八月十五日(木)晴れ。終戦の日。
起床後に、自宅から靖国の英霊に対して黙とうを捧げる。終戦の日と言えば、以前、向田邦子さんが戦争中の東京に暮らす家族の風景を、久世光彦の演出で描いた「終戦日特集」のシリーズが好きだった。出演は岸惠子、清水美砂、田畑智子など。タイトルは「言うなかれ、君よ別れを」「蛍の宿」「いつか見た青い空」「昭和のいのち」「あさき夢見し」など。
戦前の家庭と言うものが、とても良く描かれている。私は戦後の生まれだが、子供の頃にはまだ向田邦子さんが描いた、戦前の名残のある日本人の平均的な家族とその生活が残っていた。
※ツタヤなどでレンタルできるかもしれません。八月には、家族でこういう映画を楽しむのも良いかもしれません。
ドラマのタイトルにもなった「言うなかれ、君よ別れを」は、大木惇夫の有名な「戦友別盃の歌」の一節である。亡くなられた元楯の会の阿部勉さんもこの詩が好きだった。私は、自宅の近くのリサイクル・ショップで、大木惇夫の全集が三冊セットで五百円で置いてあるのをみて、嬉々として買ったことがある。戦後、大木は「戦争協力者」として文壇から無視されたが、戦争中に、戦争遂行のために協力しなかった者がいたら知りたいものだ。それこそ国賊ではないか。
正午、家族全員で一分間の黙とう。かつて日本人が白色人種を相手に三年半も死闘を演じたことの意味を、後世の史家は必ずや評価するに違いない。
大木惇夫の詩集「海原にありて歌へる」の巻頭にあるその詩を掲載して終戦の日に英霊に感謝と哀悼の誠を捧げます。
戦友別盃の歌-南支那海の船上にて。
言ふなかれ、君よ、わかれを 世の常を、また生き死にを
海ばらのはるけき果てに いまや、はた何をか言はん 熱き血を捧ぐる者 大いなる胸を叩けよ 満月を盃にくだきて暫し、ただ酔ひて勢きほへよ
わが征ゆくはバタビヤの街 君はよくバンドンを突け
この夕べ相離(さか)るとも かがやかし南十字を いつの日か、また共に見ん
言ふなかれ、君よ、わかれを
見よ、空と水うつところ 黙々と雲は行き雲はゆけるを
夜はおとなしく酔狂亭で月下独酌。