*今回R18です。具体的性表現があります。苦手な方ご注意ください*
----
〈仲良し3人組〉
オレと彼と侑奈の三人は、小学校5年生の頃からそう呼ばれてきた。
しかし、純粋にその関係でいられたのは、ほんの短い期間のことだ。
彼はかなり早い段階で侑奈のことを好きだといいはじめた。とにかく顔が好みらしい。でも、侑奈はまったく相手にせず、そして、彼もそれを気にすることもなかったので、3人の友情は続いていた。
でも……
小学6年生の夏、オレは彼への恋心に気がついてしまった。同性愛を打ち明けられるわけもなく、その思いはひた隠しにして、〈仲良し3人組〉を続けていた。
そして中学生になり……この関係はさらにこじれたものになっていく。侑奈がオレに好意を持ってしまったのだ。言われたわけではないけれど、侑奈は分かりやすいので、すぐに気が付いてしまった。
でも、その好意はオレにとっては都合が良かった。
オレが欲情する相手は、彼だけだ。
だからオレは、侑奈がオレを好きでい続けてくれるように、細心の注意を払うことにした。
この綺麗な三角形を守りたい。
万が一、侑奈がオレでなく彼のことを好きになり、二人が付き合うようになったりしたら、耐えられない。
でも、それよりも耐えられないのは、侑奈が他の男と付き合うことなって、彼が侑奈を諦め、他の女と付き合うこと。それだけは絶対に許せない。それなら侑奈の方がまだマシだ。
侑奈のことは、オレもオレなりに好きなのだ。気が強いところもかわいいと思うし、それでいて少し寂しそうなところもいい。人形みたいに綺麗な顔は見ていて飽きない。あげればきりがないほど、好きなところはたくさんある。何より彼が侑奈を好きなので、オレも彼女を好きでありたいと思う。ただ、それは恋愛感情の好きではない。オレが「好き」なのは後にも先にも彼一人だけだ。
高校も三人同じ学校に進学した。
侑奈が推薦で行くことが決まっていた高校を彼が受験するというので、オレも当然そこを受けたからだ。
予定外だったのは、そこが私立高校で授業料が公立高校より高いため、彼が部活には入らず、家族で経営している和菓子屋でアルバイトすることになったことだ。だったらオレも帰宅部になり、彼と一緒にいられる時間を増やそうと思ったのに、
「お前は部活入ってくれよ。オレもその応援とか行って、入ってる気分になりたいからさ」
なんて彼に言われてしまい、入らないわけにはいかなくて、結局中学の時と同じバスケ部に入った。
約束通り、彼は試合を毎回観にきてくれている。練習日に彼のバイトのシフトが重なることも多いので、中学の時よりも彼と二人きりの時間を増やすことができて、本当に嬉しい。
でも、その反面、彼に対する欲情を抑えることがさらに難しくなってきてしまった。
だから、気がついたら、中学の時よりも、さらに複数の女子と関係を持つようになっていた。
女子の方も、高校生になって一線を越えることに躊躇しなくなった子が増えたから、落とすのが簡単になったとも言える。
でも、行き過ぎてしまった……
後悔したときには遅かった。
小学校中学校の時と同様に、彼と一緒に時々侑奈の家にも遊びに行っていたのだが、ある時、少し彼の到着が遅れて侑奈と二人きりになった際に、言われてしまったのだ。
「諒と、したい」
そう言わせてしまったのはオレのせいだ。オレが遊び過ぎたから……
彼の侑奈至上主義は小学生の時からずっと変わらない。時々、それが羨ましくて堪らなくなって、彼の好きな侑奈を自分のものにしたくなる時がある。でもそんなことをしたら、彼が悲しむから、ずっと我慢してきた。
それなのに、そんな目でオレを見るな。
お前は、オレに引っかかるような軽い女じゃないだろ。そんなの彼の好きなお前じゃないだろ……
「相澤とはしない」
彼が悲しむからお前とはしない、と告げ………、その時の侑奈の絶望したような顔を見て、オレは初めて後悔した。
三角形が崩れてしまう………
それから2ヶ月ほどの間、侑奈はオレだけでなく、彼のことも避けるようになってしまった。
「最近ユーナに避けられてる気がする」
彼も気にしてオレに何度も言ってきた。でも、何も答えられなかった。
彼が侑奈を心配げに見る度に、胸の奥がチリチリとする。
(オレのことも見て)
そう言って抱きつきたくなる。昔みたいに頭を撫でてほしくなる。抱きしめてほしくなる……。
我慢できず、そこらへんにいる女子に声をかける。
「高瀬君、マキコと付き合ってるじゃないの?」
「付き合ってないよ?」
戸惑ったような瞳をのぞきこむ。
「どうして?」
