5月17日の朝日新聞と日本経済新聞は、高齢者に突然$1,400(約15万円)の小切手が米国財務省(U.S. Treasury-IRS)から送られてきたことを報じた。夫妻なら2枚で30万円である。
そして、IRS*は「米国に非居住の外国人は受給資格がないから、IRSに返送してほしい」言っているという。これはとてつもない失態である。以下、この件をいろいろな角度から考察してみたい。
(注)IRSとはInternal Revenue Serviceで、国内歳入庁と訳されているが、日本の国税庁に相当する官庁である。
小切手と説明書
第一弾の小切手($1,200)は昨年7月末に到着し、その時はWhite Houseの用箋に当時のトランプ大統領の名で、コロナ禍に対応するための経済対策であることが明記されていた。第2弾の$600の小切手の説明書は、IRS名義だが、前回と同様、その趣旨が書かれていた。
第3弾の$1,400の小切手は4月末に着いたが、その説明書(4月22日付)はなぜか遅れて、私は本日受け取った。そこには、バイデン大統領の名で「この小切手はAmerican Rescue Plan の一環である」と書かれている。
今回初めて$1,400の小切手を受け取った方々は、前出の新聞記事を読んでさぞ落胆したことだろう。しかし、説明書が来れば有資格と考えられ、話は別である。
さて、私が米国に勤務歴がある多くの方々と異なる扱いとなったわけは、① 私は永住権(通称グリーンカード)を所有していること &/or ② 私は30年余社会保険料を払ったこと、によると認識している。
ともあれ、私は米国政府の経済政策のオコボレに与かったわけで、せいぜいアメリカ産の商品(例えばビーフステーキ)を購入し、米国経済の活性化に寄与したいと思っている。(笑)
ミステークの発生と処理
IRSは、資格要件を満たさない外国人に小切手が郵送されるミステークが発生していることを昨年(つまり第1弾の小切手を発送した時)から認識していた節がある(Re: NPR50 November 30,2020 The Coronavirus Crisis)。
それにもかかわらず、ミスは修正されるどころか、今回の第3弾ではさらに資格要件を緩和して、一層多くの外国人に小切手を発送した。とんでもない大失態である。しかも、ミス発生後、事態収拾に動いた形跡がない。ことによると、日本の新聞が取材するまで、ミスしたことにも気づかなかったのではないか。
常識的には、IRSはまず、各国の銀行に当該小切手の現金化をしないように要請するはずだが、日本の銀行は逆の動きを見せた。一部の銀行は2018年以来、マネーロンダリングに手を貸すことになるから、という理由で停止していた小切手の取り立て業務を、最近になって再開した。殺到する問い合わせに対応したものと思われる(前出の新聞記事により、対応が多少変化した可能性はある)。
だが、すでに現金化してしまった人がかなりいる。それを返金せよと言ったところで、日本では小切手を使用しないから、返金手続きが面倒である。
すなわち、小切手を現金化した時に数千円の費用がかかっているし、送金手数料もかかる。そもそも、IRSに銀行送金するには口座明細を知る必要がある。そして、中國などの国々の人々がそう簡単に返金するとは思えない。
それやこれやで、小切手の回収は至難の業である。IRSがどうするか見ものである。