現在公開中の三谷幸喜監督最新作『ステキな金縛り』、自分は正直イマイチかな、と思いました。
どこら辺を不満に思ったかというと、いくつかありますが、何より登場人物の行動が矛盾している、展開に筋が通っていない、という点でしょうか。
冒頭で行われる裁判に、深津絵里扮するヒロインのエミは遅刻してしまいます。
でもエミには同棲している恋人の工藤がいて、彼はフンフンと鼻歌を歌いながらのん気に朝食を作ってるんです。
このことから、
A.エミは工藤にその日重要な裁判があることを伝えていない。
もしくは
B.エミは工藤に裁判のことを伝えていたけれど、知っていて、あえて工藤はエミを起こさなかった。
のどちらかであると思われます。
まず、Aですが、これは考えにくい。
弁護士には守秘義務がありますが、詳細はともかく、裁判の日程、及び重要さを他人に伝えてはいけない、ということはないはずです。
二人の間でそのことが話題にならなかった、ということも考えられなくはないですが、やはり可能性は低いと思います。
何でもあけすけに話す二人のように見えるので。
そしてB、こちらはさらに考えにくいです。
学校の授業に遅れるというのとはワケが違うのですから、工藤がエミにとって裁判がどれぐらい重要か、エミが裁判に送れることで周りの人間にどれぐらい迷惑をかけるか、知っていて起こさなかったとすれば、、、工藤は著しく常識に欠けた人間であるといえます。
ある方から、そんな重箱の隅を突つくようなことをしなくてもいいじゃないか、というようなことを言われました。
それは、違うんですよ。
今、三谷作品のファンの多くは、三谷作品を『古畑任三郎』で知ったのではないでしょうか。
『古畑任三郎』の面白さは、キャラクターの面白さによるところも大きいですが、それと同じぐらいに古畑が犯人のわずかな行動の矛盾を突き、犯人を追いつめる、ロジック的な面白さにも由来するはずです。
そして古畑であれば、こう結論付けるでしょう。
「工藤はエミにとって裁判がどれぐらい重要であるか知っていて、彼女を起こさなかったのです。このことから工藤はエミを愛していないということがわかります」と。
もちろんこの結論は(その後二人が結婚をすることから)間違っています。
でも、ともかく、何かしら起こさなかった理由は必要なはずです。
自分だったらこんな感じに変更します。
バタバタと慌てて起きてくるエミ。鼻歌を歌いながら朝食を作っている工藤に八つ当たりする。
エミ「どうして起こしてくれなかったのよ~。今日私にとってどれぐらい重要な裁判があるか、知ってたでしょ~」
工藤「ごめんごめん。起こしにいったんやけどな、エミちゃんの寝顔があんまり可愛いもんやから、つい、起こしそびれてしもうたわ」
エミ「もう、冗談はやめてよ!」
工藤「朝食は?」
エミ「もう食べる暇ない!」
工藤「じゃ、これ」
エミ「何?」
工藤「バナナ。昔から言うやろ、腹が減っては戦が出来ん、てな」
このやりとりがワンクッションあるだけで、ずいぶん印象は違うはずです。
さらに、この後の裁判のシーン、自分は唐突にバナナを取り出すエミが頭のおかしな人に見えて仕方がありませんでした。
これを次のように変えます。
入廷する寸前、扉の前で、どうにかバナナを食べ終わるエミ。バナナの皮を捨てようと周りを見回すが、適当な捨て場所が見つからず、バナナの皮をポケットに突っ込む。
エミは裁判で検察側の証人に、バナナの皮とおしぼりを誤認させることに失敗する。
裁判終了後のエミと速水の会話。
速水「どうして裁判の最中にバナナなんか取り出すんだ!?」
エミ「バナナではありません。バナナの皮です」
速水「どうしてバナナの皮なんか取り出したんだ!?」
エミ「昔見た法廷ドラマで、弁護人が証人にバナナをおしぼりだと見間違えさせるってものがあったんです」
速水「そんなドラマを書いた脚本家は、脚本家失格だ!!」
このやり取りがあると、エミが唐突にバナナ(の皮)を取り出した不自然さがぬぐえますし、さらに元ネタを知っている人は(『古畑任三郎』の小清水潔の回ですね)、自虐ネタにニヤリと笑えます。
まだいろいろ自分だったらこうするな、というポイントはあるのですが、しかばね旅館の女将がなぜ深夜旅館内を見回っていたのかとか、速水が亡くなるシーンのエミの態度とか、長くなるので割愛します。
ただ、一つ言っておきたいのは、自分的には、自分だったらこういうふうにするんだけどな~と思いながら映画を観るのはアリだということです。
それは決して単なる重箱の隅を突く行為ではないのです。
などといろいろ細かく重箱の隅を突いてしまいましたが(やっぱり重箱の隅なんかい!)、話に聞いたところによると、『ステキな金縛り』は最初に撮影したヴァージョンの尺が長くなり、かなりカットした部分があって、そのため展開が無理のあるものになり、キャラによっては行動が不自然になったらしいです。
