*具体的性表現があります。苦手な方ご注意ください*
携帯の電源、切っておけばよかった。
「携帯、鳴ってるぞ」
「………」
冷静な声。一瞬前まで、おれに扱かれはじめたことに甘い息をついていたのに。ちょっと……いや、かなり、カチンときた。
「いいから」
「よくねえだろ。ずっと鳴って……っ」
口を塞ぐように唇を合わせる。唇を貪りながら、扱く力に緩急をつけると、たちまち腰が砕けたようになる。慶の弱いところなんか、もう全部知ってる。
「浩…………携帯」
「しーっ」
潤んだ瞳をしながら、なおもいい募ろうとする慶の耳を噛むと、途端にびくびくっと震えた。あいかわらず感度良好。お互いの洋服を脱がしあった後なので、もう何も身に着けていない。慶の滑らかな肌にゾクゾクする。
「慶…………」
愛しい愛しい慶。何もかもおれのものにしたい。慶の中をおれでいっぱいにしたい。その思いのまま、ベッドに押し倒し、そのしなやかな脚を押し開き………
………と、思ったのに。
「だから携帯! ずっと鳴ってる!」
「痛っ!」
思いきり蹴られた。あーああ………
ぶーっとしていると、もう一回蹴られた。
「さっさと取れ!」
「もー………いいのに………」
どうせ相手はわかっている。これだけしつこく鳴らし続ける奴なんて…………
「…………はい」
『ああ、やっと出た!』
電話の向こう、ハハオヤの声。
『ずっと出ないから心配……』
「すみません、仕事中なので」
ピッと携帯を切ってカバンに入れようとしたところでまた鳴った。
「…………」
「…………」
慶に目で促され、仕方なく再び取る。
「だから……」
『なんで嘘つくの! 学校に電話したけど、もう帰ったって言われたわよ!』
「…………」
大きく大きくため息をつく。職場に電話するなと何度言ったら分かるんだこの人は。
「繁華街の見回り業務中です。帰ったらかけ直しますので」
『ちょっと浩……っ』
今度は切ってすぐに電源も落とす。はじめからこうしておけばよかった。
「繁華街の見回り業務、だって」
慶があきれたようにいう。
「お前ウソつきだなー」
「別に本当のこと言ってもいいけど、そしたらあの人卒倒するよ」
ベッドに座っている慶の足をつかみ、指にキスをする。
「別れてただの友達に戻ったはずの渋谷君とラブホテルに来てます、なんて……」
「んんんっ」
足の指をしゃぶっているだけで、萎えてしまっていた慶のものが命を吹き返していく。
「でも、お前、今日誕生日、だから……」
「だから?」
途切れ途切れに言葉をつなぐ慶の引き締まった太股に唇を這わせる。びくびくと震える慶。本当に感度がいい。興奮が止まらない。
「実家帰らなくて、いい、のか?」
「いい」
なにが面白くてせっかくの誕生日に実家に行かなくちゃいけないんだ。
「でも………んんっ」
それ以上は言わせない。滴り落ちた慶の滴を舐めとり、そのまましゃぶりつくと、慶の声がすべて啼き声に変わった。
せっかくの誕生日。せっかく忙しい慶がおれのために休みを合わせてくれた誕生日。
余計なこと考えないで。おれのことだけ考えて。
「慶……」
大好きだよ、大好きだよ、大好きだよ……
気持ちが溢れて止まらない。
「こう…っ、もうイク……っ」
「……うん。イッて?」
「…………っ」
慶の腰がはねあがったのと同時に熱いものがおれの喉をつく。それを一滴残らず飲みほし、舐め上げる。その度にびくっと震える慶………可愛すぎる。
「慶……」
いきおいがなくなるまでしつこく舐めてから口を離し、放心状態の彼の足の膝の後ろをつかんで、ゆっくりと胸の方に押しあげる。そして露わになった蕾にそっとジェルを塗りこむ。
「あ……浩……待……っ」
「ごめんね。待てない」
「あ……んんんっ」
自分でもイジワルだな、と思いながら、休む間も与えず、次の快楽へと導く。
イッたばかりの慶の中は敏感になりすぎていて、少しの刺激でビクビクと震える。指に吸いついてくるようだ。指から快感が伝わってものが更に膨張していく。……でも。
「浩……指やだ……」
