ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

将王 2手目「先生」

2015-12-26 23:14:43 | 小説
「ここの道場に天才少年がいる」。噂は広まり、プロ棋士の間にまで届き始めた。

ある日、小倉が将棋道場を訪れると、見慣れない小太りのメガネをかけたおじさんが、見慣れたおじさんたち数人を相手にいくつかの将棋盤を世話しなく行き来していた。皆、がその小太りの中年男を「先生」と呼んでいた。しばらくして少年の存在に気づき、小太りの「先生」が歩み寄る。

「君か。いま何年生?」

「4年生です」

小倉は「先生」と将棋を指した。彼自身、初めてというくらいの惨敗だった。悔しさと驚きで混乱している少年に小太りの先生は言った。彼にとっては意外な言葉だった。「君はスジが良い。必ず強くなる」と。

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タイトルはとりあえず「将王」としました。
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将王  初手 「希望」

2015-12-26 22:02:35 | 小説
いったい、いままでの自分の人生は何だったのだろう?自宅ベッドにねころがりつつ、ふと小倉は思ったのだ。これまでの40年近い人生のほとんどを将棋に費やしてきた。

幼稚園の頃だった。大人たちの縁台将棋を見よう見まねで覚え、その大人たちを負かすようになるまで時間はかからなかった。自宅近くの将棋道場へ通い、自信過多の大人たちを次々に負かし、そして驚かせた。「坊や、ほんとに強い。ひょっとしてプロになれるんじゃないか」。そうした言葉たちは小倉少年の自尊心をくすぐった。

勉強ができる訳でもない。運動もどちらかといえば苦手だ。友達も多くない。イケメンでもなく、女子にもてないのも、子供ながらに漠然と納得していた。それでもみんな自分に一目置いている。将棋はこれといって取り柄のない小倉少年の希望そのものだった。

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短編小説を書いてみようと急に思い立ちました。題材は将棋ですが、将棋を知らなくても理解でき、楽しく読めるようなものにしていきたいです。
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