよかった!」と胸をなでおろしている。
あとから思い返してみると、彼女がそう思うのはムリもない。
お昼時、お弁当が少し残ると「お宅の次男に持って行く?」と
NAOKOも言うし、私も時折「うちの次男がね、」
なんて会話をする。
「コロ」というちょっぴり垢抜けない名前は息子が命名した。
6年前の夏、結花里さんファミリーとその友人たちと
長野の佐久にあるマミロッジで過ごしていた時、
夜更けの森の奥から忽然と姿を現した。
当時、子犬で顔には傷があり首輪はしていなかった。
息子の証言によると、バッタや虫を捕まえて食べていたという。
帰る日までの数日間、片時もロッジを離れず、
昼間は一緒に滞在していた子どもたちと森の中を走り回っていた。
「ねぇ、連れて帰ろうよ!うちで飼いたいよぉ!」と
しつこく迫る息子に、「でも、こんな自然の中で過ごしているのに、
突然、都会ではかわいそうよ。もしかした飼い主がいるのかもよ。」と
なだめながら言い聞かせていた。
帰る日まで様子を見てましょうね。と言うと、毎朝早く起きては、
子犬の姿を探していた。呼ぶとすぐに飛んでくる姿に大喜びで、
「ほらね!今日もいてくれたよ!ありがとうね!」と私に言いながら、
子犬を抱きしめ、そして子犬に向かってお礼を言っていた。
とうとう帰る日。運命の日がやってきた。
私たち一行は荷物を車に詰め込み、いよいよ乗り込むだけとなった。
出発間際まで迷っていたが、子犬はドア付近でじっと私たちを
見上げていた。「やっぱり、連れて帰ります!」と周囲に伝えると
「了解!」と順路を変えて我が家まで送ってくれることを
快く引き受けてくれた。
ロッジ付近には熊やイノシシ、鹿などがでるし、あのまま
置き去りにしても、迷ったまま飼い主の元には戻れなかっただろう。
途中、携帯メールから「今日、家族を連れて帰ります。
白い子犬、名前は“コロ”です。」とNAOKOに送ると
首輪とリード、ドックフード一式を用意して待ってくれていた。
あれから、今年の夏で丸7年。
毎日毎日、見せる愛らしい表情に息子と2人で
「白い妖精だよね!」とか、「ホントにカワイイよね!
これって決して親バカじゃないよね?」と言い合って溺愛している。
***************************
たぶん、それは我が家だけではないだろう。
先日も親戚が久々に集まった時、
まず自慢しあったのは“犬の携帯画像”
遠慮することなく、うちのコが一番!と言い張っていた。
そして、その現象は、携帯アドレスからも推測できる。
たとえば、私のアドレスは「korotatsu …@」 で、犬が先、
子どもが後になっている。友人は「cocokana…@」でやはり
ココちゃんというトイプードルが先、娘のKANAちゃんが後だ。
こんな感じで 、ペットと子どもの名前アドレスは非常に多いが、
ダンナの名前をアドレスに入れている人は
ほとんどいないのはちょっぴり淋しい。
もちろん、照れもあるだろう。
***************************
ペットへの愛情ように、見返りなんて期待していない、
その場に居てくれるだけで幸せと思う“手放しの愛”のような
気持ちになるだけで心が満たされる。
たとえばペットに、世話したんだから、
自分の世話もしてほしいと願うだろうか?
私の気持ちをぜんぜん理解してくれない、と
本気で悩むだろうか?
こちらがたくさんの愛情を注げば、
何も出来なくても、何も言わなくても、
彼らは精一杯の愛を無言で送ってくれているのがわかる。
たとえそれが拾ってきた犬でも愛を注ぐ相手がいたら
自分の心が豊かになっていくはずだ。
人間同志も同様に思えたら、本当にステキな関係
が築いていけるのに、と心からそう思う。