頑固爺の言いたい放題

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(続)医療逼迫の解決策

2021-01-24 11:41:08 | メモ帳
前回の「医療逼迫の解決策」において、「民間病院がコロナ患者を受け入れていない」ことが医療逼迫の原因であると結論づけたが、率直に言ってその裏付けはなかった。

ところが、「民間病院がコロナ感染者を受け入れていない」ことは、日本政府が指摘しているのである。1月23日付けの産経新聞の“罰則導入 コロナ封じ強化”と見出しがある記事から引用する(赤字)。

感染症法改正案に盛り込んだ、新型コロナ患者受け入れを医療機関に「勧告」することができ、応じない場合は機関名を公表できる措置は、新型コロナ患者向けの病床を増やす狙いがある。だが、こちらは実効性が見通せない。・・・

日本医師会幹部は「小規模の病院は病床を持っていても、コロナ患者を治療する専門性を持つ医師や看護師の余裕がない」としており(以下省略)・・・

田村憲久厚生労働相は22日の記者会見で「(勧告ではなく)協力要請に重きを置いて運用したい。各自治体は(医療機関から)協力してもらえる体制を作ってほしい」と述べた。

マスコミは「コロナ患者を受け入れない医療施設がある」とは報じていないが、政府が「医療機関に受け入れを要請する」と言っていることは、受け入れていない医療施設があることを意味する。そして、「受け入れていない施設」とは公的病院であるはずがないから、民間病院ということになる。つまり、マスコミが報じないだけで、政府も医療関係者もこの事実を十分知っているのである。

さて、文芸春秋2月号に掲載されている「日本だけなぜ医療崩壊が起きる」(森田博之、医師・医療経済ジャーナリスト)という記事によれば、筆者の森田氏は、医療資源は世界一の日本で医療崩壊がおきつつある理由を次のように説明している(赤字)。

要するに日本の医療システムには、病床やスタッフを機敏に増減させられる「縦の機動性」も欠如していれば、それらを充足地域から不足地域へと横に移動させる「横の機動性」も欠如しているのである。・・・

日本の病院は八割が民間病院である。しかも、機動性の低い中小病院が非常に多い。そして、それらの中小病院のほぼすべてが「満床」を目指して経営されている。

森田氏の主張「日本の病院には機動性が欠けている」ことは理解できるが、他国の病院も同じようなものではないだろうか。また、下線部分は “中小病院はコロナ患者以外ですでに満床になっているから、コロナ患者を受け入れる余地がない”ということになるが、そうであれば “他国の病院は余分な病床を常に用意している”ことになる。だが、それは果たして本当なのか。

専門家に反対するわけではないが、森田氏の見解よりも、“民間病院がコロナ患者を受け入れないから、コロナ患者のための病床が不足する”という単純な見解の方が適切であるように思える。

もちろん、医師会の幹部の発言“中小の民間病院には感染症に対応するだけの能力がない”ことは事実だろう。だが、病院全体の八割を占める民間病院のなかには、感染症に対応できる病院も多いのではないか。

上述の田村厚労相の発言は“民間病院にコロナ患者受け入れを強制することはできないが、もっと協力的になってもらいたい”という意味だと解釈でき、この辺が医療崩壊を回避する鍵だと考える。