DVD化された暁にはノーカット版の『ステキな金縛り』を見てみたいです。
どこら辺を不満に思ったかというと、いくつかありますが、何より登場人物の行動が矛盾している、展開に筋が通っていない、という点でしょうか。
冒頭で行われる裁判に、深津絵里扮するヒロインのエミは遅刻してしまいます。
でもエミには同棲している恋人の工藤がいて、彼はフンフンと鼻歌を歌いながらのん気に朝食を作ってるんです。
このことから、
A.エミは工藤にその日重要な裁判があることを伝えていない。
もしくは
B.エミは工藤に裁判のことを伝えていたけれど、知っていて、あえて工藤はエミを起こさなかった。
のどちらかであると思われます。
まず、Aですが、これは考えにくい。
弁護士には守秘義務がありますが、詳細はともかく、裁判の日程、及び重要さを他人に伝えてはいけない、ということはないはずです。
二人の間でそのことが話題にならなかった、ということも考えられなくはないですが、やはり可能性は低いと思います。
何でもあけすけに話す二人のように見えるので。
そしてB、こちらはさらに考えにくいです。
学校の授業に遅れるというのとはワケが違うのですから、工藤がエミにとって裁判がどれぐらい重要か、エミが裁判に送れることで周りの人間にどれぐらい迷惑をかけるか、知っていて起こさなかったとすれば、、、工藤は著しく常識に欠けた人間であるといえます。
ある方から、そんな重箱の隅を突つくようなことをしなくてもいいじゃないか、というようなことを言われました。
それは、違うんですよ。
今、三谷作品のファンの多くは、三谷作品を『古畑任三郎』で知ったのではないでしょうか。
『古畑任三郎』の面白さは、キャラクターの面白さによるところも大きいですが、それと同じぐらいに古畑が犯人のわずかな行動の矛盾を突き、犯人を追いつめる、ロジック的な面白さにも由来するはずです。
そして古畑であれば、こう結論付けるでしょう。
「工藤はエミにとって裁判がどれぐらい重要であるか知っていて、彼女を起こさなかったのです。このことから工藤はエミを愛していないということがわかります」と。
もちろんこの結論は(その後二人が結婚をすることから)間違っています。
でも、ともかく、何かしら起こさなかった理由は必要なはずです。
自分だったらこんな感じに変更します。
バタバタと慌てて起きてくるエミ。鼻歌を歌いながら朝食を作っている工藤に八つ当たりする。
エミ「どうして起こしてくれなかったのよ~。今日私にとってどれぐらい重要な裁判があるか、知ってたでしょ~」
工藤「ごめんごめん。起こしにいったんやけどな、エミちゃんの寝顔があんまり可愛いもんやから、つい、起こしそびれてしもうたわ」
エミ「もう、冗談はやめてよ!」
工藤「朝食は?」
エミ「もう食べる暇ない!」
工藤「じゃ、これ」
エミ「何?」
工藤「バナナ。昔から言うやろ、腹が減っては戦が出来ん、てな」
このやりとりがワンクッションあるだけで、ずいぶん印象は違うはずです。
さらに、この後の裁判のシーン、自分は唐突にバナナを取り出すエミが頭のおかしな人に見えて仕方がありませんでした。
これを次のように変えます。
入廷する寸前、扉の前で、どうにかバナナを食べ終わるエミ。バナナの皮を捨てようと周りを見回すが、適当な捨て場所が見つからず、バナナの皮をポケットに突っ込む。
エミは裁判で検察側の証人に、バナナの皮とおしぼりを誤認させることに失敗する。
裁判終了後のエミと速水の会話。
速水「どうして裁判の最中にバナナなんか取り出すんだ!?」
エミ「バナナではありません。バナナの皮です」
速水「どうしてバナナの皮なんか取り出したんだ!?」
エミ「昔見た法廷ドラマで、弁護人が証人にバナナをおしぼりだと見間違えさせるってものがあったんです」
速水「そんなドラマを書いた脚本家は、脚本家失格だ!!」
このやり取りがあると、エミが唐突にバナナ(の皮)を取り出した不自然さがぬぐえますし、さらに元ネタを知っている人は(『古畑任三郎』の小清水潔の回ですね)、自虐ネタにニヤリと笑えます。
まだいろいろ自分だったらこうするな、というポイントはあるのですが、しかばね旅館の女将がなぜ深夜旅館内を見回っていたのかとか、速水が亡くなるシーンのエミの態度とか、長くなるので割愛します。
ただ、一つ言っておきたいのは、自分的には、自分だったらこういうふうにするんだけどな~と思いながら映画を観るのはアリだということです。
それは決して単なる重箱の隅を突く行為ではないのです。
などといろいろ細かく重箱の隅を突いてしまいましたが(やっぱり重箱の隅なんかい!)、話に聞いたところによると、『ステキな金縛り』は最初に撮影したヴァージョンの尺が長くなり、かなりカットした部分があって、そのため展開が無理のあるものになり、キャラによっては行動が不自然になったらしいです。
DVD化された暁にはノーカット版の『ステキな金縛り』を見てみたいです。