●トロムソに来て3年、ほっこりエピソード
今月で、私がトロムソに引っ越してちょうど3年、
ほっこりする出来事がありました。
その週はトロムソに雪がたんと降り、
このバスも10分ほど遅れていた。
発車間もなく、対向バスにバックすると・・・
ザクゥ・・・バスの前角がゆっくり雪にのめり込み、
ドアがぐにゅ・・・
バスの運転手は焦りいろいろ試みるが、
残念ながらドアは故障した模様。
結局、乗客は次のバスに乗り換えることになった。
職場に遅れる連絡はしたし、
トロムソではよくあることだ。
問題は、その後である。
手袋がない!
ほ~と雪の力に見入っていた晴子さんは、
ぼ~と手袋を置いてきたらしい。
●苦手な電話も止むを得ず
今年に入って既に、
お気に入りの帽子、手袋を続けて失くしていた晴子さん、
苦手な電話で問い合わせることにした。
ところが晴子さんには音声を聞き取るのが難しく、
何度も聞き直して番号を選ぶのに、
ついに誰も出ない。
電話に時間がかかり、
歩くつもりだったSpråkkafe(ノルウェー語でお喋り会)には、
バスで行くことにする。
● 運転手さんが、覚えてくれていた!
バスが来ると、
なんと昨日と同じ運転手さんである。
「昨日は大変でしたね」と思っている(言えてはいない)と、
彼女が、晴子さんに話し出した。
「あなた、昨日手袋忘れたでしょう。
忘れ物預かり所に届けてあるから、
時間のある時に取りに行ってね。
24番バスで病院で降りて、
会社までは歩いて行けるから」。
昨日の彼女はパニックっている様に見えたが、
あの手袋が晴子さんの物だと覚えていたのだ。
● 運転手さんの親切は、まだまだ続く
Språkkafeの後、車庫に行く。
晴子さんにしたら、ちょっとした冒険である。
半信半疑の晴子さんは、24番のバスの運転手さんに尋ねた。
「24番でなく、20番だよ」。
やはり。
晴子さんの耳か記憶力か、いずれにせよ当てにならない。
20番の運転手さんにも、晴子さんは念のため聞く。
「合ってるけど、病院から歩かなきゃいけない。
34番なら、終点の病院から車庫に行くから、
乗せてもらえるよ」。
まるで病院からの道も知らない晴子さんを見抜いたような心配りだ。
そして、34番の運転手さんに事情を話す。
「OK! すわってたらいいよ」とニッコリ。
終点の病院を過ぎると、
「いつ失くしたの?」と聞くので、
昨日今日の話をすると大笑い。
「ここから入って二階だよ」。
降ろしてくれたのは、入り口の真ん前であった。
2階でも迷う晴子さんは、
「Hittegods(忘れ物預かり所)に行きたいんですけど」
と今朝覚えたての単語を絞り出す。
この彼がまた、忘れ物箱の前まで案内してくれる。
沢山の忘れ物の中から、
晴子さんの手袋は「待ってました!」とばかり現われた。
トロムソの運転手さんたちに、
手だけでなく心まで暖めてもらい、
晴子さんは帰路に着いた。
●「Bare hyggelig!」とは?
この2週間後、あの時の女性の運転手さんに当たり、
「手袋もらってきましたよ」とお礼を言うと、
「Bare hyggelig!(バーレ ヒッゲリ)」とニッコリ。
「Bare hyggelig!」とは、「どういたしまして」。
もう少し詳しく言うと、
“bare”とは、「ただ、それだけ」、
“hyggelig”とは、「幸せな、心地よい、喜ばしい、嬉しい、親しみのある・・・」。
私が「Tusen takk(ありがとうございました)」と言うと、
どの運転手さんも「Bare hyggelig!」とニッコリしてくれました。
「Bare hyggelig!」
軽やかに言ってもらうほど、
ますます心温まる言葉です。