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月の女王-9

2014年07月30日 00時30分53秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
『月の女王』6冊目のノートから、要約と抜粋その2。


 妙子との約束の場所に行こうとする香を止めようとするが、香はまったく聞き入れない。
 しょうがないので、クリス・白龍・イズミもついていくことにする。
 黙々と歩き続け、広い街路樹の大通りにさしかかったときに、野球のボールが飛んできた。少年野球チームが公園のグラウンドで練習している。
 白龍が足元に転がってきたボールを取ろうと身をかがめた時、バイクの音が聞こえてきた。
 白龍が何かにはじかれたように叫んだ。

↓↓↓

「よけろっクリスっ」
「え?!」
 ふりかえる間もなかった。クリスはいきなり道路の並木にたたきつけられた。目に見えない力で。
「な・・・・・・?!」
 立ち上がろうとした目の前をバイクが通り過ぎた。
「香っ」
「きゃ・・・・・・っ」
 悲鳴があがる。香の前に立ちはだかった白龍が思い切りはね飛ばされ、香がバイクにかつぎこまれたのだ。
「あんの野郎っおいっイズミッ」
 香の横にいたはずのイズミをふり返る。
「イズミ・・・?」
 彼女は驚いた表情のまま硬直している。
「か・・・なしばり?!ちっ」
 一時停止状態になっているイズミの横をかけぬけバイクを追う。
「・・・・・・なるほどね」
 敵ながら感心してしまう。初めに感覚の鋭い白龍の注意を他にむけ、戦闘に適している自分を一番に攻撃し、それと同時に強固な結界を張ることのできるイズミを動けなくさせる。その隙に香を連れて行くという寸法だ。
「でもそうは問屋が卸さないってねっ白龍!」
 それを合図にバイクにはねられたはずの白龍が風に乗って跳躍し、バイクの前にまわりこんだ。
 白龍の作ったいくつもの竜巻がバイクの進行を妨げる。
「クリスッそっち行ったっ」
 バイクがUターンし、まっすぐにクリスの方に向かってくる。香は先日と同様、運転者の前に乗せられている。クリスは身構えると、
「香っ伏せろっ」
 突進してくるバイクにむかって大きく叫んだ。香が身をかがめた瞬間、
「くらえっ」
 かけ声とともに、握りこぶし大の石を運転者に向かって投げつける。それが勢いよく黒いヘルメットにぶつかり、バイクが転倒しかかるところを、
「香っ」
 すばやく飛びかかり、香を抱き上げ着地する。バイクは運転者を乗せたまま、クリスの前で転倒した。
「大丈夫か?香」
「う・・・・・・ん」
 肯きながらもガタガタ震えている香の肩を力強く抱きながら、クリスはバイクの主に向き直った。
「いい度胸してるな。昨日の今日で出直してくるとは思わなかったぜ。スタン=ウェーバー」
「・・・・・・だってねえ・・・」
 よっこらしょ、と立ち上がり、スタン=ウェーバーはヘルメットをぬぎ、ブツブツと、
「あーあぁ、メットへっこんじゃった・・・。どうしよう。これリンクのなのに・・・」
「メットの心配より、自分の身の心配をしたらどうだ?オレは二度も忠告してやるつもりはないぜ。昨日のようにただで帰すなんてことは・・・」
 カッとクリスの右手が青白く光る。
「しないからなっ」
「クリス、ちょっとま・・・」
 横にきた白龍が止める間もなく、勢いよくまぶしい光がスタンに向かって直進する。スタンはどういうわけか逃げもせず、構えもしないで、ただつっ立っている。
「なんでよけない・・・」
 いいかけたところで、ぱーんと光が分散した。スタンの前方一メートルのところで光がキラキラと舞い降りてきている。
「な・・・・・・」
「だから止めたのに・・・」
「え?」
 白龍の言葉にクリスが振り返ろうとしたとき、
「あんぐらいの力じゃオレの結界は破れないな」
 スタンの横にゆっくりと現れたのは、黒ずくめの格好をした男だった。短い黒髪がツンツンと立っている。
「あっ」
 男をみたとたん、クリスが叫ぶ。
「お前は確か・・・り、り・・・」
「リンクス=ホウジョウ」
 白龍が言葉をつなぐ。
「別名『ブラック=リンクス』。二十歳。父親は日本人。母親はイギリス系アメリカ人。基本的な超能力はもちろん、治癒能力まで持ち合わせている。菅原司に仕えて七年。10段階評価で9」
「って、高村のデータに入ってた奴だよな」
 白龍の記憶力の高さに感心しながら、クリスが肯いていると、スタンが興味深そうに、
「なぁなぁ、リンクが9ならオレっていくつ?」
「6。ついでにいうとオレ7」
「えーっなんであんたのほうがオレよりいいわけ?!」
「さぁ?顔がいいからじゃないか?」
 しれっというクリスに律儀に白龍が訂正を入れる。
