なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

壊死性筋膜炎

2018年01月29日 | Weblog

 内科新患担当の先生(大学病院からのバイト)から連絡が来た。後天性血友病の73歳女性が右下腿の腫脹で受診して、救急の対応が必要だという。この患者さんが通院しているのは知っていたが、まだ診たことはなかった。

 約10年前に腸腰筋血腫で地元の病院から大学病院の救急部に搬送された。その時に凝固異常を指摘されて、血液内科に紹介されていた。診断は後天性血友病。精査の結果、大腸癌が発見されて、それが誘因になったと考えられたそうだ。術後にステロイドは漸減中止となっていた。

 2年前に顔面打撲からの口唇・口腔内出血が続いて、内科医院から当院に紹介された。担当医が大学病院の血液内科に問い合わせて、ステロイド治療を再開した(プレドニン1mg/kg/日から)。その後軽快して、現在はプレドニン10mg/日になっていた。大学病院への通院はいやがったとある。夫は理解力があるが、患者さん自身は病識に乏しく理解力にも問題があるようだ。

 今回は夫の話によれば、1~2週間前から右下腿の一部に傷があって発赤していたそうだ。それが一昨日に下腿全体に広がってきた。昨日の日曜日は当院の救急外来を受診して、蜂窩織炎として抗菌薬内服が処方されている。今日も外科外来を受診したが、後天性血友病ということで内科に回されていた。

 右下腿全体が著明に腫脹してまだらに紫黒色になっている。多発性に水疱が形成されていた。教科書に載っている壊死性筋膜炎(軟部組織感染症)の像だった。血圧98/40mmHgと、高血圧症の治療の受けている患者さんとしては低下している。心拍数は77/分と正常域で、全身の発熱はなかった(右下腿は熱感あり)。炎症反応もほとんど上がっていなくて、この辺はよくわからない。

 ふだんよりもHbが4g/dl程度低下している。下腿内部に出血しているようだ。足背も腫脹しているので足背動脈がよく触知できないが、足趾は壊死になっていない。凝固検査をみると、血友病として悪化しているようではないが、感染症そのものによるのか。

 壊死性筋膜炎疑いとして、大学病院の救急部に搬送するしかないと判断した。当地域の基幹病院でも血液内科はいないので難しいだろう(たぶん)。大学病院に電話連絡すると、幸いにも引き受けてもらえたので、すぐに搬送した。よろしくお願いいたします。

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