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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 5-1(諒視点)

2016年11月14日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


 彼のことを『好き』だと気がついたのは、小学校6年生の夏休みのことだった。

 1年生からずっと一緒にいて、いつもオレのこと守ってくれていた彼。一緒にいるのが当然で、一緒にいるのが楽しくて嬉しくて。彼の隣にいることがオレの幸せだった。彼がオレのすべてだった。


***


 小6の6月。水泳の着替えの時間。
 
「うわっ。高瀬、大人~~っ」
「!」

 クラスの男子達に囲まれ、冷やかしの言葉を投げられた。

 自分でも嫌になるほど自覚している体の変化………
 6年生になってすぐに声変わりがはじまり、うっすら喉仏もでてきたのと同時に、下の毛も産毛だったのが濃くなりはじめ、そしてモノ自体も……

「すっげーなー。見せろよー」
「や……っ」

 腰巻のタオルで隠しながら着替えていたのに、そのタオルを捲られそうになり、慌ててしゃがみこんだ。すると、

「お前ら何やってんだよ!」
「………っ」

 いつものように彼が飛んできてくれた。

「そういうこと言っちゃダメだって先生も言ってただろ! えーと、成長には個人差があるから……とかなんとか!」
「だって、高瀬すげーチン……」
「うっせー! そんなに人のもんみたいんなら、オレの見せてやろうか~?」

 ほれほれ、と惜しげもなく前をさらけ出した彼。みんながゲラゲラ笑いだす。

「いらねーっサルのなんか見たくねーっ」
「うわ~~お前そこまでサルっぽい」
「サルっぽいって、サルの見たことあんのかよ!?」

 その場がわっと明るくなる。いつもそうだ。彼のいる場所には笑いが溢れてる。

「男子!騒いでないでさっさと着替えろ!」

 先生も来てくれて、ホッとする。みんなが席で着替えはじめると、彼がいつものように横にきてくれて、

「諒……大丈夫か?」
「うん……ありがと」

 いい子いい子と頭を撫でてくれた。彼に頭を撫でられるのはとても気持ちいい。幸せで胸が温かくなる。彼には仲良しの友達がたくさんいるけれど、でも、オレは特別なんだって実感できて嬉しくなる。


 その日の帰り、いつものように侑奈の家に寄って3人でダラダラしたあと、彼と二人で近くの公園に行った。

 侑奈は5年生の時に近くの団地に引っ越してきたハーフの女の子。登下校を一緒にしているうちに自然に仲良くなった。
 それ以来、放課後は侑奈の家に行くことが多くなったけれど、その帰りには、それまでのように、二人で公園に寄っていた。

「あのさ、昨日言ってたこと、兄ちゃんに聞いてみたんだけど……」
「うん」

 ジャングルジムの一番上で並んで座りながら、彼がこそっと言った。昨日彼にだけ打ち明けた相談事の答えを、高校生のお兄さんに聞いてきてくれたのだ。

「でかくなっちゃって、すぐ元に戻したかったら水かけるといいって。あとは時間かけて落ち着かせるか、それか出しちゃうしかないって」
「出すってどうやって……?」

 保健の本も読んだし、図書館でも調べたけれど、具体的な方法は書かれていなかった。たぶん『自慰行為』で『刺激を与え』て『射精』するんだろうけど、その方法がわからない……

「なんかな、兄ちゃんが言ってたんだけど」
「うん」
「こう……つかんで、擦るんだって」

 彼が手で筒型を作って上下させる動きをしてみせてくれた。でもイマイチぴんとこない。
 彼も同様なようで、首を傾げてから、ちょっと笑って付け足した。

「それでな。好きな子のこと思い浮かべながらするとすぐ出るって言ってた」
「好きな子?」
「うん」

 クラスでは、誰と誰が両想いだとか付き合ってるだとか、特に女子が騒いでいるけれど、オレはそういうことも疎くて、まったくついていけてなかった。

「でも、諒は好きな子いないもんなあ?」
「うん………」

 好きな子……どう思ったら『好き』なんだろう。一番好きな友達と言われたら間違いなく彼なんだけど、男だから違うんだよな……

「オレは絶対ユーナだ。オレも早くお前みたいになりてえなあ。そしたらユーナのこと考えながらするのになあ」
「……………」

 彼は侑奈のことが『好き』。顔がかわいいからだそうだ。だからオレも侑奈のことを『好き』になろうとは思っている。

 だからとりあえず、翌朝起きたらまた大きくなっていたので、トイレにいって侑奈のことを考えながら、言われた通りに擦ってみた。でもムズムズするだけで……、結局いつものように、落ち着いてくれるまで、ジーッとしているしかなかった。
 


**


 夏休みになり、彼が毎日のようにうちに泊まりにきてくれた。彼と一緒に過ごす幸せな時間。ほとんど帰ってこない両親に代わって、一人きりのシーンとした時間を全部全部彼が埋めてくれた。


