この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

ゴッホは欺く。

2007-03-19 23:59:15 | 読書
 ジェフリー・アーチャー著、永井淳訳、『ゴッホは欺く』、読了。

 翻訳エンターティメントの世界において「ジェフリー」といえば現在では誰しもが『ボーン・コレクター』のリンカーン・ライム・シリーズを生み出したジェフリー・ディーヴァーを思い浮かべるだろう。
 ジェットコースター・ノヴェルと称されるディーヴァーの作品の疾走感、読後に知的レヴェルがワンポイント上がったかのように錯覚できる蘊蓄の数々、それらは現代人の感覚に非常にマッチしたものだと思う。
 だから、ディーヴァーの作品が現代海外エンターティメントで売れているのはよくわかるつもりだ。
 だがかつて、同じジェフリーであってもディーヴァーではなくアーチャーがその第一人者であった時期が確かにあったのだ。
 アーチャーの初期の長編小説はどれもこれもべらぼうに面白い。
 デビュー作である『百万ドルを取り返せ!』や代表作といっていい『ケインとアベル』は無論のこと、『大統領に知らせますか』、『ロフノフスキ家の娘』、『目指せダウニング街十番地』、『ロシア皇帝の密約』など、今挙げた作品はどれもまさに巻措く能わざるの面白さだ。
 だがアーチャーの快進撃もここまで、長編第七作『チェルシー・テラスへの道』で初めて読者の期待を裏切ることになる。
 まぁそんなに続けて傑作は書けないよね、次回作に期待しよう、そう読者に思わせたところで出版された『盗まれた独立宣言』がこれまた、あれ?あれれ?っていう出来の作品で、、、アーチャー本人の投獄騒ぎもあって、いつしか彼は完全に翻訳エンターティメントの世界から消え去ったかのように思えた・・・。
 だがアーチャーは帰ってきた。本作『ゴッホは欺く』を上梓することによって。
 まぁ正直に言うと本作は上述の初期の六作に比べるとその出来栄えにおいてどうしても劣る。設定的に首をひねる箇所もある。
 だが、最近読んだ本の中ではすこぶる面白い。上下巻を一気に読んでしまった。
 永井淳の翻訳も相変わらず読んでいて気持ちよく、至高の職人芸といっていい。
 最近ハラハラドキドキするエンターティメント小説に飢えているという方にはお薦めです。
コメント (2)
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