八月二十六日(水)晴れ。
今日の朝食は、最高の献立。まず大好きな水戸の「船納豆」に、北海道の「山わさび」、千葉の「サバの文化干し」。至福の時だ。しかし考えてみれば、皆頂き物だ。感謝合掌。
食後に産経新聞の「産経抄」を見てニヤリ。先日、私が観て、とても感動した映画に触れていたのである。その映画とは、ヒトラーがドイツの政権を掌握した翌年一九三四年、ニュルンベルグで開催されたナチス党の党大会を記録した、レニ・リーフェンシュタイン監督の「遺志の勝利」である。
「夜の九時十分からの上映というのに、渋谷の小さな映画館の客席は、ほとんど埋まっていた。『映画史上最大の問題作』ともいわれる七十五年前にレニ・リーフェンシュタール監督が撮った『遺志の勝利』は、今も人々の好奇心を刺激してやまない」と。
この映画は今でもドイツでは上映が禁止されている。そして、この映画を作ったレニは、ナチの協力者との烙印を押されて、戦後不遇をかこった。しかし、これは魔女裁判のようなもので、彼女は決してナチの協力者でもなければ、党員でもなかった。その証拠に、宣伝相のゲッペルスから不当な扱いをされたことは有名なエピソードである。「産経抄」は、何も、ナチや、その映画の影響について絶賛しているわけではない。連日テレビで放送されている政見放送のおそまつさに比して、レニの作品を評価しているだけだ。
「遺志の勝利」は、残念ながら、日本ではソフト化されておらず、どうしても見たいと思ったなら、インターネットで、ドイツ語版で英語の字幕がついたものしか手に入らないが、映画そののものは、多少の演説があるだけで、台詞が一切無いので、ドイツ語が分からなくとも、臨場感は味わえる。私は、記録映画の中で、レニの、この「遺志の勝利」と、ベルリンオリンピックの記録映画「オリンピア」をしのぐ作品を知らない。ドキュメンタリーの最高傑作と言っても過言ではない。もし、レニが生きていて、「幸福実現党」や他の宗教団体のプロパガンダ映画を作ったならば・・・。それを考えると恐ろしい。
午後から、私が敬愛する台湾在住の大陸浪人阿部英樹さんの新刊が上梓されたので、上の子供と一緒に伊勢佐木町の有隣堂に行く。阿部さんについては、いずれ詳しく書かせて頂くが、その破天荒な生き様には驚かされるが、教養の高さにも驚かされる。その阿部さんが講談社α文庫から上梓されたのが、自叙伝とも言うべき「ケンカ番長放浪記ー世界のマフィアを相手にして」(八百三十八円)である。書店では平積みで置いてあったのですぐに分かった。
好きな本を手にするとき、何か、好きな女性にめぐり合ったような気がして、ドキドキする。早く家に帰って、焼酎を片手に読みたいと心がはやる。ふと、書棚に目をやれば、日頃からお世話になっているライターの夏原武さんの本、「ヤクザも惚れた仁侠映画」(四百八十円)が目に留まった。オオッこれも偶然ではない必然的な出会い、と思って買った。今日は何と良い日なのだろうか。
夜は、まだ残っている「三岳」をロックで読書三昧。人生とは良いものだ。