「ん」
慶の小さな文句。慶は昔から指でされるのを嫌がる。素直に肯き、指を引き抜く。「あ……っ」と声を漏らした慶が色っぽすぎて……
(かわいすぎ……)
涙のたまっている慶の瞳を見つめながら、ゆっくりゆっくり挿入していく。
「浩介……」
「ん?」
首の後ろに手を回され、引き寄せられた。目の前に湖のような瞳。
「……キス」
「……うん」
小さな要望にお応えする。でも、フェラの後だから唇は重ねるだけに留めて、瞼に頬に耳に唇を落としながら、引き続きゆっくりと少しずつ少しずつ侵入していき……
「あ……っ」
「慶……」
根元まで入り切った時点で、慶がぎゅうっとしがみついてきた。体が溶け合って一つになっていく感覚。とてつもない幸福感……
「慶……大好きだよ」
「ん……」
ずっとずっとこのままでいたい……
**
行為のあとに一緒に入るお風呂の時間もすごく好き。気持ちがフワフワする。
「スカッシュ?」
「そうスカッシュ」
湯船の中、おれに後ろから抱きしめられる形で座っている慶が楽しそうに言う。
こんな大きな風呂に二人で入るのも久しぶりだ。たまにはホテルにくるのもいい、とあらためて思う。いつもは慶の部屋の狭い湯船だから…
「スカッシュって……テニスみたいなやつ?」
「そうそう。ちょっと興味あったからラッキー」
勉強会で知り合った系列病院の医師がスカッシュに誘ってくれたそうだ。
慶はスポーツ全般なんでも好きで、何でも得意だ。とにかく体を動かしていないと気が済まないらしく、空き時間があるとスポーツジムに泳ぎにいったりしている。
「なんか新しいことやってみたかったからさ。本当はキックボクシングやりたいのにお前が絶対ダメって言うし」
「だって……」
その綺麗な顔に傷が付いたらどうしてくれるんだ。冗談じゃない。
まーいいんだけどさーと、慶はブツブツいいながら、
「スカッシュもかなりの運動量だって、マキ先生が言って……」
「マキ?!」
思わず大声を出してしまう。
「女の人なの?!」
「ちげーよ」
慶がブッと吹き出した。
「真実の真に、樹木の木で、『真木』って名字。男だよ。おれらより6コ上っていったかな」
「ああ……そう。ならいいけど……」
ホッと息をつくと、慶はケタケタと笑いだした。
「お前、心配しすぎ」
「だって……」
慶は自覚がなさすぎる。自分がどれだけ女性にモテるのか分かってない。
「お前もやる? スカッシュ」
「……遠慮しとく」
ボコボコにやられるのは目に見えている。慶に運動で敵うわけがないのだ。
「食わず嫌いかもしんねーじゃん。一回見にこいよ。って、まだ一回もやってないおれがいうのもおかしいけどなっ」
「んー……じゃあ、慶がやってみて、すっごく楽しくてオススメっていうなら見に行く」
「わかったー。……あ、なあなあ」
慶はふと思いついたように言うと、くるりと身軽に体を回転させ、上目遣いでおれを見てニッと笑った。
「こんなデケー風呂久しぶりだから、ここでもう一回やろーぜ」
「…………」
あいかわらず、ムードも何もないお誘いです……。
思わずため息をつくと、慶が眉を寄せた。
「いやか?」
「まさか。仰せのままに」
その白い頬を囲み、そっと口づける。すると、慶がふわっと嬉しそうに笑ってくれた。
**
おれはこの1ヶ月後、この時の会話を思いだして、もう一度あの時に戻してくれ、と悶え苦しむことになる。
でも、この時に、慶に行かないでと言ったところで、慶はもう真木さんと知りあっていたのだから手遅れか……。おれが真木さんに敵わないという事実はどうやったって変えられない……
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お読みくださりありがとうございました!
爽やかな高校生時代から一変、アダルティな感じでお送りしました。まあ、まだ28歳だから全然若いんだけどね!
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