「月刊Hanada」5月号に掲載されている記事“日ソ開戦は日本の攻撃で始まった”を読んでの私の所感を述べたい。
筆者の西岡昌紀氏は医師であるが、ロシア語の読み書きができることから、ロシア人とネットで交流し、情報を交換している。同氏によれば、当該記事のタイトルにもあるように、ロシア人は「1945年8月における日ソ戦は、日本の攻撃から始まった」と理解しているという。ましてや、ロシア軍の兵士が満州や朝鮮、樺太で日本人女性を強姦したことなど、まったく知らないらしい。
以下、頑固爺の所感である。
どこの国でも自国に都合が悪いことは歴史から抹殺するから、ロシア人が強姦事件を知らないのは理解できる。また、「日ソ戦が日本の攻撃から始まった」という認識は、そのように史書に記されているからだろう。ロシアが日ソ不可侵条約を反古にしたことも知らないだろう。ロシア人が北方領土返還に猛反対するのも、日本軍が降伏した後でロシア軍が北方四島に攻め込んだなどとは夢にも思っていないからだろう。
こういう状況では、プーチン大統領は北方四島どころか、歯舞・色丹の返還にも応じることはできないと思う。かりに、ロシアが2島だけでも日本に返還するとなれば、ロシア国民が納得するに足る代償が必要になるはずだ。それは巨額の経済援助であり、日本が到底飲める金額ではないだろう。最近、安倍首相が北方領土問題を口にしなくなったのも、こうしたロシア側の事情に気づいたからだと推測する。
結局、北方領土返還はまず情報戦から始めるべきではないだろうか。すなわち、ロシアの歪曲された歴史観を糾すことが第一歩である。もちろん、ロシアは反発するだろうが、真実を明らかにすることに遠慮すべきではない。「そーか、そういうことだったのか。それなら返還はやむをえない」とロシア国民が納得する情報を発信して、プーチンであれ誰であれ、施政者にとって返還交渉をしやすくする地合いを作ることが先決だと考える。急がば回れである。