「紅花夕化粧」の花が咲いた。
植えた覚えもない場所や、他の花が咲くはずの鉢の中で。
それにしても、艶のある花の名前ではある。
まあ、それはそれとしてお天気の方は不安定で、終わった花の後に植えようと思っている花の苗を探しにホームセンターに行くのを一日延ばしにしている。
で、今日もまた読書の日とあい成る。
(「輝ける闇」開高健(著)昭和57年発行 新潮社)
かつてのベトナム戦争への従軍の体験を下地にした小説である。
筒井康隆氏が「異化」ということを語っていたが、日常にはない不安定な状態に読者をもってくのが創作の極意だとしたら、戦争はまさに非日常の極みだ。
創作こそが小説家の仕事だと考えれば、体験したことを元に書くことは創作の道から外れるとも言えるが、本当の悲惨さを体験した者はその悲惨さを伝える術のなさや自分の無力感に苛まされるのではあるまいか。
個人的には戦争小説の傑作は「西部戦線異状なし」と「禁じられた遊び」だと思っているが、「輝ける闇」はジャングルの匂いや人間の息遣いが生で伝わってくる日本の戦争文学の傑作だと思う。
戦争は傑作を生むが、人間の行為は一向に進歩しない。
あの時の反戦歌・反戦運動は消滅して久しいが、この一冊が読み継がれていけばいいなと思う。
季節は植物に聞くとして、一冊の本に聞くことは多い。