潮の香りが漂うようなファミレスの壁際で、若い女性がひとり座っている。そこへウエイトレスがやってきた。
「ご注文は」
「オムライスひとつ、お願いします」
・・・寂しそうな海ね・・・
ー人気がないからじゃないか。波もずいぶん荒いね、この時期になるとー
・・・でも、最後の食事がオムライスだなんてね・・・
美由が少し笑った。
ーそんなもんだよ。一致したのがそれしかなかったじゃんー
・・・まあ、それなりにおいしかったからいいや・・・
ーうん。ほんとにうまかったー
・・・今、誰かに背中を押されたらアウトだね・・・
ーいっそ、押してもらったほうが楽だよ。覚悟が省けるからー
・・・そうだね・・・
ー美由には感謝してるよー
・・・感謝なんてしなくていいよ・・・
ー母にも会えた。姉にも会えた。それから、麻理にもー
・・・私はいれてくれないの・・・
美由が微笑みながら、小さく頬を膨らませた。僕は少し慌てた。
ー美由はまた特別だよ。一心同体というか、いや、二心同体かー
・・・ありがとう・・・
ーなんで涙が流れるんだろうー
・・・どっちの涙・・・
ー分からない。どっちでもいいよ。じゃあ、そろそろ行こうー
・・・うん・・・
海が呼んだ。僕ら二人にはそれがはっきりと聴こえた。
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思っていたよりはるかに、たくさんの方に見ていただきました。有難うございます。