 夏休みももうすぐ終わり、というある日の夜。いつものように、ベッドに並んで横になった時点で、彼が言いにくそうに切り出してきた。

「なあ……あれから、出た?」
「…………」

 結局あれからも、勝手に大きくはなるものの、精通はまだだった。
 首を横に降ると、彼は安心したように息をついた。

「そっかー良かった」
「? なんで?」
「だってさー」

 くるっとこちらを向いて、コツンとオデコを当ててくる彼。

「お前、この何ヵ月かでドンドン背も大きくなっちゃってさ……。オレ、これ以上置いていかれたくない」
「…………」

「だから、オレにセーツーくるまで待ってて」
「…………うん」

 待ってて、と言われて待てるものかも分からないけれど、うなずくと、彼は安心したように寝息をたてはじめた。

 それからしばらく、彼の寝息を幸せな気持ちになりながら聞いていたんだけど、

(…………あれ?)

 その規則的な寝息に呼応するように、下半身が大きくなってきたのが分かった。しかもムズムズして身じろぎをしたときに、布に擦られたところが、ちょっと気持ちよくて……

(……もしかして)

 もしかして、今ならできる……?

(待っててって言われたけど……でも、ごめん)

 修学旅行までになんとかしたいんだ。お風呂でからかわれるの嫌だから……。

 パジャマのズボンの中に手を入れて、パンツの上からつかんでみる。固くなっている自分のもの……

(えーと、それで、侑奈のことを思い出す……)

 目をつむって侑奈の顔を思い出す。

(…………うーん)

 眉間にシワが寄ってしまう。触っているのは気持ちいい気がする。でも、侑奈の外国人みたいな白皙と整った顔を思いだすと、逆に萎えてくるというか……

(……やっぱり無理か)

 諦めて、触るのをやめようとした、その時。


「!」

 ビクーッと跳ね上がってしまった。寝ぼけた彼の左手がオレの頭にバサッと落ちてきたのだ。
 いつも撫でてくれる優しい手……

「んんん……」
「………」

 彼は寝相が悪い。この夏休みも何度蹴られたり殴られたりしたか分からない。人をそんな目にあわせておきながら本人は朝まで熟睡しているんだから呑気なものだ。

 ……と、思ったら。

「んー……」
「……っ」

 彼はおもむろに右手をオレの首の下に差し入れて……ぎゅうっと頭をかき抱いてきた。

「………っ」

 息が、止まるかと思った。

 彼の匂い、彼の息遣い、彼の鼓動……すごく近くに感じられる。同時に、オレの手の中にあるオレのものも、ドクンっと大きく波打った。ドッドッドッと心臓の音が大きく聞こえてくる。


(……擦りたい)

 初めて本能的に手に力を入れた。

(……擦りたい。擦りたい)

 彼に気が付かれないよう腰をなるべく遠くに離して、でも彼の胸に顔を埋めながら、擦り続ける。

(き……気持ちいい)

 なんだこれ、なんだ……頭が真っ白になっていく。
 彼の匂いに包まれて、彼のぬくもりを感じる幸せ……

 本能のまま手を上下に動かし続け……

「ん……諒」
「!」

 寝ぼけた彼の声が耳元で聞こえた途端、

(で……出ちゃった)

 おしっこではない何かが出た気配がした。これが、射精……? パンツの上から擦っていたので、手は汚れなかったけれど、おそらくパンツについてしまったに違いない。

 途端に冷静になり、気マズイ気持ちになりながら、そっとベッドを抜け出す。
 トイレでパンツを履き替えてから、ぬるぬるがついたパンツをざっと洗って、明日の洗濯物の山の中に紛れさせ、そーっと部屋に戻ってくると、

「…………」
 彼の寝顔が目に飛び込んできた。いつもは仰向けで寝ることが多いのに、今日は隅っこで横向きに丸くなっている。少し開いた口元から聞こえる寝息の音……

「……っ」
 その瞬間、ズクリと再び股間が熱くなってきた。

(なんで……っ)
 体中にも熱が回ってくる。彼のその唇にキスしたい。抱きしめたい。抱きしめられたい。彼の腕の中でこの熱くなったものを触りたい……


『好きな子のこと思い浮かべながらするとすぐ出るって言ってた』

 二か月ほど前、彼が教えてくれた言葉を思いだす。

(好きな子……)

 ああ、そっか……

 自分でも驚くほど、それは素直に自分の中で受け入れられた。


 オレ、彼のことが『好き』なんだ。





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お読みくださりありがとうございました!
小学校6年生。進んでる子は進んでますが、幼い子は本当に幼い、という時期。
諒たちは幼いチームに属していたため、そういうエッチな話の情報が全然なかったのでした。

こんなに可愛らしかった諒君が、なぜ女喰いまくりのタラシになってしまったのか、という話を明後日お送りします。

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コメント (4)
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