湯河原に住んでいるため、温泉に行くとなると伊豆とか箱根などの近場を選ぶことが多くなる。たまには遠出して車窓からの景色をじっくり楽しもうと、選んだ目的地は数年前に新幹線が延びた函館の湯の川温泉。函館なら外国人観光客はあまりいないのではないか、というのも選択の一つの理由である(だが、この推測ははずれた)。
さて、私(と家内)が温泉宿を選ぶ時、まず眺望を優先する。そこで、海岸に面したプリンスホテル渚亭に的を絞った。しかし、渚亭には送迎サービスがないことに気づいた。JR函館駅からのタクシー代は推定1500円。2泊する予定であり、何度もタクシーを利用するとなると、この出費はバカにならない。タクシー以外の交通機関は路線バスまたは路面電車で、どちらも函館駅から湯の川温泉まで最低20分を要し、停留所から渚亭までは徒歩10分。徒歩圏内だが、悪天候だと惨めなことになる。そこで渚亭は断念し、他の宿を探すことにした。なお、送迎サービスがないのは渚亭ばかりではなく、湯の川の温泉宿すべてに送迎サービスがないことも判明した。
湯の川温泉は平地だから、海岸以外の場所では眺望は期待できない。となれば、バス・電車の停留所から近いことと宿泊費が選択の条件となる。そこでネットで写真を見つつ選んだのがホテル万惣。巨大な宿では、部屋から大浴場まで遠いことが多いが、その点で万惣は手頃である。一泊二食税別で13,500円という費用は標準的。アルコール飲み放題1,500円は魅力だ。
これが当たりだった。バフェット式の食事が充実していることに驚いた。品数ばかりではなく、ステーキや魚介類の焼き物のコーナーには専門のコックさんがいるから、焼きたて感がある。寿司コーナーも同様で、専門の職人が二人いる。朝は通常の和・洋食類だけでなく、勝手丼と称して酢飯にマグロ、イカ、サーモン、イクラなど加えて、客が自分の好みで海鮮丼を作ることができる(写真)。
朝食の勝手丼
もう一つ気にいったことは、玄関の和風でモダンな造り。他の宿では、コンクリートの箱に玄関をつけただけの印象だが、ここでは温泉宿らしい風情がある(写真)。
万惣ホテル 玄関
万惣まで往路は路面電車を利用したが、止まる停留所が多いことに閉口して、以後はタクシーを利用した。費用は、駅まで1,600円、函館山のロープウェー乗場まで2,000円。
というわけで、万惣の綜合点は90点。マイナスの10点とは部屋が狭いことだが、この程度は標準的広さだから、まずはかなり高い点数とご理解頂く。
ところで、日本全国どこの観光地でも外国人が増えたが、万惣の食堂でも東洋人の団体(およそ70人)を見かけた。喫煙コーナーにいた東洋人にWhere are you from? と尋ねたら、タイ人という答えが返ってきた。翌日も喫煙コーナーで別の東洋人に同じ質問をしたら、香港からの中国人だった。
帰りの新幹線(グリーン車)がほとんど満席になった。しかも、その半分くらいは白人。東洋人は団体ツアーに参加することが多く、欧米からの観光客は個人で旅行する傾向があるようだ。ともあれ、聞きしに勝る外国人の観光ブームである。
さて、ここまでは前置きで、ここからが本論である。
東京以西から函館に来る観光客は、ほとんどが飛行機を利用するだろう。そして、湯の川温泉は函館空港のすぐそばにあるから(多分タクシーで千円以内)、大部分の客は空港から来ることになる。だから、温泉宿の集客は空港に重点が置かれているに違いない。
一方、東京以北(特に東北地方)の住人なら、新幹線を利用することが多いのではないか。新幹線が函館まで延びた関係で、函館は北海道の南端というよりも、東北方面の北端になった感がある。また、東北地方を観光してから、北海道に足を延ばす外国人観光客も多いはずだ。
新幹線の延伸をテコにした、湯の川温泉全体の集客戦略が必要だと思うが、それらしきキャンペーンが行われている形跡はない。新幹線の延伸というアドヴァンテージが生かされていないのは残念である。もしも、今後そのようなキャンペーンを実施するのであれば、まず必要になるのは駅と宿を結ぶ送迎車である。温泉宿がそれぞれ自店だけの送迎車を用意しても、1台当たりの客数が少なすぎ効率が悪いだろうが、数軒の宿(もしくは湯の川の温泉宿全部)が共同で送迎車を手配したらどうか。
ところで、宿でバフェット式の朝食をつい食べ過ぎるから、昼になっても満腹状態。だから、朝市に行っても食欲がわかない。朝市の店主たちは、朝食のバフェットを恨んでいるのではないか(笑い)。その点、新函館駅構内のカフェでハーフサイズの弁当を売っていたが、観光客の腹具合を考えると名案である。
函館には函館山(夜景がいい)、五稜郭、朝市などの観光資源がある割には、観光客が少ない。もっと増やせるはずだ。観光業界がもっと知恵を絞ることを期待する。
函館山頂上から市街を望む(夜景は想像してください)
以上