頑固爺の言いたい放題

森羅万象なんでもござれ、面白い話題を拾ってレポートします。

驚きの沖縄

2020-08-18 16:32:31 | メモ帳

沖縄がコロナ問題で緊急事態宣言を発出した。人口対比では沖縄の方が本土よりコロナ災害が大きいようだし、観光業依存度は内地より高いから、沖縄は大ピンチである。

ところで、沖縄は多くの経済指標で全国ワースト1位である。すなわち、県民所得、非正規雇用率、高校・大学進学率などなど。コロナを克服すれば、明るい展望が開けるのだろうか。

実は、爺は沖縄返還前の1967~8年、デンマーク産ポークランチョンミートの輸入代理権獲得で(後述)、数回那覇を訪れたことがあり、沖縄には強い思い入れがある。

それやこれやで、沖縄の現状を学ぶべく「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」(光文社新書)を読んでみた。著者は本土出身の樋口耕太郎氏。沖縄で観光ホテルを買収して経営した経験がある方である。

さて、タイトルに掲げた“驚きの沖縄”とは次のような事柄である(青字)。

●昇進・昇給を辞退する従業員

昇進・昇給を喜ばないわけではないが、昇進すると同僚との間に上下関係が生まれ、人間関係が変化するデメリットが生じる。彼らにとって、そのデメリットは非常に大きいので、往々にして昇進を辞退する。そして、物事を変える人、社会を変える人は疎まれ、有能な人材は排除される。

●平凡な定番商品が売れる

商品がなんであれ、“いつも買っている銘柄“、“みんなが買っている銘柄”を選ぶ傾向がある。女性のハンドバッグでも、有名ブランド品は買わない。金持ちが車を買う場合、レクサスは避け、クラウン・マジェスタを選ぶ。変に目立ってしまうと、友人関係にひびが入るからである。

今にして思えば、前述のランチョンミートもその一つだった。卸売業者には、それまでの輸入業者に不満をあったが、同じTulipブランドを扱い続けたいために、爺が勤務していた商社が輸入権を肩代わりすることを求めたのである。

●外食はなじみの店優先

おしゃれなフレンチレストランが開店しても、行かない。知り合いの人が経営する店、いつも行くなじみの店を選ぶ。

●無敵の地元企業

メガバンク、すなわち三菱UFJ、三井住友、みずほの三行は、琉球銀行、沖縄銀行に歯がたたない。

読売・朝日・毎日新聞は、沖縄タイムス・琉球新報の牙城を崩せない。

スーパーマーケットは地元のサンエーが圧倒的な強く、イオンに大きく水をあけている(サンエーは熊本県に進出したことがあるが、失敗した。内弁慶なのである)。

旅行業界では、JTBは沖縄ツーリストや国際旅行社の後塵を拝している。

ビール業界ではオリオンビールが40%のシェアを持つ。

要するに、沖縄では、消費行動に人間関係が大きな影響力を及ぼし、「定番」が売れるのだ。そのことが新商品の参入を阻み、地元企業の利益を確保する。だから、沖縄の経営者は現状維持に全力を尽くす。

経営者は品質のいいものを提供しても意味がないから、経営努力を怠る。その結果、沖縄県の労働生産性はあらゆる分野で全国最低である。労働生産性が低い企業が利益を確保するには、人件費を削るしかない。だから、県民所得は全国最低になる。

いやはや、こんな世界がまだあったとは! 明治維新前の日本を想わせる。これではコロナが収束しても、沖縄に明るい展望は開けまい。いくら政府が沖縄を優遇しても、自立できず援助が必要になるわけだ。むしろ、援助することが沖縄をダメにしているのではないか。

(著者は悲観的見方で終わっておらず、変化の兆しが見えつつあることも述べているが、それについては控えておく)。

ともあれ、よくよく考えてみれば、人目に立つようなことを避けるとか、現状維持重視で変革を望まないというような習性は、本土でもある程度言えることだ。沖縄問題は本土にも共通する部分が多分にあると言えよう。