熱海の錦ヶ浦は入り組んだ断崖に、奇岩と松の木が趣を添える景勝地である。市内の観光名所を巡る「遊湯バス」のバス停もある(ホテル・ニューアカオの構内)。場所は、伊東・下田方面へ向かう幹線道路の最初のトンネルを出てすぐ左、熱海城の裏手になる。
ところが、この錦ヶ浦は熱海の観光案内に掲載されていない。だから観光客は来ない。この景勝地が他の地域ー例えば、私が住む湯河原ーにあったなら、観光の目玉になるだろう。
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その一角に “花の妖精”というカフェがあり(写真)、ここだけは賑わっている。正月2日のランチ時は、午後2時を過ぎても満席で、ウェイティングになっていた。
そのカフェの中から眺めると、右手に伊豆半島、正面に大島と初島が横たわり、左手には真鶴半島と熱海市内が視野に入る。晴天なら、相模灘越しに房総半島まで見える。時折、熱海と初島・大島を結ぶフェリーボートが群青の海原に白い航跡を描く。伊豆半島随一の絶景と評価しても過言ではないだろう。そして、景観を愛でつつ飲むワインは格別だ。
錦ヶ浦で撮影した写真をご覧いただく。下は初島の横から上がる初日の出、
これは、太陽とほとんど同じ場所から上った満月(1月2日)。肉眼ではもっとオレンジ色が濃かったが、拙い撮影技術のためか色が薄くなったのは残念。
では、なぜ錦ヶ浦が観光案内に載っていないのか。
昔、ここは自殺の名所だった。絶壁からの投身自殺が頻繁に起きたのである。だから、縁起が悪いということで、熱海市当局は意図的に観光名所から除外したのではなかろうか。
ことによると、市当局は数十年前に「ここにホテルができれば、自殺者がいなくなり、自殺の名所という汚名を返上できる」と踏んで、景観を損なうことになるデメリットを知りつつ、ホテル建設を許可したのかも知れぬ。しかし、今ではそんな昔の汚点を知っている人は少なくなったから、もう時効だと思うが…。
ともあれ、もし熱海を訪れる機会があれば、ぜひ錦ヶ浦を訪れるようお勧めする。ドライブ途中の休憩スポットとして絶好だし、少なくとも「お宮の松」より楽しめること請け合いである(笑い)。