「高村さんは能力の総合評価をしているのであって顔は関係ない。それにリンクス=ホウジョウの9というのは、治癒能力が評価点をあげているのであって、戦闘能力の評価だけいったら8だったはず」
「どのみちリンクがいっちばー・・・・・・」
「能力はオレの方が上だとわかっているのなら、いまさら暴力沙汰にする必要はないな?」
 スタンの嬉々とした叫びをさえぎって、リンクスが言い放った。
「姫をこちらに渡してもらおう」
「やなこった。能力で負けてたってこっちの方が頭数多いんだからそっちの方が不利だぜ」
 言い返したクリスに、リンクスは薄く笑い、
「お前が言っているのは、南の火使いと北の水使いのことか?彼らの助けは期待できないぞ。火使いは今オレの部下に足止めされているし、水使いはオレが術を解くよう指示しない限りあのままだ」
「イ、イズミくん・・・」
 硬直状態のままのイズミを見て香の顔色が変わる。
「さぁ、姫・・・こちらへ。あなたがこちらにいらっしゃればすぐに彼女の術を解かせます」
「あ・・・・・・」
「行くな、香」
 クリスは動きかけた香をとっさに制すると、
「能力があんたの方が上かどうかなんて、本当は実際戦ってみなけりゃ分かんねえだろっ白龍っ」
 香を頼む、と言いかけたが、白龍の様子に口をつむぐ。イズミと同様、動作の途中で止まっているのだ。
「オレは自分の実力もわきまえず無茶をする男ではないもんでね」
 悠然と笑みをつくり、リンクスは言葉を継ぐ。
「さぁ姫、こちらへ・・・。悪いようにはいたしません」
「・・・・・・」
 一歩踏み出した香の前にクリスは飛び出すと、
「冗談じゃねえよっ誰が行かせるかっ」
 カッとクリスの全身が青い炎に包まれる。
「やれやれ、だな。スタン、手出しするなよ」
 組んでいた腕をほどき、手をぶらぶらとさせると、
「後悔するぞ」
 一言とともに、リンクスから炎が立ち上る。炎の色は群青。クリスと同じ青系統ではあるが、大きさはクリスの比ではない。そのことにクリスは気付けない。ただひどい圧迫感を覚えるだけだ。
「・・・いくぜっ」
「ま、まってっ」
 跳躍しかけた背中にしがみつかれてクリスがつんのめる。
「な、なんだよ、香」
「だめだよ、勝ち目ないよ」
 必死な香の目を訝しげに見返し、
「なんでそんなこと分かるんだよ?やってみなけりゃ・・・」
「やってみなくても分かるっ。炎の大きさがケタ違いだもん。力の差がありすぎる」
 香は言い切ると、リンクスに向き直り、
「私、一緒に行きます。だからイズミくんと白龍君を元に戻して。アーサーさんも自由にして。それに・・・この人にも手を出さないで」
「香っバカ言うなっ」
「バカなのはあんたでしょっ」
 香はきっとクリスをにらみつけると、リンクスの方に歩いていく。一歩一歩と確かな足取りで離れていく。
「・・・・・・いくなっ」
 姫・・・・・・姫。必ずオレが守るから・・・。
 海辺の少女と香の姿が重なる。
「いかないでくれ・・・・・・」
 行かないで・・・・・・今、そこに・・・・・・。
「香!!」
 クリスは衝動的に叫び、飛び出した。右手に青い気をため、思いっきりリンクスに投げつけた、が、
「ばかが」
 決死の一撃を侮蔑の言葉と共にはねつけられた。リンクスがすっと左手を構える。
「大人しくしてろよ、ガキ」
 さして力を入れた様子もないリンクスの左手から光が放たれた。
「・・・・・・ぐっ」
 耐えきれず、クリスが後ろに吹き飛ぶ。香が顔色を変え、リンクスにつかみかかった。
「ちょっと!手出ししないでって言ったでしょ?!」
「したくはないんですけど、彼がそうさせてくれないもんでね。・・・ほら、まだ・・・」
 ふらりとクリスが立ち上がる。
「いかせねぇよ・・・」
 青い炎が光を増し包み込む。金の髪が重力に逆らってなびきはじめた。
「どうしましょうねぇ」
 残忍な瞳になりつつあるリンクスにゾッとしながらも、香は果敢に、
「やめてっ。手を出さないでよっ。ちょっとあんたもっ。私が私の意思で行くっていってるんだから邪魔しないでよっ」
「冗談じゃねぇ・・・」
 香の制止の声もむなしく、クリスは両手を前にかざすと、
「くらえっ」
 どかっという音がして光はまっすぐにリンクスに向かったが、ぶつかる前にジュッと消滅した。
「な・・・・・・」
「しょうがねぇなぁ・・・・・・」
 リンクスが群青の光を手にあつめ、腕を振り下ろす・・・・・・と思った時だった。
「やめてっていってるでしょ?!」
 香が叫んだ。
 瞬間・・・・・・・・・
「?!」
 爆風がおこった。黄金のまぶしい光があたり一面を照らし出す。
 風で木々がしなり、砂利が巻き上げられる。 
「か、かお・・・・・・っ」


↑↑↑

とりあえずここまで写してみた!!
今まで全然戦闘シーン写してこなかったからさ。
一つぐらい残しておこうかな、と・・・。

コメント
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