散歩コースの塀越しに庭梅の木が見える家がある。
私が小さかった頃の我が家にも、小さな庭梅が一本あって毎年赤い実をつけていた。
サクランボを小さくしたような色と形をしていて甘い味がした。
小さな木にこれまた小さな梯子を掛けて昇ったまま、梯子の上で食べたものだ。
乱暴に扱いすぎたのかどうかは忘れたが、いつの頃からか枯れてなくなった。
今の家に移ってきた年に近所の人から沢山の庭梅の実をもらった。
食べると幼い時の、あのイメージのままの味が口の中にひろがった。
残りは果実酒にしたら、ちょっと甘すぎる酒が出来てしまった。
そんなこんなで、庭梅には特別の思い入れがあるのだ。
家の前で立ち話的にその話をすると、近所の人が「家に庭梅があるから取り木をして分けてあげますよ」と言う。
1年後もちゃんと覚えていてくれて、鉢に植えた庭梅の取り木が2鉢届けられた。
あれからもう4~5年は経っていると思うが今年も小さな花を沢山咲かせている。
花を見る分には鉢もなかなかいいのだが、実を付けさせるには地植えがよかろうといま庭の適当な場所を探している。
名前は庭梅でも、幹も花の感じも桜のほうがピッタリな感じだ。
可憐な花が真っ盛りだし、明日あたりささやかに花見の宴でも開いてみるか。