「だって、マキコが高瀬君としたって……」
「付き合ってないとしちゃダメなの?」
頬にそっと触れる。
「今、君としたいんだけど、ダメ?」
「え……と」
そして腰に手を回して抱き寄せる。
「うち、行ってもいい?」
「え……」
恥ずかしそうにうつむいたその顔は、肯定以外のなにものでもない。
(……ほら、簡単だ)
こうして、いつものように、よく知らない、好きでもない女に性欲を吐き出す。
………でも。
いつもならば、これで少しはマシになる欲情が少しもおさまらなかった。チリチリと焼けつく胸の痛みもひどくなるばかりだ……
***
クリスマスの夜、侑奈が知らない男にホテルに連れ込まれそうになったところを、彼とオレとで救出した。それがキッカケで、侑奈とも仲直り(?)することになった。
「仲良し三人組に戻りたい」
侑奈がそう言ってくれて、心底ほっとした。これで元に戻れる。そう、思ったのに……
いくら女を抱いても、彼に対する欲情はおさまらなかった。胸の痛みも増すばかりで……。
彼が笑顔を向けてくれる度に、その唇に唇を重ねたくなる。彼が愛しげに侑奈を見る度に、侑奈のことを抱きたくなる。
(歪んでるな……)
オレは歪んでいる。でも、彼と一緒にいたい。彼がいなければオレは生きていられない。彼が好きなものをオレも好きでいたい。彼が欲しいものをオレも欲しい……
そして……
「お前らオレに遠慮せず付き合えよ」
正月の真昼間。
オレと侑奈が両想いだと勘違いした彼がとんでもないことを言い出した。
オレと侑奈がしている最中、侑奈の父親が帰ってこないか隣室で外を見張っててやる、と……。
「オレこれ聞いてるから。だから何も聞こえないから安心してやってくれ」
と、CDウォークマンのイヤホンをした彼。
この勘違いを解いたとしても、元の〈仲良し三人組〉に戻れないことはわかっていた。もう、オレが限界だ……
だから……
「相澤……、後悔、しない?」
「………」
オレが彼を好きだと気がついたのに、コクリと肯いてくれた侑奈。
その細い体を強く強く抱きしめたら、胸の奥のチリチリした痛みがようやくおさまった。
***
一度目は勢いでしてしまったけれど……
その後どうしようかと思っていたら、なぜか、彼が積極的に、
「オレ明日バイトないぞ? お前らも部活ないよな?」
などと、日程調整までして、オレと侑奈がするのをお膳立てしてくれた。その上、「あ、でもでも」と明るく言った。
「二人でデートとかしたかったらちゃんと言えよ? オレ、遠慮するから」
「何言ってんの」
侑奈も明るく彼のことを叩いて言う。
「私達、〈仲良し三人組〉でしょ? 三人一緒が一番いいよ」
「…………」
彼が何を考えているのかもわからないけれど、侑奈もわからない……。
二度目もまた、彼に侑奈の部屋に押し込められて、勢いでしてしまい……
でも、三度目の際には、さすがに冷静になっていた。
本当にこんなことしていいんだろうか?
彼は何を考えてるんだ? そして、侑奈は……
「諒?」
するりと制服のブラウスを脱ぐ侑奈……白い肌が魅力的……だけれども。
頭の中の混乱が邪魔して、やる気が起きない……
「相澤は……本当にいいの?」
隣室にいる彼に聞こえないよう、小さく小さくささやくと、侑奈もオレの耳元で小さくささやき返してきた。
「私は諒とこういうことできて、すっごく幸せ」
「…………」
「諒は……したくない?」
そっと遠慮がちに侑奈の手がオレの下半身に伸びてきた。でも、残念ながら兆しがなく……
「諒」
侑奈はオレの手を取ると、自分の胸に引き寄せた。柔らかい感触……女性だけに与えられた癒しの感触。
「……んんっ」
侑奈は色っぽい声を上げると、オレにぎゅっと抱きついてきた。でも、まだ兆さないオレ……
(……まいったな)
こんなこと今までなかったのに……
今までの色々を思いだして意識が遠のきそうになったところで、
「諒」
侑奈がオレの耳元で再び囁いた。
「あのね、台所側から回って、泉の様子見てきて?」
「………え?」
見返すと、侑奈がいたずらそうにいった。
「たぶん、面白い物がみられるよ」
「?」
首を傾げたオレに、ふっと真面目な顔になった侑奈……
「私は泉の代わりでいいから」
「え?」
「泉の代わりでいいよ……」
「……?」
そして、押しのけられ、廊下に出る方の襖に背中を押された。その後なぜか一人でガサガサと衣擦れの音をさせ、喘ぎ声の演技をはじめた侑奈……
(なんなんだ……?)
面白い物……?
ああ、実は「音楽聴いてる」って言ってた彼が、こちらの様子に聴き耳立ててるとか?
