この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

太陽の坐る場所。

2008-12-30 22:41:56 | 読書
 辻村深月著、『太陽の坐る場所』、読了。購入本。

 辻村深月の最新刊が12月に出ると最初に知ったとき、嘘だろ?と思いました。
 というのも11月に彼女の短編集『ロードムービー』が出版されたばかりで、その一ヵ月後に新刊が出るとはにわかには信じられなかったからです。
 実際に一ヶ月間で書き上げるわけではなくても、校正や加筆修正などにそれなりの時間が取られるはずなので、小説の刊行間隔がわずか一ヶ月というのは、前例がないことではないだろうけれど、通常はありえないことなんです。
 なので、もしかしたら、どうしようもない駄作なのかも?なんて出版前は思ったりもしました。
 しかし、読み終わった直後、自分の不明を恥じましたね。
 あの辻村深月が駄作であれば前作からわずか一ヶ月で新刊を出すわけがない、と。
 彼女の最新作『太陽の坐る場所』は紛れもなく傑作でした。
 今年読んだ小説の中では一番心に残る作品でしたね。
 ただ、デビュー作である『冷たい校舎の時は止まる』から前作『ロードムービー』までのように、誰にでもお薦め出来る、そういった気軽に読める作品ではありません。
 むしろ人を選ぶ、、、というか、読者の世代を選ぶといった方がいいのかな。偏見かもしれませんが、本書のよさを、すごさを、深さをティーンエイジャーがわかるとは思えない。
 いや、もちろんそれがわかるティーンエイジャーがいたとしても、それはそれでいいのだけれど、少なくとも本書はこれまでの読者層よりも十歳は上をターゲットに書かれています(ほんの少しだがベッドシーンさえもある)。
 だから、若い人の中には登場人物の行動や心理に共感出来ない、理解出来ないという人がいたしても不思議ではありません。
 しかし、自分は一人一人のキャラクターにあまりにもリアリティ、存在感があって背筋が薄ら寒くさえなりました。
 これまで辻村深月は若手女性作家の有望株と見なされてきましたが、これだけキャラクターに命を吹き込める作家はそういった括りを抜きにしてもいないんじゃないでしょうか。
 『太陽の坐る場所』、傑作だと思います。
コメント (4)
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