それはそれで興奮するな……
なんて思いながら、廊下側から台所の引き戸を静かに開け、台所の続きにある彼のいるコタツのある部屋をのぞきみて……
「………!!!」
危うく、声を上げてしまいそうになった。
窓辺の下の壁に寄りかかるように座っている彼……
ズボンの前をはだけさせ、下着から自分のものを取りだして、扱いている……
声を出さないためなのか、反対の手の甲で口元を押さえながら、天井を見上げていて……
(………っ)
途端にはち切れんばかりに勃起してしまった。
なんて色っぽい……
あんな表情の彼、みたことない……
聞こえてくる侑奈の喘ぎ声に呼応するように、彼の手が擦られて……
(ああ……)
我慢できず、自分の腕に爪を立てる。
(……あそこにしゃぶりつきたい)
彼の手をどけて、オレが触りたい。彼のそこを舐めまわして、喘がせて、それで、それで……
頭が沸騰する。
体中の血が逆流するような感覚のまま、侑奈のいる部屋に戻った。
そして、ベッドに腰かけ、自分の胸を揉みながら喘ぎ声をあげている侑奈を勢いよく押し倒す。
「諒……っ」
「……っ」
我慢がきかない。服を脱ぐのも脱がすのももどかしい。ゴムをつけるのももどかしい。でも何とか終えて、その白い肌に跡が残るほど強くつかんで足を押し開く。
「んん……ッ」
顎があがり晒された首元……我慢できずにしゃぶりつく。
先ほどの彼の喉元を思い出す。天井を見上げていた彼の喉元にこうして口づけたい……
「諒……」
あられもなく足を広げた侑奈の中に、押し入る。熱い……っ
「あ……、諒……」
「…………っ」
侑奈の中の快感に頭を支配され、そのあとはもう自制がきかなかった。こんなこと、初めての時以来だ。
彼の潤んだ瞳、手の甲で押さえられた口元、握られた彼のもの……
脳裏に浮かぶ先ほどの彼の姿。興奮のまま、侑奈の腰を引きあげる。侑奈の白皙に恍惚の表情が浮かぶ。喘ぎ声も演技ではなく、余裕のないものになっていき……
(……聞こえてる?)
襖を挟んだ隣の部屋にいる彼に心の中で問いかける。ねえ、聞こえてる? オレが啼かせてる声……
「諒……っ、も、イク……ッ」
「ん……」
オレも限界が近い。そのまま侑奈の声に答えるように、侑奈の最奥を突き上げ続け……
「ユウ……ッ」
「ん……ッ」
思わず呼んだのと同時に、絶頂が、きた。吐き出される欲望……
「あっ、んんんっ」
同時に侑奈もビクビクっと体を震わせ、オレにギューッと抱きついてきた。中がドクドクと波打っている……
肩で息をしながら、そっと引き抜き……、侑奈を抱きしめる。
(ああ、これが彼だったらどんなに……)
なんて失礼なことが頭をよぎってしまう。他の女を抱いた後にもいつも思うことだけれども、今日は特にそう思ってしまう……
しばらくそうしてジッとしていたら……
「………行っていいよ?」
「……え?」
侑奈が耳元でささやいてきた。「何?」と聞き返すと、侑奈は切なくなるほどの笑顔で……言った。
「今、泉の隣にいたいでしょ?」
「…………」
「行って、いいよ?」
「…………」
侑奈がどうしてそういうことを言うのかわからない。……わからない、けれども……
「ありがと」
「…………」
ぽんぽん、と頭を撫でると、侑奈はこの上もなく嬉しそうに笑った。
身支度をして隣の部屋に続く襖をあけると、彼は何事もなかったかのように、窓のサンに腰かけて外をみていた。イヤホンをしながら。
「……泉」
「あれ?」
隣に腰かけて、そっと彼の膝に膝をくっつけると、彼は驚いたように目を瞠った。
「ユーナは?」
「まだ……」
「終わったばっかの彼女置き去りにしていいのかよ?」
「……先に行けって言われた」
肩をすくめて答えると、彼は「ふーん」と言ってから、左耳のイヤホンを取ってオレに渡してくれた。
「お前も聴く?」
「うん」
左耳から流れてくる男性ボーカル……切なくなるような声。くっついた膝の温かさ……
(ああ……幸せだ)
オレの中でどす黒く渦巻いていた欲情が、ようやく透明なものに変わってくれたような気がする……
-------
お読みくださりありがとうございました!
「3」の侑奈視点の、諒視点のお話でした。
泉君はバレてない……と思っている一人エッチ、普通にバレてます(^_^;)
侑奈は家事全般していてゴミ回収ももちろん彼女の仕事なので、前回のあと、ゴミ回収したとき気がついちゃったんですね~~。
「この丸まったティッシュはもしや……」と。
泉も人のうちに残骸捨ててくなんて詰めが甘~~い。でも、小学生の頃から我が家のように出入りしてるので、なんも考えなしだったんだろうな(^-^;
そんな侑奈ちゃん、実は2号さん体質? 彼女も彼女で4年近く片想いしてたので、ちょっと歪んでます(^_^;)
次回、明後日は浩介視点。よろしくお願いいたします。
クリックしてくださった方、読みにきてくださった方、本当にありがとうございます!!
よろしければ、次回もどうぞお願いいたします!
にほんブログ村
BLランキング
↑↑
ランキングに参加しています。よろしければクリックお願いいたします。
してくださった方、ありがとうございました!
「風のゆくえには」シリーズ目次 → こちら
「嘘の嘘の、嘘」目次 → こちら